「発明塾®」へようこそ!: 3月 2011

2011年3月31日木曜日

発明塾@京都 第32回開催報告

@京都の32回目も無事終了しました。

今回は、プラスチックをリサイクルするための「分別」「分類」技術について、その課題と解決策の検討を行いました。手順としては、

①まず、既存の特許から、課題(できるだけ複数)と解決策(原理)を抽出。出席者全員で手分けして行い、共有化。
②それらの課題を、ディスカッションで整理。特にトレードオフを抽出することに注力。多数のトレードオフの中心になる課題は、重要な課題。
③重要課題を1つ選定。「解決すべき課題」=「実現すべきコンセプト」を定義し、解くべき問題をはっきりさせる。
④そのコンセプト実現に利用出来る「原理」「既存技術」「異分野技術」を探索、これも共有。

と、順を追って行いました。

私個人の経験では、ここから先は個人作業の領域だと思っていますが、皆さんまだまだ思考回路が出来上がっていないみたいなので、次回までに簡易SRが出てきたものについて、次回取り上げて討議します。簡易SRまで行かない人は、別に送ったアイデアシートにできるだけアイデアを記入して送って下さい。ネタが無いと、討議できないので・・・(=アウトプットが出ない。「勉強になったね、なんとなく楽しかったね」で終わる。)

その上で、希望する人は個別討議を申し込んでください。

誰もアイデアがない場合には、次の課題(念のためバックアップを準備しておいた)に移ります。

練習して、早く走れるようになった気がする→走ってみてタイムを計る→基準と比較する→まだまだ足りないとわかる→ビデオ撮影する→早く走れる人間と比較する→違いを修正する練習をする→できた気がする→また走る・・・

この繰り返しですよね。

よろしく。

2011年3月29日火曜日

発明を改良する

発明を改善するときの、基本的な考え方(フロー)だと、思ってもらうといいかもしれません。以下の優先順位です。

1.現状のままのコンセプトであるが、ハードとしての新しさをよく考える。
従来の先行技術や類似のものにはない機構として、すでにその発明にある物(特徴、あたらしさ)があると思います。ここのハードをうまく掘り下げて、さらに活かすことができないか。 +αとして、それを強化する用途や機能を追加する。

2.さらにハード的に最適化出来ないか。
実現のためのハードウエアを、さらに最適なものに変更できないか。

3.課題を変える。
そのハードの特徴、あたらしさが最大限に生きる課題を、再度発掘する。


アイデアというのは、ハードがないと実現できない。

その手法を最適に実現するハード、そしてそのハードを最大に活かすターゲット(繰り返し)、と突き詰めていけば、ハードと方法が強固に結びついた、誰にも真似できない発明が出来ます。

2011年3月24日木曜日

発明塾京都 第31回開催報告

第31回も無事終了しました。

宿題の解説に始まり(サボテンPETボトルを使った中水浄化)ましたが、引き続き、今回のテーマの「洗剤の環境負荷低減」について、予習をベースに課題の抽出、既存の解決策の原理抽出整理、を行いました。

今回は、いわばこれまで半年間に一つづつ教えてきたことを、一気に通してやった、ということになります。

ある既存技術が解決している課題は何か(複数ある)?、その既存技術に含まれている技術要素一つひとつについて、全て挙げました。併せて、その解決策のモデル、原理、を抽出します。この時点で、討議が盛り上がり、アイデアに至る場合もあります。(この部分が従来の「ブレスト」に相当)

予習によって、既存技術が対象としている課題を手がかりに、具体的な課題を多数抽出しておく、そして、その解決策の「原理」を抽出しておく、この作業がいかに重要か、理解できたと思います。

この準備ができた上で討議が出来れば、集まったときの生産性が飛躍的に高まります。素晴らしいアイデアに至る可能性も高くなります。(すくなくとも、実現性があって斬新なアイデアが多数でる)

