「発明塾®」へようこそ!: 11月 2012

2012年11月29日木曜日

発明塾京都第110回開催報告

Wow. 110回ですか。継続は力なり。

今回は、前回に引き続き、塾生さんの「発明講義」でした。

 僕が最近不思議に思うことは、
「僕がこんなにひねくれて?いるのに、塾生はなぜこんなに素直なのか」
ということです。継続して出ている塾生は、皆一様に、非常に素直で良い学生ばかりです。ちょっと僕には理解できないですね(笑)。

 あと一つ。相手のレベルが上がると、教えるレベルも上がるのですが、
「さらに高度なことを求められているようで、楽しい」
と言ってくれていること。

 これは「ラーニング・オーガニゼーション」特有の現象だと思います。「成長が最大のドライバーになって、ますます成長する」という好循環に入っています。

 結局のところ、僕が「塾」として始めた理由は、ひとりひとりの思考のタイプとレベルに応じて、敢えて最終目的地を教えることなく、山登りを楽しんでもらうためなのです。知らないうちにエベレスト、みたいな。

だって、最初から「エベレストですから」と言っても、誰も来ないでしょ(笑)。

 難しいのは今後。「発明塾ではエベレストに登る」とバレてしまっているので、みんなビビって来ないんじゃないかな、ということです。好奇心旺盛で、勇気ある学生の参加を、期待しています。

「みんなで登れば怖くない」

てか、僕は一人で登ったんですけど!(笑) 今は塾生がいますから、ちょっと楽ですね(笑)

See you!

2012年11月25日日曜日

塾長の部屋(25)~僕の「読書論」

Hi guys.

 本日は予定を変更して、今後多くなりそうな気がする質問について、予め先手を打っておきたいと思います。それが「読書」に関することです。

 実は僕は「最近、ほとんど新しい(いろいろな意味がありますが)本を読まない」ことにしています。意外に思った人もいるかも知れません。御存知の通り、弊社のメルマガで毎回紹介している本は、すべて僕の読書ノートからの紹介なので、「じゃあ、あれは何なの?」ということになりますが・・・。

 答えは簡単で「昔読んだ本」です。中学~昨年までに読んだ本を、必要に応じて紹介しており、直近の本は殆どありません(たまに、良い新刊本があれば取り上げていますが)。40になって「ここから5年はアウトプットの時期」と決めているので、不用意に情報入手に時間を割かないようにしています。もちろん、30代に結構な量の本を読んだから、ということもありますが。

「情報断食」

僕が定期的に行う、整理法の一つです。

 それを踏まえて、塾生向けに、幾つか質問があった点をまとめておきます。いつもどおり、あくまで大学生、もしくは発明塾卒業生向け、という点はご理解を。

①読書論的なもの
②いつも読んでいる雑誌等

===
①読書論的なもの
 実は僕は、読書のハウツーについて、特に意識したことがない。子供の頃から本を読むのは大好きだったし、特にああしなきゃこうしなきゃ、的なものはない。これで終わってしまいそうなので、塾生に送ったメールをベースに、読書について少しメモを残しておく。

 読書については、How to より What が重要だと思う。なので例えば、

立花隆「ぼくはこんな本を読んできた」

を始めとして、「XXX50冊」みたいな、名作本リスト、名作本のダイジェストみたいなのを大量に持っている。

 How To については、僕は読んでいないけれど、佐藤優(元外交官)氏が、最近、結構いい本を出しているらしい。書評を読む限り、僕がやっている事と、ほぼ同じ事を言っている(もっとすごいことになっているようですが)。

 個人的には、本の読み方は「飛ばし読みするか、じっくり読むか」の2択しか無いと思う。その選別が重要。じっくり読むなら憶えるのが一番(写経も含め)。憶えたら読む必要がなくなるから、それについて考えることが、場所と時間を選ばなくなる。ちょっとした時間に考えられるから、思考量が飛躍的に増える。結局、どんだけ本を読んでも、それについて考えなきゃ意味が無い。百科事典的知識は、ネットで足りる。

