「発明塾®」へようこそ!: 2013

2013年12月29日日曜日

発明塾京都第161回開催報告~2013年を振り返って

第161回も、無事終了しました。今回も各自のアイデアを広く討議し、また、一部の時間を「発明法」のレビューに割きました。

個人的には、あまり進んでいなかった塾生のアイデアに進展が有ったことが、収穫だったと思っています。やはり、時間を掛けることが重要です。

現在のテーマでの討議は、SR(Solution Report:発明提案書)完成まで含め、1月末で終了としますので、年末年始も含め、発明にしっかりと時間を割いて下さい。大学生にかぎらず、多くの大人にとっても、年末年始は「まとまった時間が取れる、唯一の時間」です。


ここでどれだけ集中出来るかが、大きな成果を出せるかどうかを決めます。


自主合宿が予定されているようですので、大いに期待しています。



年末ということで、軽くこれまでと2013年を振り返っておきましょう。発明塾京都は、2013年で四年目を迎えました。東京と合わせると、開催回数は累計で250回を越えており、その議論の積み重ねが「発明塾式発明法」を確実に進化させてきました。


提出した(発明提案書として完成した)発明の数は、累計で百を軽く越えており、過去の発明を振り返ることで見えてくるものがあることも、今年度々実感したことでした。



さて、皆気づいていると思いますが、僕が意図的に2013年に時間を割いたことが、二つあります。


①知財戦略の各種パターンを、ケーススタディーとして解きまくる中で、理解してもらう

②企業に着目した特許分析を、テーマを変えて行う

いずれも、企業ではごく普通に行われる(注1)ことですが、大学の教育はまだ追いついていませんので(注2)、皆さんがこれらの手法に習熟しておくことは、今後社会人として活躍する上で、大きなアドバンテージになるでしょう。



ということで、2013年は、これまでの発明塾が「どちらかと言うと技術オタク寄り」の内容から攻めていたのに比べると、


「知財寄り」かつ「実務寄り」


の内容を重視してきた、と言えるでしょう。僕が目指すものがあくまでも「総合工学的アプローチ」であることは、変わっていませんし、むしろそれに近づいているといえるでしょう。



発明塾が定義する「発明」が、


「ビジネスモデル付きのアイデア」


であることもまた、変わりはありません。「資本主義/市場主義経済」の仕組みに載って広く普及し、世の中の問題を解決できるアイデアを生み出すためには、どのように考えればよいか、という「方法論」を、今後も追求していきます。



エジソンの発明史を紐解くと
事業への執念を感じます

最後になりますが、今年で卒業する「卒業生(卒塾生?)」は、今後、研究/経営/知財などの仕事に就くことになると思いますが、「さすが発明塾」と言われるように、最後まで自分の力を高めてください。


もちろん、大活躍を期待しています(約束されていると思っています)。



では!




※ 注1) 弊社内でも、教育を兼ねて勉強会を行い、各種業界の主要/注目企業の特許分析とそれを踏まえた知財戦略の立案、発明創出を常に行っています。


※ 注2) 「知財教育の必修化」は既に指導要領には入っていますので、あとは実践の時間を待つだけ、です。3月に文科省主催のシンポジウムでこのあたりの現状を取り上げて講演をしますので、お楽しみに。



2013年12月21日土曜日

発明塾京都第160回開催報告~「ものづくり」を学ぶこと、「深い理解」に至ること

第160回も、無事終了しました。

今回もまた、「発明塾」式の「発明方程式」の解き方について、素晴らしい進歩が得られました。もちろんその結果として、素晴らしい発明も得られたわけですが、方法論の進歩は、結果以上に重要です。

参加した塾生さんは、お疲れ様でした。


僕が、発明塾の討議で常に心がけていることの一つに、「どのような議論にも、必要最低限の時間を掛けること」が、あります。

実際には、塾生が多数参加して、色々なアイデアを討議したいと思えば思うほど、このルールを守ることは難しい(注1)のですが、このルールが重要であることは、僕だけではなく、塾生も「身を持って」理解しています。

今回も、「一見、筋が悪そうな発明の方向性」について、「何で筋が悪そうに見えるのか」という僕の疑問を解消するために、一定の討議の時間を取りました。その結果が、上記「発明方程式」の解き方の進歩に、つながりました。


