「発明塾®」へようこそ!: 塾長の部屋(23)~会社とは何か、仕事とは何か

2012年11月11日日曜日

塾長の部屋(23)~会社とは何か、仕事とは何か

Good morning guys.

さて、今日は少し発明から離れて、僕の過去の講演やキャリアから「やはり、後に残る形で伝えておかないといけないんだな」と感じたことを。

僕の経歴は、すでに皆さんご存知の通り、新卒で入った川崎重工から、縁があって29歳の時に小松製作所へ移り、2004年にナノテクベンチャーの設立、現在に至ります。

人によっては「よく仕事を変わっていますが、何か理由があるのか」と聞かれることもありますが、特にこれといった(一貫した)理由はない、というのが正直なところです。数年に渡り粘り強くお誘いいただいたケースもありますし、偶然もあります。自分の意志で転職活動をしたことがない、という共通項はあるかも知れません。

キャリアだけを見て、よく「転職相談」的なことを受けることがありますが、上記のような理由で、僕がアドバイスできることはほとんどありません。当時、転職市場も今ほど整備されておらず、環境も違いますしね。

しかし、せっかく聞きに来てくれるので、なにかアドバイスできることがないかと思い、僕が話すことは大体以下の様なことです。これは、2008年(だったと思う)から毎年「ものづくり講義」(京都大学機械系)で話している内容でもあり、2009年にSmipsの「知財キャリア分科会」で話した内容でもあります。

結論から言うと、

・仕事とは、自分の能力を社会的価値に変換する活動である。その対価として、報酬が得られる。
・会社とは、個々人の能力を社会的価値に変換するための仕組みである。それを発展的に維持するためには、収益が必要である。

ということになります。

僕がこのことを明確に意識したのは、2000年前後だと思います(当時28才ぐらいでしょうか)。バイクが好きでオートバイ設計をやっていたわけですが、一通りのことができるようになると、もう少し大きな視点から世の中を見れるようになった、という典型的な例でしょう。

その後、2003年にある経営者と出会ったことが、僕が「本気で」経営者を目指すきっかけになります。

この一連の流れの中で、僕が出会った本を挙げておきます。

①「社会起業家-よい社会を作る人たち」町田洋次
②「人生の短さについて」セネカ
③「ムハマド・ユヌス自伝」

すでに紹介済みの①、②はもういいでしょうか。①と②は、僕が「退職する」人や「退職するとき」に、お世話になった方々によく渡す本です。読みかけの本を渡したりするので、僕の手元の本は常に新しいという、副次的効果があります。

③はあまり紹介しないのですが、これを読んで「政治ではなく、経済が世の中を動かす」ということについて、明確なイメージを持つことができました。ちょうど2004年ごろに読んだこともあり、現在の僕の経営哲学に、非常に大きな影響を及ぼしています。

 ユヌス氏は2006年にノーベル平和賞を受賞しているので、今では皆さん、名前ぐらいはご存じでしょうが、当時僕の周りでは、彼の活動に注目する人はいませんでしたし、書評等でも全く話題に登っていなかった記憶があります。時代の流れの速さを感じます。

講義では、ユヌス氏の取り組み以外に、ドミニ氏のSRI投資を紹介しています。これも有名ですよね。

・エイミー ドミニ
http://www.nikkei.co.jp/hensei/ngmf2004/r_domini.html 

こういった「社会的責任」を、ビジネスを通じて追求しようという流れは、日本でも2000年ぐらいから話題になり始めたと記憶しています。

もう一つ僕が注目していたのは「成功して寄付する」というロールモデルの今後。2006年に、バフェット氏はゲイツ財団に財産の半分を寄付すると公表するなど、動きがあるなと思っていました。ちなみに、バフェットが公表した寄付金額は、ちょっとした国の予算に相当するものでした。興味がある人は調べてみてください(講義では解説済み)。

ユヌス氏の話に戻せば、「単純な援助はどこまで有効なの?」というQに戻ります。当時の僕の答えは以下の2つです。

①支援の中で、もっとも効果が高いのは「教育」。でも時間がかかる。
②テクノロジーへの投資を通じて、世の中を加速度的に良くすることは出来ないか。

はい。②は僕が前の会社で追求していたことであり、①が現在の会社で追求していることです。ゲイツ氏は現在、様々なテクノロジーに積極的に投資をしていますが、同じようなことを考えているのかも知れません。

教育、という意味で僕がひとつの理想と考えているのは、これも紹介済みですが、

・Deep Springs College
http://www.deepsprings.edu/home 
http://www.unipro-note.net/archives/50139010.html (日本語の解説記事)

です。僕もちょうど下段のクーリエ・ジャポンを読んで知りました。それから6年、発明塾もだんだんと形になりつつあります。教育は時間が掛かりますし、新規事業?は、タイミングも含め、やはり時間がかかります。先を見て布石を打つ、そんな経営者の仕事の醍醐味は、5年、10年やってきたことが、大きな「社会的価値」を生む瞬間に立ち会えることだと思っています。

経営なんて地味でつらい仕事はやめておけ、経営者志望の学生に、僕が必ず言うことです。でも、その苦労が周りの人の幸せに繋がること、その事自体を自らの喜びに出来る人は、ぜひ経営者になっていただきたい。

マズローも、そう言っています(僕の解釈です)。