 飛ばし読みするなら、目次で我慢するか、フォトリーディングになる。

 僕的には、読書に特別なハウツーはいらない、というのがハウツーかもしれない。いい本は覚えてしまうのが一番で、ちょっと気になる本は、さらっと読む程度で我慢するしか無い。


②いつも読んでいる雑誌等
 現在、定期購読している雑誌は学会誌(化学系、材料系を数誌)を除くと2つしか無い。その内の一冊は「日経トップリーダー」で、中小企業の経営者がよく読む雑誌(らしい)。たまに取引先の社長が出てたりするので、パラっと読んでいる。

 定期購読まで行かないが、比較的読むのは「クーリエ・ジャポン」「Wired」。

 30代前半までに遡ると、いろんな雑誌を読んでいた。

・「ハーバード・ビジネス・レビュー」
・「ビジネスウィーク」
・「ネイチャー」
・「TopPoint」 http://www.toppoint.jp/ 

等。

 個人的には、ハーバード・ビジネス・レビューは、30前後の人が読むのに適していると思う。それ以上になると、「一旦」もっと現場の泥臭いことに興味が移るはず。ビジネスウィークは、今なら読む必要はないかも(ネットで情報は手に入る)。ネイチャー、サイエンスも30前後までにしっかり読んでおくと、最先端の科学技術を広く見れるようになる。サイエンスの無いところに進歩はないので、ここは押さえておきたい。

 最後の「TopPoint」は、本を紹介する雑誌。経営者としての責務も含めて忙しくなり、物理的に本が読めなくなってきた30代前半~半ばに、活用した雑誌。すごくいい雑誌です。かなりオススメです。

 他、参考としていろんなサイトやメルマガを登録しているのですが、Googleカレンダーに「いつ読むのか」を登録して、時間を決めて見ている。この辺も、社会人的には常識ですが、学生さんには参考になるはず。

 ここでも重要なのは、サンプリングだと思う。結局、発明と同じじゃん、と思ったS君は正解。

 See you!


2012年11月24日土曜日

立命館大学「発明講義」第9回から~何のための発明教育か

「塾長の部屋」(24)
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/11/blog-post_17.html

が効いたのか、遅刻者がグッと減ったのと、寝る人がいなくなりました(笑

「みんな、やればできるやん」

後半も頑張りましょう!

 さて、今回の講義では「新しい靴」(例年通り)を考えるための、ちょっとした演習を行いました。前回同様、「他人との差分をクリエイティブに止揚する」ことを実践してもらうためです。僕の体験を少し話しましょう。

 大半の方が御存知の通り、僕自身はかなり「横柄かつ、わがまま」な人間です(笑。論理的思考にもそれなりに自信があるため、自分の意見を通そうと思えば、まず通せます(笑。で、かつての僕は、

「A or B. Which is better?」

というスキームで動いていました。「横柄とわがまま」は、いまも変わらないかも知れませんが、僕のなかでは、発明を始めてから、ある変化が起こっています。

「A or B. Are there any other options?」

まずここから始まります。後は、発明塾で教えているとおりです。Why思考を通じて再びHowへ。サンプリングから論理へ。ボルツマン的熱死ではなく、マクスウェルの悪魔の導入。一旦、ポテンシャルを上げる(できればそのまま維持して答えまで行く)。

結果的に、これまでに考えつかなかった解に、たどり着けるようになりました。

もう一つ効果があります。

「自分と違うタイプと話すほうが、意味があることを実感できたこと」

自分と考え方の違う人間こそ、「解」への力を与えてくれるのです。これに気づいてから、僕のメンバーへの接し方は、明らかに変わったと思います。

「発明を学ぶことは、リーダーシップのあり方を変える」

現時点での、僕の気付きです。これを、残り数回の講義で伝えられるか。立命館大学から課せられた?(いや、特に指示はされていませんが)、僕の「課題」です。

仕事は自分で作るものです。

「自ら目的を設定し、それを達成する。」

これも、学んでほしいことです。与えられた環境の中で、適切な目標を設定し、ベストを尽くす。社会人としての、第一歩です。僕は、

「大学教育の第一の目的は、善き市民を育てることである」

と思っています。良きサラリーマンを育てることでも、研究者を育てることでもありません。義務と権利、自ら目標を設定する、最善を尽くす、社会と共同体に貢献する。そういうことを、この講義で教えられたらな、と思っています。

そして、自らの人生は、自らの力で切り拓く。リーダーシップの第一歩だと思います(注)。

See you!



