2012年9月30日日曜日

塾長の部屋(16)~ギリシャ悲劇の最高傑作「アンティゴネ」

「アイスキュロス・エウリピデス・ソフォクレス」

3大ギリシャ悲劇作家です。受験勉強で丸暗記したのではないでしょうか?(僕は、しました)

 数あるギリシャ悲劇の中で「最高傑作」とされるのが、ソフォクレス(ソポクレス)の「アンティゴネー」です。読む前から余り詳しく解説すると楽しみが減りますので、一部を引用しながらその主題について、考えてみたいと思います。

 国を裏切って戦死した兄(ポリュネイケス)の骸を、国の掟に逆らって埋葬しようとするアンティゴネーと、その妹イスメネの会話。

アンティゴネー「神々が祝福してくれる掟を踏みつけにする罪を、たっぷり味わったらいい」
イスメネ「国の掟を無視するなどということは-私にそんな力が有るわけがない」

 アンティゴネーは「神々の掟」を守ろうとするのに対して、イスメネはあくまでも「国の掟」を守ることを主張する行です。「アンティゴネー」は重層的な矛盾を提示する、非常に奥が深い作品ですが、上記部分が一つのポイントになっています。後にイスメネは、姉の罪を被ろう(?)としますが、アンティゴネーはそれを許しません。

 若いうちに、ぜひ読んで欲しい作品です。自分はどう生きるべきなのか。どう生きたいのか。そういうことを深く考えさせる、数少ない作品の一つです(注)。


(画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
Amazonのプログラムを利用して画像を引用することにしました。
P38に「あからさまな独裁的権力構造は
存在しないが、自由なき?平等な状態が
いかに発生するか」が示されている。
それは「無関心」がゆえであると。

 新潮文庫の「オイディプス王・アンティゴネ」(福田 訳)の解説に、この作品を読み解くヒントがありますので、それも引用しておきます。

『エリオットの言葉を借りれば、「善き個人」は必ずしも「善き市民」ではあり得ず、「善き市民」は必ずしも「善き個人」ではあり得ない。我々の周囲に見られるのは、大抵、「善き市民」であって、社会の慣習や国家の法に触れぬ生活をしているだけのことであり、そういう人々が全き「善き個人」としての神の道、あるいは普遍的な道徳に触れぬ生活をしているとは言えない。』
 
 ここで、エリオットを読んでみたくなった人は、そちらもぜひ。 

 非常に短いものですが、「善き個人」として、どう在りうるのか。そんなことを考える機会をくれる作品です。


※注) ギリシャ悲劇には、結構駄作(私見です)が多い。


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2012年9月28日金曜日

塾長の部屋(15)~衝撃(?)の立命館大学「発明講義」第一回

 本日、例年通り立命館大学の理工学部三回生向け「発明講義」が、始まりました。第一回の報告をしておきます。

 講義終了後、数名の学生さんから「衝撃を受けた」というメールが入っていました。衝撃を受け過ぎて「気絶」していた学生も散見されましたが(要するに寝ていた)、彼らはちゃんと話を聞いてくれていたようです。


 彼ら曰く「想像もしていなかった内容」「密度に衝撃を受けた」ということでした。では、一体どんな講義だったかを、差し支えない範囲で再現してみましょう。



<講義のルール>
 僕の講義のルールはこうなっています。事務的なところから行きましょう。


①紙は配らない

②先生(せんせい)ではなく「楠浦(くすうら)さん」
③Grワークがあるので、欠席は厳禁

 立命館大学では、講義資料は電子データでデータベース化されているので、配る必要がそもそもありませんし、学生も、紙で配られても次回持ってくるのが面倒なので、①のような方針がベストです。


 ②は当たり前なので、③ですが、これも当たり前ですね。周りに迷惑を掛けてはいけません。次に、ポリシー的な部分です。


④世の中の大半の問題は、唯一解のない問題であるということを理解する

⑤どんどん発言する
⑥何を言ってもOK
⑦他人の「意見」は否定しない
⑧どんどん調べる(ググる)
⑨随時質問OK

 ④も当たり前ですよね。高校までの勉強は基礎修練のための「箱庭」だっただけで、大学以降はそれを実際の問題に応用するフェーズ。大学と高校の違いは、システムのヌルさ(日本のみ)を除くと、ここにあります。


 ⑤⑥⑦はセットですね。唯一解が無いわけなので、どんどん考えて発言すればいい。別に調べてもいいし、一時話題になった「XX知恵袋」を使っても構わない(⑧)。あとで調べよう、と思って調べた試しがない人が大半でしょう。その場で調べるべきです。それでもわからなければ、どんどん質問(⑨)すればいいわけです。


 どんなに調べても、他の人に聞いても判らないこと、それこそが、頭をつかうべきこと(発明の対象)なのです。


 社会人としては、さして特別なルールではありませんが、大学の講義としては少し「変わって」いるかも知れません。



<講義の内容>

 キリがないので、そろそろ内容に行きましょう(笑)。今回の講義は、概ね以下の様な構成で進みました。

①自己紹介

②日本は「技術大国」ではあるが、「技術立国」ではない
③ゆえに、技術者が経営を理解し、取り組む必要がある。その中核が「発明」と「マーケティング」
④世界がどうなっているか
⑤皆さんはどうすべきなのか

 自己紹介はほどほどに(話すと長くなりすぎる)、②の話をしました。これも説明不要でしょうね。「技術で勝って事業で負けている」(注1)というのは有名な話ですから。また、例えば、トヨタ、ホンダの財務諸表を見れば、彼らが金融事業に如何に依存しているかがわかります(それはそれで、販売方法のイノベーションですので、素晴らしいことだと思いますが)。

 
 ③については、経営に興味がある、お金について知っておきたい、という学生が散見されましたので、さらっと触れました。「お金に興味があるというなら、いまこの瞬間に、どれだけの学費がかかっているのか、すぐに計算しなさい。少なくとも、気絶して(寝て)いる場合ではない」というメッセージとともに。