だんだんと、理想的な発明セッションに近くなってきました。

もちろん、何気ない会話からも素晴らしいアイデアが生まれる可能性もありますが、準備をしてアイデアの「確度」を上げる取り組みをしたい、それが発明塾の狙いです。そしてそれを方法論して共有できれば、人類はもっと多くの問題を解決することが出来ますよね。

世界中で、解決を待っている課題が、まだまだあるのです。

これからもよろしく。

2011年3月23日水曜日

課題設定の技法(結局これに尽きる)

ある程度「集中」しないといいアイデアは出ないが、集中するポイントを間違えると、どんなにアイデアを出しても、高い評価はえられない。

このジレンマを解決するのは、結局は「地道な作業」である。

今回は、まず入り口の部分「課題の設定」について、これまで発明塾や立命館大学、東京農工大MOT等で教えた手法を整理しておく。


1.まず、先行技術を一つ調べ、その技術が対象としている課題を抽出、課題に名前を付ける(耐久性、とか)
・課題分析
・問い「要するに、なんのためにこんなことするんか?」

2.同時にモデル化して、どういう原理で何をしているのかを「概念化」し、解決策の原理に名前をつける(振動利用、とか)
・解決手法の分析
・問い「要するに、何をどうしてるの?」

★1.-2.の時に選ぶ技術は、できるだけトンガッた技術が良い。解決モデルor対象課題が、斬新であるモノ。

★2.の時点で、「新たなアイデア=そのモデルを変化させる、そのモデルを他に適用するアイデア」が出るかもしれない。


これらができるようになれば(もしくはそれでアイデアが出なければ)、以下の、網羅的な手法に展開する。


3.既存の技術を整理して、それらが対象としている課題を抽出

4.複数の課題が出るはずなので、階層化し概念レベルを整理
・課題解決ツリー、ロジックツリーで整理(委細は割愛:塾で講義)

5.それぞれの課題に関する解決策を検索し、課題ごとに整理する。
・解決策がすでに大量に出ているものは、無視するか、もっと小さな課題に落としこんで調べる
・問い「10-100件程度の先行技術が出てくるのがちょうどいいのに」
その課題に市場性があるかどうかは、後で評価すればよい。(すぐに分かればそれに越したことはないが、最初から否定しないこと。)

6.ここで、既存の解決策をヒントにアイデア出しをやっても良い。やるほうが良い。
・検索漏れなどを補える(ちょっと考えて思いつく程度のことは、誰かが考えているから)
・問い「「他にいいやり方ないの?」「すでにあるかもしれないけど・・・」

7.できるだけ既存の解決策の切り口が少ない課題(群)を選ぶ、もしくはランク付け

8.(7.に)+αで、今後新たに出てきそうな課題(技術の進歩・ニーズの変化・社会や人間の変化)、見落としている課題、関連する分野での課題を追加する。
・問い「この分野・技術 × ???(今後流行りそうなこと、近い将来実現できそうなこと、最近実現可能になったこと)で、何が生まれるか?」+「それを実現させるには、今後何が必要?問題?」
この問いで出てくる前半部分は、テーマの予測(課題を含む製品、サービス、技術の分野)になるかもしれない。でも、課題についても予測ベースで考えることができる。

例えば、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
蓄電技術をテーマに、考えると、99%の人が「効率」を課題にあげる。そりゃたしかにそうだ。でもそこで終わってはいけない。効率をミクロに見ると「使いきれるか?」「最後まで安定した電圧」とか、単なる数字上の効率以上のものがあるかもしれない(これは僕の思いつきで、テキトーです。)ここでの「問い」は「効率ってなんだ?」ってことかな?(XXってなんぞや、という問いは、往々にして有効です。言葉遊びにならない限り。)

もっと、先に飛ばすと、蓄電は「エネルギーを貯めること」だが、なんのためか。それは一つには「持ち歩き」のためでもある。(あれ?課題抽出になってしまった。まあいいか)時間的平準化と空間的平準化だ。(MECEになってきた。どんどんずれていく。)