※ 注)そういう意味で僕は、特に東京の学生や社会人に多い「勉強会」「交流会」「ネットワーキング」中毒的な傾向が、あまり好きになれません。関西人のヒガミ、かもしれませんが「人脈があればなんとかなる」「他人と繋がっていればなんとかなる」という、依存的な空気を感じてしまうからです。
「天は、自ら助くるものを助く」スマイルズ
「集合知は、相互依存的な状態では、上手く働かない」(ある集合知の専門家の方の言葉)



2012年11月22日木曜日

発明塾京都第109回開催報告

怒涛の一週間が終わりました。

 今回は、塾生さんの発明理論解説を中心に行いました。僕がいつも言うことですが、発明法は、塾生の数だけ有って良いと思っています。必ずしも人と同じ方法で、高みに達することができるとは限りません。むしろ各自の「道」を追求する必要があるとすら、思っています。(といっても大きく数パターンであることがわかっています)

 そういう意味で、各自で発明法をまとめてくれるのは、非常に良いことだと思います。彼ら自身のため、という意味において。そして僕自身も、これまで通り、各自のタイプに合わせた発明指導を、地道に続けていきます。

 さて、彼らは自分でまとめた方法で、実際に発明を行なってくれました。曰く、一瞬でいい発明が出たようです。それ以外にも、いろいろな気付きがあったことを報告してくれました。僕自身の気付きと対応したものでしたので、正しい学びが発明塾で行われていることが確認できました。

 同じタイプの後輩を指導してくれたり、互いに討議の相手になって発明を進めてくれたりと、「発明」を通じた学びが広がっていることは、非常に嬉しい。僕が理想としている学習環境が、生み出されています。まさに、これこそが僕の「発明」です。

 次回は、講義の後半です。楽しみですね。


2012年11月17日土曜日

塾長の部屋(24)~「差分を止揚する」クリエイティブな議論の作法

다녀왔습니다.

 僕の仕事(ソウルでのStar-Inventor-MTG)の関係で、今週の発明塾はお休みでしたが、金曜日の立命館大学の講義は、通常通り開催しましたので、まずはその報告から。


 前半の課題(技術マーケティング)を終えて、若干人数も少なくなっていますが、後半の講義(発明)を始めました。僕は、大学生には2つの権利があると思っています。彼らはその権利を、お金を払って購入しているのです。


①まじめに講義を受ける権利

②講義を受けない権利(来ない権利、遅刻する権利、早退する権利、寝る権利)

どちらをどう行使してもらっても構わないのですが、一般的な法治国家の原則である「他者の権利を制限しない範囲で各自が権利を追求できる」という原則は、大学でも同じです。つまり、


・寝ても構わないし、遅刻しても構わないが、勉強したい人の権利行使は「絶対に」妨げない


ことを徹底してもらっています。ですので僕は、遅れてきた学生に、挨拶程度はしますが、再度説明することはしないし、寝ている学生を起こしてGrワークに参加させることもしない。真面目に受けている学生の権利を「著しく制限する」からです。


 昔、京都大学では豊田先生という有名な法学の教授がおられました。彼の初回の講義はいつも満席。理由は「単位はあげますから、授業には来ないでください、皆帰れー!」という、たった一言を聞くためです(注)。彼は、本当に勉強したい学生だけを残して、淡々と講義をしたそうです。