 ④は、いつも使う映像資料に少しだけ仕掛けをして流しました。映像リストは(塾生にはお馴染みの)以下。


・テレビ東京WBS(2008年放映)映像資料。以下とは異なるが、内容的には類似。

 「米 発明資本市場の胎動」
 http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/highlight/post_1716.html
・「TED」のN.ミアボルドの講演(日本語字幕 Ver.)
 「Nathan Myhrvold: Could this laser zap malaria?」
 http://www.ted.com/talks/lang/eng/nathan_myhrvold_could_this_laser_zap_malaria.html
・「TED」のE.Byerの講演(字幕なし Ver.)
 「Eben Bayer: Are mushrooms the new plastic?」
 http://www.ted.com/talks/lang/en/eben_bayer_are_mushrooms_the_new_plastic.html

 ⑤も、いつも僕が言っていることの繰り返しですが、世界にこれだけの問題があり、それらは今すでにある技術を「活用」することで、解決できる可能性が高い(注2)。「手段」に新しさを求めてやみくもに技術を研究・開発するのは止め、「課題」にフォーカスして結果につながるアイデアを出せ、ということです。

 第一回は、選択するかどうかのガイダンスを兼ねているので、このような内容となりました。どういう問題意識を持っている人に、受講して欲しいか。それを説明した、ということです。次回は「特許情報分析」の話をします。一人一台PCがありますので、実際に作業をしながら、体験的に学んでもらいます。



※注1) 例えば、妹尾氏の著作「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか」など。

※注2) E.F.シュマッハー「スモール・イズ・ビューティフル」で提案されている「ミドルテクノロジー」の考え方に近い。


2012年9月27日木曜日

発明塾京都第102回開催報告

 102回は、夏休みに行った発明を踏まえて、いわゆる「落穂拾い」(ミレー:注1)を行いました。やってみると、各自色々気付くことがありましたよね。

①発明のバックログ解析(これは、塾生さん自身の手によるもの)

②発明提案書の書き方
③進歩性の解説(何回目ですかね・・・)
④先行技術調査のポイント
⑤ポンチ絵力をあげる

 今回は上記5つのポイントを取り上げました。①については、詳細は明かせませんが、どういうアイデアがどのように「詰まって」いくのか、非常に興味深い分析になっていました。


 ②は「新しいものを評価してもらうのに、どのようなドキュメントであるべきなのか」ということに尽きると思います。それが発明であるならば、世の中になかったものなので、理解されなくて当然です。そこを、どう伝えるか。これもひとつの能力です。


 ③は、今回は 山口大学 佐田先生 の記事ではなく、たまたま見つけた「新・拒絶理由通知との対話」という本にあったチャートを用いて、説明しました。簡単に言うと、先行技術と自分の発明の対比において、


・構成要素の組み合わせが新しい(もしくは「新しい構成要素」という理解でも、とりあえずはOK)


・それによる効果

をペアで考えないといけない、ということです。もう少しいうと「新しいものが付け加わってるんだから、それによる新たな効果がある『はず』ですよね」「そこをしっかり深堀しましょうね」ということになります。


 「新しい」は相対的な概念なので、それを考えるためには必ず先行技術(との対比)を必要とします。つまり「違い」「差分」に気付く必要があります。先行技術との比較において「だいたい同じです」みたいな「雑」な議論は無意味です。


 なので④が重要になってきます。今回は、最近成立したIIJのコンテナ型データセンター特許(注2)について、発明をどう捉えるか、先行技術を調べるための検索式の立て方、について実際に作業しながら学びました。最後には、弊社のサーチャーの立てた式を基に、その思考回路を分析しました。ついでに、プロが先行技術調査で使う「対比表」についても、例を配りました。各自であそこまでやる必要はないですが、こういうふうに考えるんだ、という事例として、記憶にとどめておいて欲しいと思います。


 最後の⑤は、若干息抜き的な要素もありますが、デッサンをやりました。僕は、自分の発明を頭の中で正しく表現し、それを紙に表現する、という手順でないと、独創性のある発明は出来ないと思っています。コピペで絵を持ってきて切り貼りして発明を作ると、アイデアが元の絵に引きずられてしまう。

 実際、塾生の発明を見ているとそうなっているので、自分の思考をストレスなく図に表現できる能力が、思考を促進するのだなと、分かって来ました。出口が詰まっていると、物事は進まないということかもしれません。アウトプット能力を鍛えることで、中間のプロセスもスムーズに進むようになります。
 これは、発明提案書が書けないと、結果的に良い着想もでない、のと全く同じです。アウトプットのハードルが、他のすべての作業を縛ってしまうのです(注3)。

「書くのが大変」→「いい発明でないと、書く時間が勿体無い」→「そんなに良いアイデアはなかなか出ない」→「ますます書けない」・・・

という悪循環です。これを治すには「とにかく書いてみる」以外の方法はありません。この夏休みに、数名の塾生は治療できたようです。


他にも色々気づいたことがあるのですが、それは別途「塾長の部屋」に書くことにします。



※注1) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%90%BD%E7%A9%82%E6%8B%BE%E3%81%84


※注2) 例えば以下参照。

http://www.techvisor.jp/blog/archives/2620

※注3) 塾生の一名が「ニコラ・テスラは、自分のアイデアの細部までイメージできたらしい」と言ってましたが、彼はその能力があったからこそ、いい発明が次々に出たのだと思います。


2012年9月25日火曜日

塾長の部屋(14)~社内の勉強会から

 弊社は、メンバー全員、津々浦々の自宅で業務をしているので「あつまってXXやろうぜ」というのが難しいのですが、先日珍しく?勉強会を行ったので、その様子を紹介します。集まって勉強するのは難しいので、大体各自がいろんなセミナーにしょっちゅう出て、その結果を共有することにしています。基本的に僕は「知恵は外に求める」主義です(注)。