もっと大容量のエネルギーを(貯めて)気軽に持ち歩きたい。そんなニーズも出てくるかもしれない。(ようやく未来予測に戻った)。

ここでわかったことは、MECEも課題抽出も、未来予測のためだった、ってことだろうか。(僕もはじめてわかった:笑)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・「それって何に使えるの?」的な答えが出てきたら、マーケティング問題になる。
マーケティング問題については以下参照。
・出てきた課題、テーマについては先行技術を調べる。すでにあるかも。


9・市場(今後大きくなるか)、時間軸(近すぎ=だれかやってそう・遠すぎ=さすがに無理)、既存の解決策の数と種類(多すぎるなら今さらやっても、いろんな角度からやりつくされてるなら出番なし)、自分の知識(でもチャレンジしないと知識は増えない)、を鑑みて課題を選択。

10.その部分の課題解決ツリーに絞って、再びアイデア出しを行う。


この後は、具体的なアイデア出しの手法に譲る。
(ブレスト→詰め→発明の本質を考え直す⇔課題を考え直す→実現可能性の検証→表現、と進む。行き詰まったら、戻れる範囲のどこかへ「戻る」。)

2011年3月17日木曜日

発明塾@京都 第30回開催報告

今回のテーマは、GreyWater Recycling。 

上水でも下水でもない「中水」の利用における課題は何か、ということになります。
雨水の利用とか、風呂水を2回使うとか洗濯に使うとか、そんなやつです。

今回は、冒頭でまず問題全体の把握と、課題の抽出を行いました。
その後、各課題に関する先行技術調査をその場で行い、その技術をモデル化し、そこからブレストをはじめました。

まだ試行錯誤ですが、皆さん検索能力が向上してきたのと、課題について的確に概念化できるようになってきたため、今後の運営は本方式をベースに改良を重ねたいと思います。

議論するフィールドをある程度絞ったほうが、深い議論ができますから、まず範囲を限定して調べ・考え、そこから広げる→有望なネタが出てくればそこを集中して議論する、この繰り返しが良いような気がします。

1.課題はなにか⇔その課題を、従来どう解決しているか(既存技術)
>これはどちらから始めることも出来ます。検索して出てきた技術について、その対象としている課題で整理することも出来れば、あらかじめ、課題を想定し、その「課題」で検索して既存技術を取ってくる方法もあります。注意点は、それがクリティカルな課題かどうか(たとえばトレードオフを含むものは、一般的にクリティカル)です。余り小さな問題かつ「程度問題」の問題(それを解決すれば、システム全体がちょっと良くなる)を解決しても、マーケットは広がらない。
課題を想定できるのが一番いいですが、見落としもあるので、既存技術の検索と行ったり来たり(もしくは既存技術を網羅的に解析して課題を抽出する)、が本来的には正しい方法です。

2.その解決法の本質、モデルはなにか
>1.2.までが、課題解決分析、ロジカルシンキング)

3.そこからヒントを得て、発展?転換?新しいコンセプトが出せないか。
>電気があるなら磁気、とか。この辺はTRIZや水平思考の枠内+異分野融合。

4.さらに先の課題はなにか、課題オリエンテッドで新しいコンセプトは出せないか。
>XX化、みたいなもの。先読み、先回り思考。


僕の発明法自体も、皆さんとの議論を通じて、だいぶ整理されてきました。

やはり、発明しないと発明法は出来ない。

あたりまえの結論に至ったのが、前回と今回の感想です。

今後も宜しく。

2011年3月10日木曜日

発明塾@京都 第29回開催報告

今回は少し少なめの人数だったので、じっくりやりました。
5-6人と10名以上では、やり方が変わってきますね。

今回のテーマは「ナノ粒子汚染の防止」

防止といっても、検出~ろ過、無害化などいろいろ切り口はあるわけです。

このなかのまずどれに注目するのか。(どれから、という表現が正しいかもしれません)