 すべての講義がそうである理由はないですが、僕は上記のスタイルを貫いています。もちろん、面白い講義をする努力もしていますが(それは受けてもらえれば分かる)。理由は一つ。


「市民として社会で生きていくにおいて一番重要である、義務と権利、の概念についてよく理解して欲しいから」


自由とは「積極的」なものであり
それには義務が伴う

 僕は、かつて高校生に英語を教えていましたが、英語を学ぶことがすべての学生にとって意味があるとは思っていませんでした。ですので僕は「英語を通じて、哲学、経済、環境、国際政治について学び、あるいは生きる意味について考えてもらう」ことを、僕自身の英語教育の目的としていました。教材には古今東西の名文、最新の記事、音楽などを用いて、独自のテキストを全て自分で作っていました。もちろん定期的に行うテストも、全て自分で作成していました。教育の基本は教材であり、それを正しいの哲学の基に作成することが、教育の一番重要なポイントだと、今でも思っています。


 その考えは、いまの弊社の発明教育、知財教育にも受け継がれています。


 脱線失礼。


 だから、僕はこの「発明講義」で、知財や発明について「だけ」教えるつもりはありません。何を教える場合にも、ほかのあらゆることを教えることができるし、そうすべきである。これが僕の教育哲学です。


 理由は「教養教育の目的は、視野を広げることだから」です。僕の講義は、どの専門にも属さない、教養的科目だと思っています。実際、理工系、文系、大学院生、あらゆる人が受講できるように、科目設定されています。


 なので、僕はこの講義のルールを通じて「ロック、ルソー、ホッブス」などがその著作で述べている法哲学や、法の精神について学んでもらいたいと思っている。また講義の中で、経営、経済、語学、論理的な文章の書き方、をはじめとした様々なことを教えたいと思っているし、実際教えている。例えば今回の講義では、


「クリエイティブな議論において一番重要なのは、自分と違う意見や物の見方に出会った時、『間違っている』として排除するために論理的思考を使う(差分を探して批判する)のではなく、『自分の思考を補完するために』論理的思考を使う(差分を取り込み、止揚する)ことである」

ということを教えた。これは、特に海外の人たちと、協力してなにか創造的な作業をする時に、極めて重要になってくる。よく、論理的思考を「揚げ足取り」「批判」のために駆使して、相手との議論に勝つことを良しとする人がいるが、僕にはそれは生産的なことには思えない。相手との差を「どう使うか」、それが「創造性」であり「生産的な思考法」だと思う。ディベートの技術というのは、自分の思考を検証するために使うものであり、他者を攻撃するために使うものではない。

「カナヅチを持つと、なんでもクギに見えてくる」

論理的思考能力を持つと、他人のアラを探したくなる。でも、よく言われるように、

「二人がいつも同じ意見であれば、どちらかは不要」

なのです。僕は「見方の違い」を糧にする事が出来る人材が、これからの世界を「より良く」してくれると信じている。

 最後に、今回の講義に関する学生さんのアンケートの一部を共有しておきましょう。今回の講義では、例の10円玉ゲームと浮世絵ゲームをやりました。

「自分とは違う視点を、周りの人が持っていることに驚いた。視野が広がった。」
「物事をありのままに見るということの重要性が分かった。」
「自分が、とても偏った物の見方をしていることがわかった。」
「無心になって発想すると、意外と色々思いつくことができた。」


※注) ちなみに僕は、その初回にすら出ていない(笑 が、もちろん単位は持っている(笑。



2012年11月11日日曜日

塾長の部屋(23)~会社とは何か、仕事とは何か

Good morning guys.