 今回のテーマは知財戦略関係でした。事情により詳細は話せませんが、例えば以下の様な議論がありました。


・過去:「経営>技術>知財」 >は重要性とか下位概念とか、そんなイメージです。


・現在:「経営>知財>技術」


 実際には、経営のためのツールとして「技術」も「知財」も並列なのだと、経営者としての僕は認識しています。それを既存の「知識」からどう生み出すか。

 ここで、概念を揃える作業を行うと「技術とは、つまりノウハウのことである」ということになります。明文化し公開されたもの(知)が「権利として保護される知的財産」(典型が特許)であり「明文化されない、もしくは、明文化しても公開されないもの(知)がノウハウ=技術」という切り分けです。ここで、概念のレベルが揃いました。

 再度整理すると、経営の手段としての「知」には「技術」と「知財」がある。それぞれ既存の「知識」から生み出される。それは、組織内からでも、組織「外」からでも調達できる。知識を外部調達してもいいし、技術や知財も同様。


 ここにシュンペーターを持ってくると、経営の本質は技術でも知財でもなく、それらを含めた様々な要素の「新結合」により、これまでにない価値を創造することである、となる。いずれも市場で手に入るものなのですが、それをどう組み合わせて競争力を発揮するか。異質なものの組み合わせによる、意外な効果・・・・。


 以上が、僕が「発明は経営の訓練になる」と考える所以です。


 勉強会の間、僕の頭の中ではこのような議論が起きていました。こんな楽しい勉強会は、世間ではなかなかできないかもしれません。メンバーも楽しかったんじゃないかなと、思います。


 ちなみに、僕は(13)で「人生の目的について考える」という話をしましたが、目指し甲斐のある「目的」に気づかせてくれるのが、「素晴らしい仲間」です。良き仲間もなく、無知なままだと、目先の変な目的にこだわって、遠回りしてしまう可能性もあります。今まで見えていなかったものを、一緒に見れる仲間。「その目的の方がオモロイやん、なかなかエエやん」と思わせてくれる仲間。それが僕の考える「いい仲間」です。そういう「視界良好な仲間」と一緒に仕事をすると、どんどん可能性が広がります。

 大学時代にすべきこと。それは他でもなく「視界良好な素晴らしい仲間」づくりです。僕は、そういう多くの仲間を「甲斐塾」で得ました。それが、僕が発明塾をやっている、一つの(そして大きな)理由です。


※注)僕は昔から、「問題が起きた時に、組織内でごちゃごちゃやっても解決できない」と思っている。その人達に解決できる問題だったとしたら、そもそも問題になってないわけで(各自が真面目にやっていたという前提)、その時点で「彼らの手に負えないから問題になっている」ということになる。解決するには、新結合しか無い。
 組織内でごちゃごちゃやって解決できたとしたら、つまり「彼らはそれまでサボっとった」ということです。よくあることですが。



2012年9月23日日曜日

塾長の部屋(13)~発明家を殺すのに刃物はいらない

未来の発明家のために、Twitterで話したことを、まとめておくことにしました。

 最近、訳あって海外の発明家との共同発明が多い(英語で発明提案書を書くのが、なかなか大変。。。)のですが、そこで気づいたことです。

①「返事が異様に早い。メールなのにリアルタイム討議並」
②「返事がシンプル。無駄なことを書かない」
③「議論がどんどん前向きに発展する。すごい調査力とアイデア。どんな文献もみつけてくる」
④「人を褒める。Excellent と Greatのオンパレード」
⑤「わからないことはわからないとはっきり言う。彼らでもたまに知らないことや分からないことがあるが、しつこく聞いてくる。理解を諦めない。すごい執念というか知的忍耐力と好奇心」

 よく考えたら当たり前で、①は、僕の尊敬するとある後輩や、非常にお世話になっている方の何名かも、そんな感じ。③はやはり発明家、という感じで、どんなボールも無駄にせず拾ってくる。⑤については、僕だったら「あとで自分で調べるか」と思ってしまうところですが、結構しつこく聞いてくる。好奇心なのか負けん気なのか丁寧さなのか、よくわからない。

 ふと思ったことは、「好奇心なのか負けん気なのか丁寧さなのか」のあたりが、すごい人達に、どうやら共通している。どれか一つによって、Stickyな人が、周りのすごい人には多い。

「理屈はそうなんですけど、実際は難しいですよね」

 発明家を殺すには、この一言で充分。いや、むしろ彼らは「理屈上正しいことが、なんで出来ないんだ」と考えてどんどん突っ込んでくる。それが、新しいアイデアにつながってくる。前向きか、後ろ向きか。
 だから僕は「起業したい」とか何とかで相談に来る(最近は、年に100名ぐらいは相談に来る)人に、いろいろ理屈上のことを話して「そうは言うけど実際は難しい」みたいな返事が来たら、「ですよねー、じゃあ、さいなら」ということにしている。ちなみにその、僕の尊敬する後輩は、

「理屈上正しいことは、いつか必ず出来ます。自分がやらなかったら、誰かが必ずやります」

と、呪文のように繰り返していました。だから諦めずに正しい方法を追求しましょうと。誰かにやられて負ける前に、やったりましょう、と。後日、居酒屋で酒飲みながら、「実は俺も考えてたんだよねー」とか言わないで済むように、と。そういえば、彼はなかなか負けん気の強いタイプのStickyでした。

「単に金が欲しいのか、世界一になりたいのか」
「ちょっと金儲け上手い、みたいな奴は、世間にいくらでもいます」

これも彼の口癖でした。口癖怖いですね。

Curiosity Killed the Cat.(好奇心は命取り)

 中学1年ぐらいで習う慣用句です。しかし、大学生までぐらいであれば、命取りになるぐらいの好奇心を、むしろ養いたいものです。この慣用句、O・ヘンリー(O. Henry)がオリジナルらしいです。

雑文失礼。

今年も、海外の猫たちに会う(しかも缶詰4daysで)機会がありそうです。楽しみです。


2012年9月21日金曜日

塾長の部屋(12)~「時間管理:人生は時間でできている」

「人生は時間で出来ている」(B.フランクリン)

