「発明塾®」へようこそ!: 課題設定の技法(結局これに尽きる)

2011年3月23日水曜日

課題設定の技法(結局これに尽きる)

ある程度「集中」しないといいアイデアは出ないが、集中するポイントを間違えると、どんなにアイデアを出しても、高い評価はえられない。

このジレンマを解決するのは、結局は「地道な作業」である。

今回は、まず入り口の部分「課題の設定」について、これまで発明塾や立命館大学、東京農工大MOT等で教えた手法を整理しておく。


1.まず、先行技術を一つ調べ、その技術が対象としている課題を抽出、課題に名前を付ける(耐久性、とか)
・課題分析
・問い「要するに、なんのためにこんなことするんか?」

2.同時にモデル化して、どういう原理で何をしているのかを「概念化」し、解決策の原理に名前をつける(振動利用、とか)
・解決手法の分析
・問い「要するに、何をどうしてるの?」

★1.-2.の時に選ぶ技術は、できるだけトンガッた技術が良い。解決モデルor対象課題が、斬新であるモノ。

★2.の時点で、「新たなアイデア=そのモデルを変化させる、そのモデルを他に適用するアイデア」が出るかもしれない。


これらができるようになれば(もしくはそれでアイデアが出なければ)、以下の、網羅的な手法に展開する。


3.既存の技術を整理して、それらが対象としている課題を抽出

4.複数の課題が出るはずなので、階層化し概念レベルを整理
・課題解決ツリー、ロジックツリーで整理(委細は割愛:塾で講義)

5.それぞれの課題に関する解決策を検索し、課題ごとに整理する。
・解決策がすでに大量に出ているものは、無視するか、もっと小さな課題に落としこんで調べる
・問い「10-100件程度の先行技術が出てくるのがちょうどいいのに」
その課題に市場性があるかどうかは、後で評価すればよい。(すぐに分かればそれに越したことはないが、最初から否定しないこと。)

6.ここで、既存の解決策をヒントにアイデア出しをやっても良い。やるほうが良い。
・検索漏れなどを補える(ちょっと考えて思いつく程度のことは、誰かが考えているから)
・問い「「他にいいやり方ないの?」「すでにあるかもしれないけど・・・」

7.できるだけ既存の解決策の切り口が少ない課題(群)を選ぶ、もしくはランク付け

8.(7.に)+αで、今後新たに出てきそうな課題(技術の進歩・ニーズの変化・社会や人間の変化)、見落としている課題、関連する分野での課題を追加する。
・問い「この分野・技術 × ???(今後流行りそうなこと、近い将来実現できそうなこと、最近実現可能になったこと)で、何が生まれるか?」+「それを実現させるには、今後何が必要?問題?」
この問いで出てくる前半部分は、テーマの予測(課題を含む製品、サービス、技術の分野)になるかもしれない。でも、課題についても予測ベースで考えることができる。

例えば、
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蓄電技術をテーマに、考えると、99%の人が「効率」を課題にあげる。そりゃたしかにそうだ。でもそこで終わってはいけない。効率をミクロに見ると「使いきれるか?」「最後まで安定した電圧」とか、単なる数字上の効率以上のものがあるかもしれない(これは僕の思いつきで、テキトーです。)ここでの「問い」は「効率ってなんだ?」ってことかな?(XXってなんぞや、という問いは、往々にして有効です。言葉遊びにならない限り。)

もっと、先に飛ばすと、蓄電は「エネルギーを貯めること」だが、なんのためか。それは一つには「持ち歩き」のためでもある。(あれ?課題抽出になってしまった。まあいいか)時間的平準化と空間的平準化だ。(MECEになってきた。どんどんずれていく。)

もっと大容量のエネルギーを(貯めて)気軽に持ち歩きたい。そんなニーズも出てくるかもしれない。(ようやく未来予測に戻った)。

ここでわかったことは、MECEも課題抽出も、未来予測のためだった、ってことだろうか。(僕もはじめてわかった:笑)
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・「それって何に使えるの?」的な答えが出てきたら、マーケティング問題になる。
マーケティング問題については以下参照。
・出てきた課題、テーマについては先行技術を調べる。すでにあるかも。


9・市場(今後大きくなるか)、時間軸(近すぎ=だれかやってそう・遠すぎ=さすがに無理)、既存の解決策の数と種類(多すぎるなら今さらやっても、いろんな角度からやりつくされてるなら出番なし)、自分の知識(でもチャレンジしないと知識は増えない)、を鑑みて課題を選択。

10.その部分の課題解決ツリーに絞って、再びアイデア出しを行う。


この後は、具体的なアイデア出しの手法に譲る。
(ブレスト→詰め→発明の本質を考え直す⇔課題を考え直す→実現可能性の検証→表現、と進む。行き詰まったら、戻れる範囲のどこかへ「戻る」。)