さて、今日は少し発明から離れて、僕の過去の講演やキャリアから「やはり、後に残る形で伝えておかないといけないんだな」と感じたことを。

僕の経歴は、すでに皆さんご存知の通り、新卒で入った川崎重工から、縁があって29歳の時に小松製作所へ移り、2004年にナノテクベンチャーの設立、現在に至ります。

人によっては「よく仕事を変わっていますが、何か理由があるのか」と聞かれることもありますが、特にこれといった(一貫した)理由はない、というのが正直なところです。数年に渡り粘り強くお誘いいただいたケースもありますし、偶然もあります。自分の意志で転職活動をしたことがない、という共通項はあるかも知れません。

キャリアだけを見て、よく「転職相談」的なことを受けることがありますが、上記のような理由で、僕がアドバイスできることはほとんどありません。当時、転職市場も今ほど整備されておらず、環境も違いますしね。

しかし、せっかく聞きに来てくれるので、なにかアドバイスできることがないかと思い、僕が話すことは大体以下の様なことです。これは、2008年(だったと思う)から毎年「ものづくり講義」(京都大学機械系)で話している内容でもあり、2009年にSmipsの「知財キャリア分科会」で話した内容でもあります。

結論から言うと、

・仕事とは、自分の能力を社会的価値に変換する活動である。その対価として、報酬が得られる。
・会社とは、個々人の能力を社会的価値に変換するための仕組みである。それを発展的に維持するためには、収益が必要である。

ということになります。

僕がこのことを明確に意識したのは、2000年前後だと思います(当時28才ぐらいでしょうか)。バイクが好きでオートバイ設計をやっていたわけですが、一通りのことができるようになると、もう少し大きな視点から世の中を見れるようになった、という典型的な例でしょう。

その後、2003年にある経営者と出会ったことが、僕が「本気で」経営者を目指すきっかけになります。

この一連の流れの中で、僕が出会った本を挙げておきます。

①「社会起業家-よい社会を作る人たち」町田洋次
②「人生の短さについて」セネカ
③「ムハマド・ユヌス自伝」

すでに紹介済みの①、②はもういいでしょうか。①と②は、僕が「退職する」人や「退職するとき」に、お世話になった方々によく渡す本です。読みかけの本を渡したりするので、僕の手元の本は常に新しいという、副次的効果があります。

③はあまり紹介しないのですが、これを読んで「政治ではなく、経済が世の中を動かす」ということについて、明確なイメージを持つことができました。ちょうど2004年ごろに読んだこともあり、現在の僕の経営哲学に、非常に大きな影響を及ぼしています。

 ユヌス氏は2006年にノーベル平和賞を受賞しているので、今では皆さん、名前ぐらいはご存じでしょうが、当時僕の周りでは、彼の活動に注目する人はいませんでしたし、書評等でも全く話題に登っていなかった記憶があります。時代の流れの速さを感じます。

講義では、ユヌス氏の取り組み以外に、ドミニ氏のSRI投資を紹介しています。これも有名ですよね。

・エイミー ドミニ
http://www.nikkei.co.jp/hensei/ngmf2004/r_domini.html 

こういった「社会的責任」を、ビジネスを通じて追求しようという流れは、日本でも2000年ぐらいから話題になり始めたと記憶しています。

もう一つ僕が注目していたのは「成功して寄付する」というロールモデルの今後。2006年に、バフェット氏はゲイツ財団に財産の半分を寄付すると公表するなど、動きがあるなと思っていました。ちなみに、バフェットが公表した寄付金額は、ちょっとした国の予算に相当するものでした。興味がある人は調べてみてください(講義では解説済み)。

ユヌス氏の話に戻せば、「単純な援助はどこまで有効なの?」というQに戻ります。当時の僕の答えは以下の2つです。

①支援の中で、もっとも効果が高いのは「教育」。でも時間がかかる。
②テクノロジーへの投資を通じて、世の中を加速度的に良くすることは出来ないか。

はい。②は僕が前の会社で追求していたことであり、①が現在の会社で追求していることです。ゲイツ氏は現在、様々なテクノロジーに積極的に投資をしていますが、同じようなことを考えているのかも知れません。

教育、という意味で僕がひとつの理想と考えているのは、これも紹介済みですが、

・Deep Springs College
http://www.deepsprings.edu/home 
http://www.unipro-note.net/archives/50139010.html (日本語の解説記事)