そこから始まります。漠然と「ナノ粒子」について考えても、何も出てきません。

何に注目するのか。


そして、既存の技術がそこにどうアプローチしているのか。概念(僕はこれをモデルといいますが)で把握することが重要です。

詳しいことは講義で話しましたので割愛しますが、予習というのはこういうことを言うのです。


まず概要を把握することは重要ですが、漠然と情報をインプットしてきても、なにも始まらないでしょう。


「ナノ粒子の汚染」「それを防止する」「どう防止できるのか(切り口)」「既存はどうやっているのか(もしくはすでにどういう事が提案されているのか」「それをモデル化するとどういう事か」

ここまで来て、自分が調べたことが「圧縮」されて頭脳に入ります。

もう一歩「そのモデルを違う方法、技術で実現することはできないか」

これをたくさんストックしておく。そうすれば、ふとした情報が答えに結びつく可能性も高くなります。


次回から、予習=「従来技術を理解してモデル化しておくこと」でお願いします。

では。

2011年3月6日日曜日

発明塾東京 第41回開催報告

発明塾も一周年に近づいてきました。

一番最初に京都大学品川で始めたとき、いやいやそもそも「発明塾」やります、っていうつぶやきを流したときのドキドキが思い出されます。

付き合ってくれた塾生さん、ホンマにありがとう。

またご支援いただいた方々、改めてお礼を申し上げます。(まだ早いか。。。

さて、今回の東京は、いつものメンバーとゲスト一名で開催しました。

ある塾生さんの発明を「上位概念化」するところから始めました。さすがに皆慣れたもので「本質はXXX」というのが、すぐに出てくる。東京組の素晴らしいトコロです。

それにしたがって、再度アイデア出しをすると、出るわ出るわ・・・で新しい発明に到着。

すばらしい。

後半は、ブレストとしてエナジーハーベスティングについて議論。ちょっと難しいネタなのですが、、、リラックスした感じで、面白いアイデアは出ましたがもう一歩、って感じかな

次回もよろしく。

2011年3月5日土曜日

発明塾@京都 集中講義第二回開催報告 と 発想法特に「課題解決ツリー」

3月5日に@京都の集中講義第2回(後半)を行いました。前半とほぼ同じメンツでした。

今日のテーマはズバリ「発明発想法」。前回のテーマは情報分析(とマーケティング)でしたので、表裏一体のテーマです。

詳細は講義資料(と送付済みの追加資料)に譲りますが、Topicとしては
・課題解決~「なぜそうなのか」からそのアイデアの解決している課題を考える。
・構造化、MECE、上位概念化、ロジックツリー、の習熟~整理、検索、発想すべての基礎
・情報検索と異分野融合の有効性を確認する~競争力と進歩性のある「解」を出すために
・課題の「時間軸」を意識する練習~すでにやられている「であろう」課題ではなく、その先の課題に取り組むということになったのでしょうか?

あとは、Grワークの練習でもあります。

マインドマップではなくロジックツリーである理由も説明しました。

多くの場合、(特許)情報検索やブレインストーミングで「面白い」アイデアや情報が出てくるところからアイデア出しは始まります。その時の過程は例えば以下のようになります。

①見つけた情報、思いついたアイデアを書きだす
②Gr化してラベル付、名づけを行い、概念でくくる(上位概念化)
>特に「そのアイデアが解決している課題」を概念として導出し、それで整理する
>「課題」は複数である場合有り(それが普通?)
③階層性の確認。同じ階層の概念が、同じような大きさ(抽象度)の概念かどうか。
④MECEであるかどうかをチェックする。MECEでなければ組み換え、追加を行う。
⑤各階層に概念、切り口をどんどん追加して、既存の解決策やアイデアから漏れている切り口を探す
>これが、他人がやっていない「課題」「切り口」の探索につながる
⑥気づき、漏れがチェックできて、新たな発想につながる、網羅的に解が出せる
⑦行き詰まったら、一番上位の概念(たとえばA)に対して、NOT「A」を考える。
>たとえば「見える物」と「それ以外」=「見えないもの」
>「見えないもの」をさらにMECEで具体化する(例えば、意味、関係・・・など)