 今日、発明塾は「合宿」でしたので、皆で昼食を取りました。たまたまその時に「時間管理」の話になったので、メモと補足をしておきます。いつも全員と会えるわけではないので、コミュニケーションのツールとして、今まで以上にBlogを活用したいと思っています。


 時間管理に関する本やツールは、古今東西様々出ていますが、僕のオススメは以下。


①「7つの習慣」S.R.コビー

②「フランクリンプランナー」(上記に付随する手帳システム)
③日記
④作業を記録する(裏紙で良い)
⑤バッファーを持つ

 一つづつ説明して行きましょう。①は、これまでも度々取り上げていますので、説明は不要でしょう。補足すると以下の通りです。


・時間管理は、人生の目的を達成するための「ツール」でしか無い。

・時間管理は「時間から自由になるため」の手段である。

 時間に追われないためには、時間を追いかける必要がある、それが時間管理です。そして「人生の目的を明確にする」ことが、一番の時間管理です。これが出来れば「不要なもの」が明確になり、「捨てる」ことが出来ますから、時間を人生の目的に集中して使うことができます。セネカ風に言うと「一つに絞る」(他はすべて捨てる)ことになります。

 ただ、人生の目的はそう簡単に決まるものではないでしょう(この本にも、数年かかる場合もある、と書かれています)。塾生の場合には、大学生なわけですから、5-10年かけて見つけていくんだぐらいに、思っといてください。
 そしてその時に重要なのは「自分の強み」という「手段」にとらわれず、「なにが自分にとって価値のあることなのか」「何を重んじるのか、大切にしたいのか」(目的)を突き詰めて考えることです。その時には、マズローも参考になるでしょう。
 目的(価値観)を「山」に喩えるとすると、手段(強み)は「どの斜面から登るか」という、ルートに相当します。ルートにとらわれて、山を選ぶのはおかしい。登ったあとに「見たい景色はこんなのではなかった」ということになります。


そういう意味で、
何度も読み返せる本には
限りがあります


 ②は、それを行うための「道具」です。割とよくできていますので、これで充分です。現在は持ち歩いていませんが、私は「クラシック」の「デイリー」を使っています。必然的に、馬鹿でかい手帳となり、持ち歩いていた当時(2004-2008年頃)は、「ハンバーガー」と名付けていました。僕がこの手帳を打ち合わせで取り出すと、取引先の人の目が点になるという(笑)、「つかみ」のツールとして大活躍してくれました。今は、デスクでのみ利用しています。

 ちなみに、当時は読んだ本に書いてあった「名言」的な言葉を、この手帳にいちいち「写経」していました。今でもそれを読み返します。今は、だいたいどの本を読んでも同じようにしか見えない(注)ので、メモをすることがなくなりましたが、当時は一字一句メモをしていました。

 ③は、毎日もしくは毎週のチェック用です。「人生の目的」に対してどこまで来ているか、方向がずれていないか、それを確認しています。僕には「今年の目標」という作業(正月によくやりますよね)は、あまり意味が無いようで、毎週もしくは毎日日記をつけることで、結果的に、その年にやらねばならないことが達成されるようになりました。


 ④は、時間管理を考える前に、まず「自分が時間をどう(粗末に)扱っているかを知る」ことが重要だからです。僕自身、川崎重工で設計をしていた時(たしか入社1年目)に、自分のタイムスタディーをやってみました。当時、あまりに忙しかったので「何にそんなに時間がかかってるのか」知りたかったのです。調べた結果、「電話とFAX、その準備」に昼間の90%以上の時間を使っていることがわかり、「設計なんか全然やってないよね」という結論に至りました。実際、図面はほとんど夜に書いていました(いわゆる深夜残業)。当時はメールもなく、あったとしても取引先にはなく、ひたすら電話してFAXして、図面を送っては電話で打ち合わせ、を繰り返していました。

 忙しいけど結果が出ないよね、あるいは、なぜか仕事が遅いんです、という人は、1-2日、タイムスタディーをすることを勧めます。やり方は簡単。

・今日やる仕事を書きだしておく。出来れば作業レベルに砕く。これは準備。

・「作業」が仕事が終わったら、時刻と共に、何をやったかを一言で書いておく(XXに電話、AAメモ作成、など)
・一日が終わったら、時間を集計する。いつ頃何をやっていたかもチェック。

たったこれだけです。これを基に、時間の配分を修正し、時間がかかりすぎている作業や行為を見直します。たしかドラッカーが、タイムスタディーを秘書にやらせてみた、という記載が、彼の本のどこかにあったと思います。だいたいみんな、同じようなことを考えるんですね。


 ⑤は、時間管理と矛盾するように聞こえるでしょうか。しかし、予定というのは、その通りいかないものであり、忙しい人ほど、飛び込みの相談・仕事や、急な対応を要する電話・メールなどが来ます。ですので、そのためのバッファーを、毎日、毎週設けておくことです。僕の場合は、毎日は結局難しかったりしますが、毎週土曜日はそれに充てています。継続するためには、「確かに実行できる」という実感を持つことが重要ですので、バッファーを設けて調整するわけです。一週間、一日、というリズムも大切です。リズム、小さな成功、継続、習慣、そんな感じです。


 どれか一つだけやるとすれば、「人生の目的を明確にすること」。これに尽きます。人生をスリムかつ充実したものに、することができます。


 最後にもう一つ。ドラッカー曰く「人生の目的に沿わないチャンスは、単なる寄り道に過ぎない」。目的を明確にすれば、道草を食うこともなくなります。



※注)経験上、だいたいどの本にも、結局のところ同じことが書いてある。数千冊の本代を費やして、非常に虚しい結論に至りました(笑)。おかげで、なんの未練もなく、大半の蔵書を電子化出来ました。