です。僕もちょうど下段のクーリエ・ジャポンを読んで知りました。それから6年、発明塾もだんだんと形になりつつあります。教育は時間が掛かりますし、新規事業?は、タイミングも含め、やはり時間がかかります。先を見て布石を打つ、そんな経営者の仕事の醍醐味は、5年、10年やってきたことが、大きな「社会的価値」を生む瞬間に立ち会えることだと思っています。

経営なんて地味でつらい仕事はやめておけ、経営者志望の学生に、僕が必ず言うことです。でも、その苦労が周りの人の幸せに繋がること、その事自体を自らの喜びに出来る人は、ぜひ経営者になっていただきたい。

マズローも、そう言っています(僕の解釈です)。


2012年11月8日木曜日

発明塾京都第108回開催報告

晚上好!

第108回も、非常に良いアイデアの討議が出来ました。

最近持ち込まれるアイデアの特徴は
・元のスジが良い
・後何を詰めればよいかが明確
というところでしょうか。

今回も、持ち込まれて15分ほどでサクッと詰まりました。ラストワンピースだと、非常に楽ができます。始めた頃、僕が1人で盛り上げていたのとは、エライ違いです(笑

ちゃんと身につくんですね、発明法って。

後半は講義時間にしました。発明塾で教えていることは、実際には新規事業開発論に近いと思います。僕自身は「発明とはビジネスモデル付きのアイデア」と言っていますので、そうならざるを得ません。

どうやれば勝てるのか。そのためにどういうアイデアが必要か。

それを考えるのが、発明塾です。

「ちょっと面白いこと言う」ぐらいのことは、中学生にも出来ますからね(塾生談)。

では、次週はお休み(発明休暇)ですので、その間しっかり詰めておいてください。


2012年11月5日月曜日

塾長の部屋(22)~今月の「社内ブレスト」

Hi.

 本日は、毎月定例の「社内ブレスト」でした。

・「社内ブレスト」
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/09/blog-post_12.html

 詳しい様子は割愛しますが、今回も特定の発明テーマに基いて、課題を深掘りし発明を創出しました。今回のテーマは、5年先ぐらいのテーマでしょうか。昔から研究されているにもかかわらず実用化が全く進まない分野の一つなのですが、自分たちで調べていて「なるほど、だから実用化が進んでいないのね」というところが、よくわかったブレストでもありました。
 
 技術的にはかなりニッチな内容なのですが、専門外(注)の弊社メンバー(営業担当も参加)から、非常によいヒントが出ました。やはり、メンバーの「多様性」は重要ですね。
 
 いつものことですが、9:30-15:00までやると、かなり疲れます。今日は「まだいけるかな」というところで終了としましたが、帰宅してみると「腰は痛いわ、足はツルわ、頭痛は止まらないわ」で、結構疲れていたことが判明しました。

 歳には勝てませんね。

 いつまで続けられるのかわかりませんが、「発明を科学する」ためにも、できる限り毎月、この「荒行」を続けていきたいと思います。

※ 注)今回のテーマは、ナノテク・半導体から歯車・風車までこなす僕にとっても、わりと専門外でした。


2012年11月4日日曜日

塾長の部屋(21)~「プロ」論

Hola! que tal?

 今日の日経新聞に、三菱重工の佃(つくだ)社長のコメントが載っていました。現時点で、僕が注目する経営者の1人です。「未だ日本で作れるものがあるうちに、次の手を打つ」そう言っておられました。

 過去、東芝の西田氏、りそなHDの細谷氏、TOTOの木瀬氏など、僕が注目していた経営者の言葉が、当時の手帳には大量にメモしてあります。今でも定期的に見直し、まとめ直し、ということをやっています。

 「写経」ですね。

 過去の偉人だけではなく、リアルタイムで経営の最前線におられる諸先輩の言葉からも、学ぶことが多数あります。

2005年ごろに読んだ本ですが、
古びないですね


 さて。

 今日は、私がコマツ時代に教えていただいたことを少し紹介したいと思います。コマツの坂根社長(当時)の言葉からも、学ぶことがたくさんありましたが、今回紹介するのは、ある部長さんの言葉です。全て引用するのは分量が多すぎるので、塾で紹介するとして、その一番の肝の部分を紹介します(少しアレンジしています)。