今回の議論を踏まえて、塾生の一人から、

「楠浦さんが、ものづくり(ものの作り方、という意味です)について勉強する際の、おすすめの参考書は何ですか」

という質問がありました。良い質問です。既に挙げた本(注2)以外にありますか、と。


結論から言うと、既に挙げた

「ものづくり解体新書」「実際の設計」「クルマはかくして作られる」

以上のことは、各論で勉強するほうがいいのではないか、と思います(注3)。



「クルマはかくして作られる3」です!
ものづくりに関する、これ以上無い素晴らしい
「教科書」の一つ

以前も、「クルマと携帯電話の作リ方を、部品レベルまで押さえれば、ほとんどすべてのものづくりが理解できる」という話をしました(注4)。

意欲のある塾生さんは、「クルマはかくして作られる」を紐解きながら、さらに一つ一つの内容について、学問的(専門の教科書的)に理解を深め、また、ネットで関連情報を調べ、まとめるとよいでしょう。調べて、

「ふーん」

と「何となくわかったつもり」で終わらせず、自分でまとめる事が重要です。さらに実際に、発明でそれらの知識を使うと、理解は完全になります。

例えば、最も身近な機械部品として「ボルト(ネジ)」があります。上記、「クルマはかくして作られる3」で、最初に取り上げられています。福野氏(著者)が最初に取り上げている理由は、「シンプルで、最も重要で、奥が深い(注5)」からです。本書によれば、トヨタの新人技術者は、専門の指導員から「10時間」ボルトについて講義を受けるそうです。当然でしょう。ボルトを知り尽くさずに、機械設計は出来ません。


今回の発明討議で取り上げた「CFRP」については、「主応力」という概念を駆使しないと、製造法が理解できません。塾生のメモによれば、

「応力とは、力/面積(この面は選び方がいろいろできる)です。この面の選び方によって応力はその面に垂直な垂直応力と、並行なせん断応力に分けられます。せん断応力が0となるような角度の面において垂直応力は極値となり、その垂直応力のことを主応力と呼ぶ」

だそうです。ちゃんと、理解できているようですね。しかし彼は、

「原理の理解が甘くても単位は取れるけど、発明には圧倒的な力の差を生むなと感じ」

ているようです。いいことです。講義の単位がどうとか言うような、低い次元の話をしていてはいけません。


「知財」と「ものづくり」を学ばないと、発明は出来ません。大学の授業で「クルマはかくして作られる」をテキストにして工学の知識を縦横無尽に教えれば、もっと学生が「原理原則の深い理解」ができるのでは?と思います。
式や名前を教えたり、憶えさせたり、簡単な問題を解かせたりしていても、社会で求められる能力とのギャップは、開くばかりです。

ファインマンの子供の頃の体験が、非常に興味深い(注6)。

「ねえパパ、ぼく発見したんだ。荷車を引っ張ると荷台のボールはうしろに転がる。引っ張っていて急に止めるとボールは前に転がる。どうして?」
ファインマンの父は「それは慣性というものだよ」とか「ニュートンの運動の第一法則だよ」といってすませることもできた。しかし、父親は息子の疑問に真剣に答えた。
「なぜかはわかっていないけれど、動いているものはずっと動きつづけようとし、止まっているものは力を入れて押さなければ動かないものなんだ」
ファインマンは「これが深い理解というものだ」と述べている。「父は名称を教えたりはしない。何かの名前を知っていることと何かを知っていることの違いを父はわかっていた。私は幼いうちにそれを教えられたのだ」


そういう「深い理解」にたどり着けるような場として、「発明塾」を今後も継続していきたいと思います。



※ 注1) 発明塾のメンバーが、常に一定の数に保たれる理由が、ここにありそうです。

※ 注2) 「技術・設計・問題解決」に関する参考書のページを参照。発明塾で「蔵書」として所有しているものも有ります。今後も逐次充実させ、塾生が自由に勉強できる環境を整えたいと思っています。