発明塾京都第101回&合宿開催報告

 今週は、第101回と合宿を行いました。いずれも「発明提案書を仕上げる」ことに集中してもらいました。結果、初めて提案書を書き上げた人、文系学生でいい発明が出た人、など発明塾としても良い成果がありました。
 もちろん、各自それぞれの成果があったものと思います。書き上げた人はお疲れさんでした。まだ途中の人は、あと一息、がんばりましょう。終わった人は手伝ってあげてください。

 さて、今回は夏休みということで、8月から9月にかけて「発明創出」のプロセスを一通り行いました。小さな発明であったとしても、完成させることでそれぞれ得るものがあったようです。

・「楽しくなってきた」
・「先行技術調査ができるようになった」
・「自分の癖(欠点?)がわかった」

 繰り返しですが「具体的な成果を出そうとして初めて、得られるもの」が、実にたくさんあります。今後も、いわゆる「お勉強」(字面を追う、話を聞く)ではなく、結果を出すことを通じて、学んで欲しいと思います。

 次回は「落穂ひろい」として、

・「先行技術調査」力
・「ポンチ絵」力

を取り上げて、講義と演習を行う予定です。良いポンチ絵は、発想を広げます。先行技術を見つけると、思考が省略できます。この二つが、発想法の肝です。

お楽しみに!


2012年9月18日火曜日

京都大学での講義予定(10月10日)@工学部物理工学系

本年も、機械工学系(最近は物理工学系というそうですが)で講義を行いますので、興味ある人はぜひ参加してください。

・日時:10月10日(水) 16:30-18:00
・場所:京都大学工学部物理系校舎 313号室(変更の可能性あり)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_y.htm
(57番が物理系校舎)
・タイトル:「未来のエジソンへ~すばらしいアイデアと技術で世界を救え!」
・内容:
 エジソンは、世界で初めて「発明」を職業とした技術者であり、アイデアが産業資本となることを実証した。本講義では、まず、川崎重工業での大型オートバイ開発、小松製作所での風力発電関連新規事業開発、ナノテクベンチャー設立の経験とその経緯、を通じて「技術者のキャリア」について考えて頂く。また、現在の知的財産に関わる仕事内容を通じて、現代において、世界レベルの諸問題を解決するために再び「エジソン」が渇望されている現状も紹介する。

時間の都合で、どこまでできるかわかりませんが、

・10円玉ゲームをやる
・知財に関するビデオを見る

予定です。今までは、自己紹介の時間が長かったですが、今年は皆さんにいろいろ考えてもらったり、発言してもらったり、できるだけ「参加」してもらえるように考えています。

では!




2012年9月16日日曜日

塾長の部屋(11)~「人生」について考える

これまでの文脈からいろいろ書くべきことが有る中ですが、今日はここ最近のトピックから。

 偶然ですが、最近「仕事とはなんぞや」ということを、話す機会が度々ありました。僕の経験上、仕事について考えることは、人生について考えることそのものです。どこかで書いたかもしれませんが、僕の仕事に関する基本的な考え方の一つは、以下です。


「20才(ぐらい)~60才の平日の9時から17時という、まさに人生の黄金期の一番いい時間を”ぶち抜き”で使って仕事をする以上、そこでどれだけ意味(意義)のある仕事が出来るかは、そのまま人生のクオリティーに直結する」


そして、ここからは僕の経営哲学ですが、以下のように考えています。


「人生の黄金期を使ってもらう以上、能力が高まることで、個々人が充実した人生を送れるようになるという意味で、各自の能力を最大限開発し、大きな成果を出してもらうことは、本人と、それを取り巻く社会に対する、経営者の責務である


 基本的に僕は、充実した職業生活が、充実した人生につながると考えています。そして経営者は、そこに責任を持つ人でもある。経営者自身の人生は「会社がどれだけ社会に貢献できたか」で測られる。他の人の幸福そのものが、自らの幸福でなければならない。収益は、その指標の一つであるが、同時に、活動を継続するための手段に過ぎない。


 僕が最終的にこの結論に到達(確信)したのは、前者の方は27-8才ぐらいの時で、後者の方は32才ぐらいですので、いずれもちょうど「転職」した時期に重なります。転職のタイミングで人生について考えたのか、人生について考えたから転職したのか、今となっては定かではありませんが。



仕事(職)とは何か、何のために働くのか
資本主義とキリスト教、
いろいろ考えさせられる本ですよね

 高校生に「ああおもろかったと言える人生を送れ」「背負うべき業は何か」(注1)などと、よくわからないことを言う人との出会い。その時はピンとこなかったのですが、多分、上のようなことだったのだろうなと、勝手に理解しています。


さて。


転職せずとも、仕事と人生について考えるきっかけとして、読んで欲しい本が以下。


①「完全なる経営」A.マズロー

②「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」M.ウェーバー
③「人生の短さについて」セネカ

 ①は、経営者を志す人には必ず読んで欲しい本であり、②はいずれの人にも読んで欲しい本です。仕事とは何か。それはそのまま、人生を考えることです。③は、人生そのものの過ごし方についてダイレクトに問う本です。


 「何がやりたいか」ではなく「自分は何をすべきか(そして「なぜ」すべきなのか)」と考える。これはドラッカーが言った「やりたいことをやるべきことに」変える、ということの一つの意味です。自分(欲望)中心ではなく、世界(ニーズ・課題)を中心に置いて考えるということです。


「人生は短い、しかし、一つ何事かを成すには、充分である」(セネカ)


 何か一つぐらい、やってみたいと思いませんか。たぶん、一つしかできないので、それを何にするか、よく考える必要がありますが。。。


「少しぐらい面白いからといって次々と手を付けていては、何も出来ないうちに、あっという間に人生が終わってしまう」利根川進(ノーベル医学賞)



注1)「甲斐塾」 京都市伏見区に在る学習塾。楠浦は高校時代に在籍、大学時代は受験生に英語を教えていた。



2012年9月13日木曜日

発明塾京都第100回開催報告~「成果は習慣」

記念すべき(!)第100回は、3連続ブレストという怒涛の一週間に、見事に埋もれてしまいました。今、そうであったことに気づきました。。。

さて、15日に行ったクアルコムセミナーの帰りに塾生2名と話した内容を共有します。それは、

「成果を出すということは、習慣である」

ということです。そして、

「客観的な成果を出さない活動は、自己満足にすぎない」

ということです。目に見える成果を出す、ということを習慣にしてください。来週は、普通の発明塾と合宿の両方があります。ここで、作成中の発明提案書を仕上げ、まず成果を出しましょう。