つまり、「具体」から始まって「抽象」(上位概念、課題)になり、さらに「水平展開」(MECEなどをつかう)して最終的に再度「具体」化して新しいアイデアに至ります。

この作業には、概念を中心に置き、広げる方向のみが強調されている「マインドマップ」ではなく、構造性を強調したロジックツリーが向いています。場合によっては、概念をどんどん抽象化していく必要もあるからです。

あとは「現在の課題」ではなく「未来の課題」について考えること、もやりました。

何かを調べたり、自分の身近なことにひきつけて考えると、どうしても今問題になっていることに目が行きがちですが、実際には今問題になっていることは、殆どの場合誰かが過去に手を打っていたり、すくなくともアイデアを出しています。そうではなくて、将来問題になるであろうことを想定して、その課題を具体化し解決策を考える必要があります。

そのために使えるのが例えば、「現在出来ていること」X「未来のテーマ」、を網羅的に考えてみることです。「靴」X「健康」、「靴」X「食料」などです。過去には「食べられる靴」というコンセプトを出した大学生(岡山大学での講義にて)もいます。もちろん、現在の課題が解決されるとして、他の未解決な課題、他の工程で問題になるであろうこと、他の部分で問題になることなどを考える(この辺はMECEで出せますね)ことも有効です。

いずれにせよ「他の人が未だ取り組んでいない課題」であるかどうかが、重要なのです。ここで十分に考えておかないと、後々頑張っても、結局似たようなアイデアがすでにたくさん有りますよね、とか、もっといいアイデアがありますよね、となってしまいます。

とにかく、そのアイデアは結局のところ何を解決しているのか、というところで課題を導き出し、その課題がすでにたくさんやられている課題ならば激戦区ということです。そこで進歩性や優位性のある解決策を出すには、切り口として斬新でかつ有効なものを出す必要があります。もちろん、この作業も重要です。

しかし、課題自体が新しければ、いわば「やりたい放題」ですから、広く権利が取れる可能性があります。

アイデアを見るときに、意識して「実はまだ誰も目を付けていない課題を解決している可能性はないか?」と考えてみるのも有効かもしれません。意外と気付いていないだけ、ということもあります。発明=「課題の創造」ぐらいに考えてください。

それぐらい「課題」にこだわってください。

「課題解決」「概念化、構造化、階層性」「MECEでどんどん切り口を出す」「まだあまりやられていない切り口、できれば、まだあまりやられていない課題に注目する」

あと一つ「名前をつける!」これ重要。(「シンデレラ」なかなか良かったです。)

集中講義はこれで終わりですので、今回の講義の手法を日々練習し、発明に励んでください。

ちなみに、今回の一連の講義の要点は、以下コラムにも記載があります。復習用に。
(特許分析、ロジックツリー、異分野結合、課題解決、発明の本質など)

ではでは。

2011年3月4日金曜日

特許化案件第一号!

ついに塾生さんから、Intellectual Ventures での特許化案件がでました。

賞金もさることながら、世界的なコンペで認められたことは大きな実績になりますし、米国特許がとれたとなると、さらに大きな実績になります。

ちなみに、その塾生さんは京都大学の修士一回生の方です。「発明法」を学び討議すれば、学生さんからもきちんとアイデアがでるし、それが世界的に通用することも明らかになりました。

皆さんもこれに続いてください。

2011年3月3日木曜日

「課題オリエンテッド発明」と「用途発明」~発明思考とマーケティング思考の間で

3月3日の発明塾で話した内容をまとめておきます。

いつも言っていることですが、広義の「発明」は

①用途発明
②課題解決型発明(狭義の「発明」)