※ 注3) これは、僕自身がそのようにして身につけたから、ということになります。エンジン設計者は普通、ボルトや歯車のような「機械要素」の製造法、金属の熱処理、金型の作り方、それらを用いた「鋳造/鍛造/射出成形」、プラスチックの成形も当然学びますし、粉末焼結のような特殊な製造法、切削/研磨/研削のような基本的な機械加工から、プラズマ加工/溶射のような特殊な加工法、果ては「潤滑油の作り方」のような化学系のことまで、ありとあらゆることを学びます。
僕はその後、半導体や光学デバイス、バイオ/ライフサイエンスの研究開発/事業開発も担当したので、いわゆる「半導体プロセス」「メッキ」「光学フィルムの作り方」「ガラス/セラミックの製造/加工」「細胞工学」「遺伝子組み換え」のような、更に幅広い「ものづくり」の方法を学ぶことが出来ました。

※ 注4) 実際に毎年、携帯電話を一台分解して、中を見てもらっています。これだけでも、全然違います。クルマについては、実物をばらすのは勇気が要りますが(笑)、京都大学機械系には、僕が川崎重工時代に寄贈した「W650」(僕が開発に携わった機種)のエンジンが展示されており、見たい人は「分解実習/僕の解説付き」で、いつでも見ることが可能です。

※ 注5) ボルトという「ごくシンプルな機械部品」一つを理解するにも、材料力学の深い理解と、熱処理や機械加工、鍛造などの加工法に関する知識が必要となる。例えばオートバイのエンジンにおいて、重要なボルトは「塑性域角度締め」という特殊な締め付け管理がされており、過度な再利用は不可である。理由は「この締め方では、(弾性域に比べ)飛躍的に高精度で締結できるから」であるが、それは材料力学(正確には、弾塑性力学)の知識がないと、永久に分からない。

※ 注6) 「発明家たちの思考回路」E・シュワルツ より引用。


2013年12月15日日曜日

発明塾京都第159回開催報告

第159回も無事終了しました。現在取り組んでいるテーマは、年内を目処に仕上げたいと思っています。議論が二周目に入って新しい切り口も出てきましたので、追い込みを楽しみにしています。

今回は、現在検証している新しい「発明理論」に基づいて、議論を進めました。実践を通じて、方法論を日々進化させる、これは僕自身のポリシーでもあります。塾生がそれを実践してくれていることは、非常に素晴らしいことで、有難いことです。

Astamuseの永井さんがインタビューで答えていたように、「知は実践とともに身につけていく」以外にありません。

今後も、発明塾は「実践を通じて知を創造する」場でありたい、と思っています。

参加したい人は、次のテーマに移るこの冬休みに、是非連絡ください!



2013年12月7日土曜日

塾長の部屋(58)~立命館大学「発明講義」第11回講義から~発明法「壁は2つ」

立命館大学での「発明講義」(正式には「マーケティング・リサーチ」金曜日4限)は、第11回講義を終了しました。

今回は、前回講義後に再度アイデア出しをしてきてもらい、それを「発明」と呼べるレベルに練り上げるところをやりました。

Grによって進捗は違いますので、講義中にある程度時間を区切ってGr討議/作業をしてもらいつつ、議論が「良いタイミング」に入ったGrを、僕がリードする形で進めました(注1)。

今回の講義内では、2つのGrがうまく「壁」を超えたと思います。実は「壁」は2つあります。

1)適切な先行技術を設定できるか
2)それを「超え」られるか

です。いつも通りテーマは「靴」ですから、相当考えてきたGrでも、既に商品化されていたり、コンセプトモデルが発表されていたり。そうでなくとも、特許は出ています。


今回、あるGrが壁を超えたのは、

「ないと思っていた先行技術が見つかったこと」
「それを、広くユーザーに使ってもらうための工夫を考えだしたこと」

が理由です。先行技術が見つかったのは、メンバーの粘り勝ちです。そして、「工夫」につながったのは、先行技術があるからといって諦めなかったことと、先行技術を発展させる際の「ちょっとしたアイデア」を、(僕が:注2)見逃さなかったことです。そこからは、あれよあれよと「発明」が出来上がりました。

目の前で「発明が創出」されるのを見た学生さんは、「発明とは何か」瞬時に理解したようです。


他Grも、隣で見ていたでしょうか?まだ「壁」を越えられていないGrは、参考にして下さい!

では、次回も宜しく!