では。



2012年9月12日水曜日

塾長の部屋(10)~毎月行う「社内ブレスト」でわかったこと

本日は、毎月行なっている弊社内の「ブレスト」の日でしたので、その様子を簡単に紹介します。

・事前資料を作成し、目を通しておく。
・都内の某所に集合。
・たいてい9:30~15:00です(昼食を30分ほど挟む)。
・最初に、発明テーマ(RFI:Request for invention)をおさらい。必要に応じて、RFIを企画された担当の方に、直接お話しを伺い、背景などを聞く。
・事前に調べた特許情報(等)を基に、軽くアイデア出しを開始。これは!という必然性のある切り口が出るまで、繰り返す。
・ある程度数が出揃ったところで、先行技術調査を実施。先行技術との対比で、発明を捉え直し、さらに調べることもある。

 最近はメンバーがこなれてきたので、ルールに縛られること無く自由に議論しています。これぐらい創造的な議論が淀みなくできると、仕事もなかなか楽しいものになります。

 もちろん、当初は方法論も暗中模索で、僕一人がやり方を「なんとなく」わかっていて、それをほかの人間ができるようになるまで、繰り返し繰り返し「やってみせる」「説明する」ことで疲れ果てていました。

 初期の頃の「ブレスト」の様子は、「知財の利回り」に詳しく書かれていますので、興味在る方は読んでいただくとよいでしょう。現在とは、かなり異なる雰囲気です。

 良いブレストに必要な要素は多数ありますが、一番重要なのは「レベルが同じで、個性の違うメンバーが集まること」だと思います。レベルが違うと、相当ストレスが貯まります(苦笑)。個性が同じだと、すぐに行き詰まります。

 創造的な議論にうってつけの、良いメンバーに恵まれたことに、最近は特に感謝しています。仕事が面白くなるもならないも、メンバー次第、というところでしょうか。


ご案内~「第2回イノベーション創出セミナーのお知らせ」

第1回では、国領先生のファシリテーションで私も参加させて頂きましたが、第2回は顔ぶれも変わって、荒井寿光 元特許庁長官の講演に始まり、日本知財界の重鎮の方々の討議になっています。興味在る方はぜひ。


★「第2回イノベーション創出セミナー」~日本再生のための知財戦略


・日 時 : 9月18日(火)18:00~20:30(予定)
・場 所 : 慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール
・詳細は以下
http://platform.sfc.keio.ac.jp/event/2012/0829_155.html



※参考 「第1回イノベーション創出セミナー」

http://platform.sfc.keio.ac.jp/event/2012/0620_153.html


2012年9月9日日曜日

「世界最強の企業クアルコム」についての特別講義

「クアルコム」の事例は、今年の立命館大学MOTの前期講義で3時間みっちり取り上げたのですが、その補足講義を、9月15日に立命館大学BKCでやります。前期講義では映像資料を流す時間がなかったので、今回は映像資料を見ながら、じっくりとその秘密に迫りたいと思います。昨年同様、一般の社会人の方(や塾生)も、参加可能です。

詳しくは以下。


・9月15日 MOT有志セミナー

http://kokucheese.com/event/index/46539/

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MOT学生有志セミナー 
「20世紀最も成功したベンチャー企業クアルコムのビジネスモデル」 
~いかにして携帯通信チップの市場を制したか~  

※クアルコム 
アメリカ発のベンチャーで、2012年現在世界最大のファブレス半導体企業。 
CDMA携帯電話用チップで、ほぼ独占に近いマーケットシェアを保持する。 
http://www.qualcomm.co.jp/ 


技術開発から、特許を用いた知的財産戦略を基に、クアルコムがどのようなビジネスモデルで成功したか、というお話です。今なお、他を寄せ付けない圧倒的強さの秘密に迫る、貴重な機会です。 


【講義形式】 
NHKの番組を見ながらの解説講義。質疑応答も適宜行います。知財等の話が多くなりますが、知識がなくても理解できるように解説頂きます。

【講義詳細】 
1999年4月25日に、NHKスペシャル「世紀を越えて」で放送された「特許で世界を制覇せよ」をもとに解説。 

※「世紀を越えて」 番組放送記録 
http://www.nhk.or.jp/archives/nhk-special/catalogue/catalogue_99_series.html 


※番組内容 
21世紀の初頭に世界で約10億の人々が使用するといわれる携帯電話。その巨大市場を握るため、アメリカ、ヨーロッパ、日本が 激しい技術開発競争を繰り広げている。特許を武器に21世紀の携帯電話の主導権を握ろうとする ベンチャー企業の戦略を追い、特許の持つ強大なパワーに迫る。 


※ 以下に関連内容あり。
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/07/mot.html
http://edison-univ.blogspot.jp/p/blog-page_8324.html
http://www.techno-producer.com/docs/hatsumeikenkyujyo.pdf


塾長の部屋(9)~偶然と必然と「縁」

昨日の京大フェスでお会いした方々、お疲れ様でした。

 昨日話したことは、発明の話ではなく「縁」についてでした。なぜなら、僕が今発明をしているのは、間違い無く「縁」のおかげなので。発明をやってみませんか、とお声かけいただくことがなければ、発明塾がスタートすることも、なかったでしょう。縁というのは不思議なものです。