・「お金をもらって、勉強して、成果を挙げ顧客に満足を与える、のがプロ」
・「お金を払って、自己満足するのはアマチュア」
・「あなたはどちら」

 O部長は、私がコマツ時代に指導を受けた3名の部長の一名です。当時の僕は都合により上司が並列で3名、いわゆる「ワンマンスリーボス」という、人事管理において最悪と言われる状況にありましたが、3名の方から個別に指導を受けられたという意味では、3倍の密度の時間を過ごすことができました。今となっては感謝しています。

 彼が、年始の挨拶(だったと思う)で配布した3枚のプリントが秀逸で、今でも僕の自宅兼オフィスの机の前に、ラミネートして貼ってあります(欲しい塾生には、コピーをあげます)。

 僕は、お金を払って勉強をしたいという誘惑に駆られたら、常にここに立ち戻ることにしています。

 「成果を先に考える」

 これが僕が考える「プロの学び」です。発明塾は、この精神で運営されています。コストベースで学ぶことが日常化することは、プロを目指す社会人にとっては、非常に危険です。学ぶことが自己目的化してしまうからです。自己の成長を通じて、どういう(これまでにない)価値を社会に提供したいのか、それを常に忘れないために、O部長の言葉を常に目の前においています。

 O部長の3枚のプリントには、マネジメントとプロ精神のエッセンスが凝縮されています。皆さんも、そういう上司に巡り合われることを、祈ります。そして、そういう上司になられることを、期待します。

2012年11月1日木曜日

発明塾京都第107回開催報告~組織と個人の知的生産性を向上させるための「発明塾」

Hi guys.

@京都 第107回も無事終了しました。

 今回も、結局持ち込まれたアイデアの討議でほとんどの時間を使うことになり、講義しようと思っていたことがなかなか出来ずにいますが、発明塾は「Output」志向の取り組みなので、良いことなのかも知れません。

 さて、塾生曰く「我々は発明塾3.0のステージに突入した」ようです。実際、持ち込まれたアイデアは、あれよあれよという間に処理されて行きます。自動車工場のラインを見るが如く、アイデアが次から次へと「仕上がっていく」様は、壮観でした。

 昨日は、始まって15分で「スパッ」と決着したK君の1件目を皮切りに、数件のアイデアを討議しました。間に、塾生自身による「発明塾思考回路講義」をはさみ、最後は質疑応答で時間切れとなりました。幾つか話題を見てみましょう。


1.オモロイアイデアではなく「ヤバい」アイデア
 この辺は「主観」=オモロイ、「客観」=ヤバい、というところでしょうか。一人で勝手に盛り上がってはいけない、ということですが、盛り上がらないと進まない人も多いと思うので、難しいところです。「オモロイ」を「ヤバい」に「変換」する回路が、発明塾思考、だと思います。コツはかんたんで、白白白黒を白白白白にするだけなのですが。。。オセロみたいな感じです。知的ゲームです。


2.なぜ発明塾の「知的生産性は異常に高い」か
 それは皆さんが「十分な訓練を受けている」からです。皆さんは中学高校大学で「創造的な議論の方法」を学びませんよね。そのまま企業に入って仕事をすると、「眠い(もしくは寝ている)」「全員内職している」「何も決まらない」「何時間も続く」「じゃあまた、次にやりましょう」会議の目白押し、となります(注1)。

That is because you're well trained.