※ 注1)毎年、そのような形で進めています。

※ 注2)もちろん、そのアイデアを考えたのは学生さんです。僕は「拾った」だけです。つまり、「アイデア」を「発明」に繋げるには、「誰かが拾わなければならない」ということです。


発明塾京都第158回開催報告

第158回も無事終了しました。

今回も、アイデア討議に加えて、知財分析の演習課題や「発明法」に関する討議を行いました。


少し脱線しますが、僕が機械工学を先行していた当時、大学(機械系学科)では「経営工学」に関する講義がありました。そこで学んだことは、

「品質の8割は、設計で決まる」
「だから、上流工程ほど重要である」

ということです。僕が設計に興味を持つきっかけの一つが、この講義でした(注1)。


今なら、

「出るアイデアのクリエイティブさは、議論の初期に時間を投入できる、よい議論の手法をもっているかどうかで決まる」

と言うでしょう。最初の「不確実な」時間帯に投入できる資源を、どこまで増やせるか、これがポイントです。最初を不確実にすればするほど、いいアイデアが出ることが判っています。

僕が先週の「塾長の部屋(注2)」で、

「攻めろ」

と言ったのは、それが理由です。最初で出来るだけ「粘る」必要があります。


発明塾では今後も、「どのようにすれば、創造的になれるか」という方法論を追求したいと思います。


※ 注1) もう一つのきっかけは、「機械設計演習」でした。詳しくは以下。
       塾長の部屋(40)~「設計」と「発明」が持つ「アート的」面白さ

※ 注2) 塾長の部屋(57)~「手堅く」は捨てる~立命館大学”発明講義”第10回から



2013年11月30日土曜日

「手堅く」は捨てる~立命館大学”発明講義”第10回から~塾長の部屋(57)

立命館大学での「発明講義」(正式には「マーケティング・リサーチ」金曜日4限)は、第10回講義を終了しました。講義としては、残り5回となります。課題提出までは、2回しかありません。

今回の課題は「新しい靴を発明する」ですね。

結構、ハードルの高い課題です(それが狙いです)。

靴は、かなり成熟した商品ですから、よほど発想を「飛ばさ」ないと、「進歩性があって」「市場がある」アイデアには、辿り着かないでしょう。つまり僕は「チャレンジ」を、求めているのです。もう60%の講義は過ぎているわけですから、ここまでまじめに取り組んでいれば、落第することはありませんね。

ですから、課題提出までの残された時間で、「自分で考えうる限り、ギリギリまで攻める」ことを、要求します。


僕は基本的に、「単位認可」制度は、高等教育にとってマイナスだと考えています。

「単位が取れればいい」
「単位が取れなければ、どうしよう」

いずれの思考も、学生が何かを身につけるための、助けにはなりません。


「攻めた」ことが賞賛されるような、新しい評価の仕組みを考える必要があるでしょう。ちなみに、僕の中に、「自分なりの答え」は有りますが・・・。まぁ、他の人も言っていることで、わざわざここで言うほどのことではありませんので、割愛します。


「受けてよかった」と心から言える講義が
今の「日本の」大学に、どれほどあるのか

さて、僕からのアドバイスです。

①リーダーは、自分の能力とメンバーの能力を信じること
②常に最高の成果を目指し、ゼロベースで考えること
③「手堅く」こなしても、結局何も身に付かないことを理解すること


一応、解説しましょう。

①リーダーは、自分の能力とメンバーの能力を信じること
攻めあぐねる理由の一つが、これです。自分を信じなければ、メンバーはついてきません。また、メンバーを信じて励ますのが、リーダーの仕事です。学生時代に、体験しておくべきことです。

②常に最高の成果を目指し、ゼロベースで考えること
つまらない山であることに気づいたら、すぐに降りる勇気を持つことです。そのまま登っても、頂きの高さは知れている。サンクコスト(経済学勉強してね)に、とらわれないように。

③「手堅く」こなしても、結局何も身に付かないことを理解すること
「お勉強」として、手堅く、とりあえずクリヤー(こなす)しても、結局何も得るものはありません。筋トレと同じで、120%の負荷をかけるからこそ、能力は向上するのです。その結果の失敗は、成功と同じぐらい、価値が有るのです。


You just go, you can do it!


立命館大学生、頑張れ!授業で失敗しても、大したことないんだから・・・。


楠。




発明塾京都第157回開催報告~「発明塾式」のおさらい

第157回も無事終了しました。いよいよ冬突入、皆さん体調管理にはくれぐれも気をつけましょう!