 基本的に、複雑系の進化は「偶然と必然」(注)によって成り立っていると、考えられます。発明の創出過程がまさにそうであることも、発明塾生の解析により、わかりました。

「偶然から、いかに必然を引き出すか」これが、イノベーションの本質だと思います。

さて、タイムリーに、僕の尊敬する起業家のマイルストーンに関して、ニュースが出ていました。

・「アスタミューゼ株式会社第三者割当増資実施のお知らせ
http://www.astamuse.co.jp/company/press/120903.html

 代表の永井さんには、今年の立命館大学の講義にも、お越しいただきました。今後のますますの活躍を、祈っております。

 彼はかなり忙しい人なので、年に数回会えるかどうかですし、普段はメールすらやり取りしませんが、今年は講義を御願いすることが出来、その後近況を交換することができました。「仕事」というのは、非常に面白い、「縁」のツールだと思います。

 結局僕が言いたいのは、そういうことです。具体的な活動を通じてこそ、良い縁ができる。名刺交換では、縁は出来ない。

 僕のポリシーである「ビジネスこそが、世界を変える」というのも、同じ文脈から出たものです。

※注)「偶然と必然」J.モノー



2012年9月6日木曜日

発明塾京都第99回開催報告~「提案書を書く」

第99回も無事終了しました。次回は100回ですか。10進法においては、ひとつのマイルストーンではあります。

さて今回は、前回に引き続き「書く」という作業を中心に、各自作業と討議を行いました。討議(講義?)トピックだけ挙げておくと、

①先行技術調査におけるKWをどう決めるのか
②先行技術と競合技術の違い
③発明を定義して、書く、ということ
④発明の発展段階と、ブレストの科学

この辺でした。①は、進歩性の審査基準から自ずと導き出されます。進歩性が理解できていない人は、参考資料の佐田先生論文を再度読んで、進歩性の審査基準を頭に叩きこんでおくこと。

 進歩性を理解せずに、発明を詰めることは不可能です。皮膚感覚に落ちるまで、繰り返しトレーニングすることです。僕自身は、進歩性に関する調査を(弊社で仕事として受託して)大量に行なった結果、勝手に身につきました。頭脳に回路を作る作業なので、「進歩性の判断を繰り返しやる」以外に、身に付ける方法はありません。頭脳筋トレです。
 
脱線。

 ②は「新し」くて「勝てる」ものを考えるのが発明。新しさは、先行技術調査で決まり、勝てるかどうかは、競合技術調査で決まる。ただそれだけです。

 ③、実はこれが一番やっかいで、自分の発明が定義できないと調べられない。しかし、調べて比較対象が出来ないと、厳密に定義できない。どこまで何を定義すればよいか、は、実は①で答えが出ています。いつもどおり、僕のすべての話は(予め計画してあるので)つながっているのです。

 ④は、発明塾随一の理論家である Prof. Ozuka の解説によるものです。彼のお陰で、この2年で、発明理論を追求し尽くせた気がします。(Special Thanks to Prof. Ozuka !!!)

さて。

書く、ということについて以下2点注意点を。

・勉強したことを手当たり次第に書かない。発明とは「数学の証明問題」と同じ。必要最小限の材料(公理)で、できるだけシンプルに証明するのが、美しい回答。これは、甲斐塾の美学。発明塾の美学にします。

・書き足し、書き足し、を繰り返さない。下書き、清書、と進め、論理を洗練させる。これも数学の答案と同じ。答案を書き足すアホはいない。証明は、間違えたら消して書きなおす。書き足しがいけない理由は、部分観で付け足しを繰り返す結果、

「同じ事(や似たようなこと)を何度も何度も、くどくど書いてあって」「全体として論理が破綻した」

文章が出来上がるから。美しくないプログラムと同じです。

他、基礎的な論理構成能力や日本語力については、指定の参考書籍でトレーニングを。



2012年9月2日日曜日

塾長の部屋(8)~「スモール・イズ・ビューティフル」

さて。

 流れからすると、今日は(7)で述べた「発明塾で何を目指すか」を書く日なのですが、例によって間に挟まった塾生へのメールから、一冊の本を紹介します。


「スモール・イズ・ビューティフル」E.F.シュマッハー


です。


 この本は、僕が大学院でエネルギー応用工学専攻(現在の「エネルギー科学研究科エネルギー変換科学専攻」に相当)に入って、色々考える中で出会った本です。



技術と人間について掘り下げるには
経済学が役に立つ

 僕は元々は機械工学科に在籍し、金属材料(チタン合金等)の疲労破壊現象の解明、いわゆる「破壊力学」を専門にしていました(大学院でも研究内容は同じ)。たまたま、その研究室が学科再編の流れで、新しくできた「エネルギー応用工学専攻」に所属することとなり(というか、教授がその発起人の一人)、エネルギー問題を扱うという「課題オリエンテッド」な学科で学ぶこととなりました。


 実はこの一連の流れの中で、実に様々な事を体験しました。一つは「やはり人は変化を嫌う」ということです。「エネルギー応用工学なんて意味不明な学科出身となると、就職に不利」と、同じ研究室の何名かは、機械系に「戻る」ために研究室を離れました。離れないまでも、何名かは「迷惑だよね」と言っていました。


 僕はというと、上記のような様々な意見に「そうですね」と表面的には賛同しながら、持ち前の好奇心と「なんとかなるんじゃないの、ちゃんと力つけてれば。結局最後は実力でしょ」という楽観主義で、研究室にそのまま残って「エネルギー応用工学」を学びながら、「金属材料に関する破壊力学」の研究を続けることにしました。ちなみに当時の僕の研究テーマは「多結晶金属材料の疲労強度に及ぼす、微細組織の影響」とかなんとかで、卒論も修論も全く同じ題名という、のんびりしたものでした。


 なんせ、一本の試験片を昼夜繰り返し引っ張り、数万回の疲労寿命までの合間合間に、疲労亀裂の進展をレプリカ法で観察測定するという超アナログな研究。年に10本か20本の試験片をテストできればいい方でした。忙しい時は、疲労試験を行なっている間に、スパコンでシミュレーションを回し、研究室と実験室を昼夜行ったり来たりという感じでした。暇な時は、試験中は試験機が暴走しないように見ているだけなので、語学の勉強をしていました。