 ただ、それだけのことです。創造的な議論の手法を身につければ、知的生産性は劇的に向上する、というのは僕にとっては自明です。

 ちなみにもう一つ、集まらなくても良いアイデアが出る、というのも自明です。これまで、SくんやOくんが素晴らしいアイデアを出してくれた時、それは「SKYPE」での会話でした。やたらと無目的に集まりたがる人たちがいますが、「集まらないと出来ないことは何か」「集まらなくてもコミュニケーションできれば、できることは何か」「1人でできることは何か」「1人でやるべき(やらざるを得ない、を含む)ことは何か」を明確にすることで、知的生産性はさらに高まります。

 最弱リンク理論(注2)、という理論があります。たとえばこれは、材料学の世界では「強度に関する寸法効果」として知られています。要するに、

「大きな寸法の材料は、それだけ確率論的に大きな欠陥が含まれている可能性が高く、強度が低くなる」

ということです。ムカデ競争を思い出しましょう。人数が増えれば増えるほど、タイムは悪くなります。つまり、よほど訓練(もしくは設計)しないと、

「集団で作業を行うと、生産性(能力)が下がる」

ということで、これは「科学」のレベルです。「集まったら生産性が下がる」。これを頭に入れておいてください。どういう手順で議論を進めればよいかは、発明塾として決まってますね。憶えてない人は、頭ではなく「体に」叩きこんでください。

 ちなみに僕は、創造的議論の訓練ができていない人と話すと、話が遅すぎてイライラする、というのが目下の悩み。明らかに結果に向かわない議論、というのは精神を疲弊させます。「結論を出す」「結果を出す」。発明塾の鉄則として、再度明示しておきます。


3.「組織論?」の参考書
 たしか昨年の年末か年始に、発明塾後に鍋食って「知識創造企業」(野中)ぐらいは読んどけよと、言った気がしますが、その続きの本について質問が来ました(一昨年だっけかな)。

①「最強組織の法則」ピーター・センゲ>これはリコメンド済み。
②「「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質」>組織による知の共有、という点で野中氏の本よりもドロドロした部分を扱っている。
③「知のスピードが壁を破る」平尾>この本と「人はだれもがリーダーである」の二冊。
④鈴木大拙の「禅」に関する本>どうせ読む人はいないでしょうから、どれとは言いません。英語ベースのものが良い。
⑤「野村の監督ミーティング」>これは紹介し忘れ。追加。

 一般の人には見慣れない本もあるので、補足しておきましょう。①は有名なので省きます、彼の本はこれだけで十分です。ドラッカーと同じで、どれも同じことが書いてあります。②は野中氏の本が理論として完璧なのに対し、現場レベルでの疑問を掘り下げている本です。僕はそもそも教育自体を科学し、ビジネスにしたいと大学時代から思っていたので、この本はなかなか参考になっています。

 ③⑤は「スポーツ選手」「名選手名監督」という観点で、知の伝達の手本としています。他、スポーツ選手の本や言葉(たとえばイチロー、松井など)は広く参考に。④は、「禅とは、考え方を教える道である」と僕は考えているので、そこから出てきたものです。「考案」という独特の手法?を用いて、考え方を教え?て、悟りに至る。究極の「暗黙知」の伝達手法です。それでしか伝わらないものが、あるはずなのです。

 全てを「形式知」として教えることができる、という思想は危険だと思っているので、「禅」「考案」はそのための軸でしょうか。

「考案」的手法(暗黙知)←-------------------------------→「本」読んどいて的教育(形式知)

 常に両極端を考えることで、自分の正しい位置、振れ幅、スタンス、を知ることができます。


※注1)世の中には「あえて結論を出さないほうが得をするので、結論を出さないが、議論した結果は残しておいたほうが得をするので、会議をする」という、高度な戦術も存在するので注意。例)国会


※注2)「材料学と最弱リンク理論」
例えば以下P69参照。他の部分も、破壊力学の基礎なので理解しておくほうがよいですが。
http://kynmt.in.coocan.jp/NOTE/4_%E7%AC%AC%EF%BC%93%E7%AB%A0.pdf
(山本清彦 氏 のブログ)
一般論としては「ワイブル分布」など(理系大学生なら常識レベルでしょうが)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%AB%E5%88%86%E5%B8%83