さて、今回は新しいメンバーを迎えつつ、いつも通り演習課題とアイデア討議に取り組みました。

ちょうどいいタイミングですので、「発明塾式」発想法の要点を、おさらいしておきましょう。


・先行技術を、徹底的に調べる
・見つかった先行技術をベンチマークするために、「技術思想」として捉え直す
・集団で「創造性」を発揮する
・NP問題であることを忘れず、「ランダムサンプリング」と「仮説検証」で解く
・知財戦略/BMの視点を入れて、「二度」発明する


と、いったところでしょうか。

僕は敢えて、カリキュラムやマニュアルのようなものは、準備/配布していません(手元にはありますが)。これは、発明塾だけでなく、企業で指導するときも、同じです。

初期から在籍している塾生は「耳タコ」でしょうが、「発明に至る回路は、一人一人異なる」からです。僕の仕事は、「今、目の前にいる塾生が、どういう回路で発明に至りうるのか/どこで躓いているのか」を見抜き、適切な指摘 and/or 協力をすることです。

「こうやるんですよ」と教えて、「発明」が出来るようになった塾生は、今のところ居ません。これからも、現れないと思います。

それは、「自転車」を乗ることに似ています。自転車の乗り方のビデオを100万回見ても、1発で乗れるようには、ならないでしょう。「発明」のような「脳の使い方」に関する知は、身体知だからです。

そしてもう一つ、発明塾で目指すような優れた発明/発明法は、「他人の頭脳を使う」ことを要求するからです。相手がいることなので、実践的に身につける以外の方法はありません。コラボするには、相手の「発明」に至る回路を見抜くことも、要求されます。


しかし、それが出来るようにさえなれば、

「誰かと話す度に、どんどん創造的になれる」

という、素晴らしい世界が待っています。僕自身、

「発明塾を運営して、一番得をしているのは自分自身」(注)

だと思っています。それぐらい、塾生の存在が、僕をより創造的にしてくれています。


創造的になるための「手法」と「仲間」を求めて、これからも発明塾は活動を続けます!



※ 注) いつも塾でも言っていることです。また、「組織として創造的になる手法」を、実用的なレベルで創りだせたことは、僕にとっては「予想外」の、大きな成果でした。
これは、20代からマズローを読み続け、探し求めていたものでしたので、「回り道」をした結果「意外と早く着いたやん」みたいな、ちょっと不思議な気分です。
今でも、ほぼ毎日「完全なる経営」(A.H.Maslow)を読み返しますが、発明塾で実践していることと、あまりにも一致することが多く、驚いています。


2013年11月23日土曜日

発明塾京都第156回開催報告~「電気自動車」時代の勝者は誰?

今回は、見学の学生さん一名も交えて、討議&講義を行いました。

各自のアイデア討議の後に、前回の演習課題の続きである「EVが5万円で普及したらどうなるか」について、考えてもらいました。理論的なお膳立ては、携帯電話とQualcomm「イネーブラー」モデルです。

知財を用いた「業界構造の変革」については、今後もテーマを変えて演習していく予定です。ここを押さえないと、どんなに良い技術に取り組んでも、「発明」と呼べるレベルにはならないからです(注)。

僕なりの考えとレビューもしましたので、次回までにブラッシュアップしてきましょう!

次回の講義/演習では、古典的な知財戦略論の定石をおさらいしつつ、現代知財理論を演習で学びます。


※ 注)発明塾における発明の定義は、「ビジネスモデル付きのアイデア」。つまり、普及し収益が上がる仕掛けがついた進歩性のある技術思想、になります。「知財」を武器に、「事業で勝つ」シナリオを作るのが、僕が教える「発明」理論です。



2013年11月17日日曜日

塾長の部屋(56)~「いよいよ本題です」~立命館大学”発明講義”第8回から

立命館大学「マーケティング・リサーチ演習」(MOT入門科目)(注1)も、前半課題は終了し、今回の第8回から、後半課題が始まりました。


最初は、いつもの「10円玉ゲーム」を通じて、Gr内で互いの能力をどう活かすか、という話。

「メンバーの力を借りて、創造的になる」

というのが、後半の「隠れた」テーマの一つです。発明塾でも、いつも説明している通りです。


今回は、「特許になる」アイデアという指定ですので、「進歩性」に関する基本的な考え方も説明しました。


前半は、「徹底的に事実に基づいて、論理を構築し、また、論理を事実で裏付ける」訓練でした。

後半は、「事実に基づいて、新たな飛躍を生み出す」訓練であり、その飛躍を「論理的に提示する」訓練でもあります。

「単に”面白い”アイデアは、中学生でも出せる」(注2)

という、ある塾生の気付きから、「大学生として、どこまで行けるのか」を常に模索してきたのが、「4年目」を迎えた発明塾の歴史。


結構、遠くまで来たんじゃないですか。


その一部を、この講義を通じて立命館大学生に紹介します。

「発明塾の知の技法」の基礎を、ぜひ身につけて下さい!