 脱線。


 新しい大学院の科目はどれも面白く、科学哲学や国際経済・安全保障論などを、必死で勉強したことを覚えています。その中で出会った本の一つが「スモール・イズ・ビューティフル」です。


 詳しくは読んでいただきたいですが、エネルギー問題に関する一つの考え方が示されており、この本を「建設的かつ批判的」に読みながら、自分なりの「エネルギー論」「科学技術論」を構築していった思い出があります。僕が手元に持っている本は、どうやら大学時代に読んだその物ではなく、恐らく、川崎重工から小松製作所に転職(29才の時ですね)して、再びエネルギー問題に取り組む事になり、手にした本のようですが、その本で数少ない下線が引いてある部分を以下に引用します。


「それは、一つの問題を別の平面に移して解決をはかろうとし、実際にははるかに大きな問題を抱え込むことを意味する」P26


「今進んでいる破局への道を脱出するのが最も重要な仕事だということである」P27


「では、その仕事は誰がやるのだろうか。<中略>われわれ一人ひとりである。未来を語ることに意味があるのは、現在の行動に結びつく時だけである」P27


「楽しみながら働くことができるようにすることである」P28

(以上、ページ数は、講談社学術文庫 第25刷 による)

 当時の京大生(90年代ですが、年に何度か「バリケードストライキ」が行われるような大学でした)には、まだ幾分左翼的な、世の中を斜に見た姿勢があったように思いますが、そんなことをしていても、何も変化しないと悟った時期でした。同時にそれは、一人ひとりを強くするという意味で、教育や経営に改めて興味を持ち始めた頃でもありました。


 当時は、ガルブレイズ、スノー、ポパー、D.ベルやL.サローなど、経済史や科学哲学を中心に幅広い本を読み、自分なりに「これから、世の中を良くするために何をすべきなのか」を毎日のように考えていました。すでに紹介済みの「甲斐塾」の同僚とも、毎日討議していた事を覚えています。今からすれば、非常に稚拙な議論であったことは間違い無いですが、しっかり勉強した上で、答えのない問題に対して自分の頭で結論を出そうという姿勢は、この時代に身についたように思います。


 僕は元々、勝ち負けを競うような世界に全く興味が無いので、「誰かが認めてくれる正しい答え」というよりは「自分なりに納得がいくまで考えた結果の答え」を追求する癖があります。いいのか悪いのかわかりません。自分の人生なので、それが他人から見ておかしなものであったとしても、自分で納得の行く答えが出したい、ただそれだけのような気がします。


 その後の経緯は、僕の経歴の通りですが、高校・大学時代の過ごし方が非常に重要であるという、自分なりの経験が、いまの「発明塾」につながっています。


一生読める本に出会う。そんなことも、大学時代の楽しみにして欲しいと思います。

さて、塾生と卒業生に贈りたい。

「未来を語ることに意味があるのは、現在の行動に結びつく時だけである」


 決して、現実の傍観者になってはいけない。愚痴を言って酒を飲んで、それで済ませてはいけない。実は僕はあまり酒を飲まない(のは皆知っていると思います)のですが、別に酒が嫌いなわけではなく、世の中の大半のことは、下手すると「酒飲んで愚痴を言う」で済ませてしまえるので、セーブしているわけです。

大いに未来を語り、それを現在の行動に結びつけて欲しい。未来は現在の結果だから。

ただそれだけです。


2012年9月1日土曜日

塾長の部屋(7)~発明塾が目指すものと「メリッサ・メイヤー」のつながり

 なかなか仕事が終わらない中ですが、今日は「発明塾がどこを目指しているか」ということについて、日頃から言っていることをまとめておきます。

 実は昨日、会社(TechnoProducer株式会社)主催のセミナーを開催し、元キヤノンの知財部門の方に講演いただきました。内容は、ここ数年僕自身が自らの頭脳で、試行錯誤しながら追求してきた「強い特許」というコンセプトに関するものです。僕自身が一番知りたかったこと、と言ってもよいでしょう。

 内容に関することは割愛します(来週、メルマガで出します)。実はこの講演に至るまでのところで、僕は以下の様なことを考えていました。

①R&Dではなく、I&R&Dである(ここまでは、ネイサン・ミアボルドのパクリ)。いや、正確には「Patent Design & Invention & R & D」である。

②「なぜなら」今や知財で負ければ、一瞬で事業の優位性を失うことになる。もともと知財権は「事業権(業としての実施権)」なので、当然といえば当然。

 知財を手当してから研究開発をするというのは、家を設計する前に土地を手当するのと同じ、アタリマエの活動。どうなるかよくわからない他人の土地をあてにして、家の設計、ましてや建築をはじめる人はいない。


③「ならば」緻密な知財分析の上に、権利取得のための計画を立て、権利に必要なアイデアを創出して着実に権利を確保する(もしくは、その権利=「守りの権利」を確保するための武器=「攻め」の権利を確保する:注1)のが「アタリマエ」の流れ。



④「したがって」一番重要な活動を、全てに先立って行うための「仕組み」として「発明研究所(マイクロソフトのパクリです)」が必要。それを僕は「発明塾」という形で、試験的に始めた。詳しい情報が出てこない上に、日本人で誰もそんなことをやっていない以上、自分でやるしか無い。


 このようにして(もちろん、上記は非常に単純化した経緯です)生まれた発明塾。僕がこのあと何をどうしたいと考えているか。ヒントは「Google」にあります。

・「電話一本で「辞めます」 グーグルのメリッサ・メイヤーがヤフーへ」
http://markethack.net/archives/51830872.html

 これにかぎらず、Googleで(これがイカンのかな?)「メリッサメイヤー」で調べると、批判的な記事しか出てきませんね。

さてさて。

 僕が、メリッサの何に注目しているか。それは、ここに書かれていない彼女の「偉大な」功績です。そこに「何が書かれていないか」が一番重要だと、僕はある人に教わりました。「書いてあること」ではなく「書かれていないこと」が重要なのです。

続きは次回にしましょう。


※注1:「知的財産戦略」 丸島 儀一 著