の二つに分けることが出来るでしょう。



【用途発明 と 課題解決型発明】

「用途発明」とは、「こんな技術/材料があるんだけど、何かに使えませんかね?」に応えるもの。演習課題「光触媒の用途探索」は、こちらにあたります。

情報分析を用いる手法は、以下の論文で触れました。
特許情報を用いた技術マーケティング


他方、「課題解決型の発明(狭義の発明)」は「こんな問題があるんですけど、だれか何とかしてくれませんかね」に応えるもの。


必要は発明の母、などといいますが、発明というと皆さんがイメージするのはこちら。課題を解決する手法を探す、もしくは「課題を予測・発掘して」解決する、という発明です。

演習課題「新しい靴を考える」は、こちらにあたります。靴の現在の課題はなにか、将来、靴はどうあるべきか(それと現状のギャップが課題)、を考え、それを解決する(ギャップを埋める)技術を考える(たいていは=探す)ことになります。


しかし、すくなくとも僕の中では、これらは一面的な見方でしかありません。
2つは「奥底で深くつながっている」のです。


たとえば、用途発明のトピックでも、あるシチュエーションに限定して、そこで使えないか、使えない理由はなにか(つまり課題)、それを解決できないか、と考えていくことで、発明のタイプは「課題解決型」に変換されます。

この場合は、まず「どんなシチュエーション(状況=国、地域、場所、人、季節時間、産業、などの5W)がありうるか」をMECE的に導出し、「そのなかで有望そう(市場が大きそう)なところはどこか」と考えて、そこで使うための課題を発掘していくことになります。


もちろん、もっと具体的に、用途として思いつくものをMECE的に導出し、そこで使うための条件を考えても究極的には同じです。


逆に、「課題解決型」のトピックも「用途発明」に変換することが出来ます。すでに出来ていること、できそうなこと、とそれに関連する別のものを組み合わせると、さらに進化するのではないか、と考えてみます。


たとえば「靴で発電できる」というのは、すでに起こりつつある未来です。では発電できると何が解決できるのか。つまり、靴からの給電により解決できる課題を発掘するわけですが、そこで具体的な先行技術、アイデア、参考情報などを挙げていきます。「靴からの給電により解決できる課題を持つモノ」を探す、ということかもしれません。

立命館大学の講義では、この手法を用い、非常に面白く、かつ、有用性・実現可能性が極めて高い発明の創出に至った学生Grがありました。討議中、僕は、「パナソニックのHPにある家電カタログのすべてのものと、靴、を組み合わせて、それで何が起こるか、何が解決できるか、何が面白いか、どんな意味があるか考えて」と助言しました。

彼らはそれを忠実に実行し、素晴らしい発明が創出できました。


また「靴である必然性が薄い」方向へ進化させても無意味です。「靴」について発明を創出する場合、そもそも「靴」の特徴を生かし、「正常に」進化させる必要があります。この意味において、「用途発明」の根底にある考え方を知らずに、「課題解決型」発明に取り組むことは、不可能ではないかと、僕は思っています。



【発明討議で気を付けなければならないことは?】


ブレインストーミングでは、よく組み合わせの話をします。MECE、あるいは外部の情報源(MECE的にリストになっている物)を活用し、網羅的な組み合わせで考えるのも、ひとつの手法です。

僕は、一人でアイデア出しをしなければならない時、かなりの確率で、この手法を活用します。

かつて、これをブレストと称して行った際、ある上司から「一人で行うアイデア出しは、ブレストには属さない。この発言を撤回し、修正しなさい」と言われたことがあります。しかし、僕はこの手の、結果につながらない分類学や揚げ足取り(*)に、あまり興味がありません。何よりも結果を出したい、結果が出る方法を追求したい、と考えています。

頭の中で「嵐」が起き、素晴らしいアイデアが出れば、それは僕にとって「BrainStorming」です。

皆さんも、常に頭に「嵐」を起こしてください。


言葉の定義や分類に「屁理屈」的にこだわり、揚げ足を取り、勝ち誇る姿勢は、発明にとって有害無益です。その方法をなんと呼ぶかは別にして、「いいアイデアが出たかどうか」で判断しましょう。


僕がいつも、どんなアイデアや情報に対しても、


「それなかなか面白いね、どうやって思いついたの」

「それなかなかいい情報だね、どうやってみつけたの」

と聞くのには、訳があります。



「どんな(下手な)演奏からも、必ず学べる」(ある著名なギタリストの伝記から)


と、思っているからです。



そして、


「どんなアイデア/情報からも、何かを引き出し、その場を一歩でも進めることに集中する」


のが、その場にいる全員のミッションだからです。



忘れないでください。発明討議において、誰かに勝つ必要はありません。いい発明が出れば、その場にいる全員が勝者です。自身の知識をひけらかしたり、論理的思考能力を誇示する必要はありません。

「その場の誰か」の頭から、発明が出ればよいのです。その発明が凄いかどうか、それが全てです。


そして、みんなで一緒に勝ちましょう。それが発明の面白さです。

誰一人、負かす必要はありません。結果を出すために、他人を否定する必要はないのです。


僕自身も、たまに「やって」しまうので、自戒の意味も含め、書いておきました。





* ある種の「ディベート」には、技巧として必要かもしれません。「朝xx生TV」みたいなものをイメージしましょう。小さな失点を拡大して相手を否定し、勝ちに持っていく、というタイプの議論です。僕は、全く興味がありません。ですので、議論には常に負けます。それで、結構損をしている気がしますが、人生の貴重な時間を、「人類にとって何の進歩ももたらさない(ゼロサム)、口先だけの勝ち負け」で、無駄にしたくないという思いの方が、今のところ勝っています。


発明塾@京都 第28回開催報告

第28回も無事終了しました。

今回は、特許採択第一号の塾生さんも参加して、アイデアが特許になるまで、の話もしました。これを体験することも、発明塾でできること、の大きな一つなので、採択された人はその後もしっかりついてきてください。

学生時代に国際出願、米国出願などを体験することは殆ど無いでしょう。しかし、これらの経験から、自分のアイデアが世界で認められるために必要なこと、を学ぶことが出来ます。

さて、今回の塾では、リサイクルプラスチックの用途について考えました。

いわゆる用途発明の部類に入るテーマです。前回の、エネルギーハーべスティングも同じでした。

詳細は以下ページに作成しますが、用途発明を考えるときのポイントは「まずシチュエーションを出す(できれば市場が大きそうなシチュエーション)」「それぞれのシチュエーションについて具体的に考える」になります。

・「課題オリエンテッド発明と用途発明:発明思考とマーケティング思考


今回のリサイクルプラスチックなら、先進国かBRICsかそれ以外の途上国か。どこかにまとめてリサイクルするのかオンサイトでやるのか、思い切って輸出するとか輸入するとか、再利用の形態も幾つか考えられます。この辺はMECEである程度場合分けができますから、その中で、まだあまり手が付いていないところ(権利が取れる)で、これから大いに伸びる余地のあるところ(将来市場が大きくなる)を優先的に選択し、アイデア出しを行います。

すでにリサイクルの進んでいる業態のアナロジー(典型的には紙、そのつぎは食品?)もあるでしょう。

今回もなかなか面白いアイデアが出ました。

今回のアイデアの出方を見て感じたことは、ブレストの中でも、ある程度探索的、発散的な作業をする部分と、たまに(もしくは最後に)少しまとめてみて、皆の視点を集中させて考える部分があったほうがいいのかな、というところです。

発散→収束させて意見交換→煮詰まったらまた発散

てな感じでしょうか?意見交換すると、どうしても「否定」から入る人が出てくるので要注意ですが(それはXXさんが昔やったけど無理、コストが高いなど)、その辺のリテラシーが出来ているメンバーであれば、問題ないように感じました。

まぁ、この辺は僕の責任範囲なんでしょう(笑)

今後も、楠浦の方で適宜ハンドリングして、うまくアイデアが出るようにしていければと思います。
私自身にも、ファシリテーションのノウハウがかなり貯まってきました。

では、第一号に続き、続々と特許化案件が出ることを夢見て?おります。

これからもよろしく。