※ 注1) 来年度も開講しますので、立命館大学生は、ぜひチェックしておいて下さい。

※ 注2) 以下参照。
・「発明塾京都第130回開催報告」
 http://edison-univ.blogspot.jp/2013/05/130.html




2013年11月16日土曜日

発明塾京都第155回開催報告~「イネーブラー」による業界構造の変革を予測する

今回も、各自のアイデアを討議し、若干の演習課題を行いました。また、これまでの発明を振り返って、「発明理論」にも若干の進歩がありました。

皆さん、今回久々に話題に出た「イシューからはじめよ」(安宅)、ちゃんと読み直しましょうね!


発明塾では、常に過去の発明/発明討議を振り返り、

「どのようにして、良いアイデアが生まれるのか」

を、科学しています。東京や集中講義、弊社内のブレストも合わせると、300回を超える発明討議を行い、その度に振り返り、理論と手順に落としこんできたことが、「発明塾」の強みであり財産であると、日々実感しています。


今回の演習課題では、まず Qualcomm と Apple の例を取り上げ、「なぜ Apple は iPhone において GSM端末から業界参入したのか」「その先にどういう未来を見ていたのか」を討議しました。

また、それを踏まえて、

「来るべき電気自動車普及時代に、イネーブラーが業界構造をどう変えてくるか。その際に、イネーブラー以外のプレーヤーはどうすべきか。新規参入するなら、どのレイヤーに入るべきか。新たなサービス/システムとしてどのようなものが考えられるか、そこにおけるキープレーヤーは誰になるか」

を、考えてもらいました。


課題自体は、次回までにしっかり考え直し、発表してもらうことにしました。とても楽しみです。


発明が必要とされるのは、多くの場合「新たな技術が出現するタイミング」であり、そこで「業界構造がどのように変わりうるか」を予測することは、「発明のポイント」を絞る上で、非常に重要となります。

「普及しない」「収益が上がらない」「的を外した」

発明を生む「無駄」を、省くことができるからです。


今後も、「知財戦略を踏まえた発明」法を、引き続き学んでいきましょう!


2013年11月10日日曜日

知的財産マネジメント研究会/Smips 11月の「知財キャリア分科会」にて

昨日11月9日に行われました、知的財産マネジメント研究会/Smips の「知財キャリア分科会」にて、弊社の橋本(はしもと)が話題提供させていただきました。

>>以下、告知内容

・講演タイトル/内容:
「ベンチャー企業/スタートアップのための知財戦略~知財を如何に武器にするか」

 技術進化を先読みし、知財を梃子に業界へ参入してくるプレーヤーは、業界トップ企業をも市場から退場させることができます。新規参入を狙うベンチャー企業やスタートアップ企業であっても、業界構造を変革し市場をコントロールし得るのです。

 当日は、業界構造変革のメカニズムとその仕掛け方を簡単にご紹介しながら、皆様とディスカッションを通じてベンチャー/スタートアップの勝利の方程式を解明していければと考えております。参加の前提知識は特に問いませんので、皆様、是非ご参加下さい。


>>

土曜日にもかかわらず、最終的に30名弱の方に参加いただきました、有り難うございました。途中のGrワークでは、かなり活発な議論がありました。私も大変勉強になりました。

今回の話題提供のポイントは、「知財を活用することにより、周辺領域の無力化/付加価値の収奪を起こす」ことです。参加者の皆様には、それによって、業界構造にどのような変化が生じるか、をお考え頂き、議論いただきました。

今後も、弊社の研究会にて引き続き討議し、また機会がございましたら、話題提供させていただく予定です。

では!


2013年11月9日土曜日

発明塾京都第154回開催報告~「納得行くまで理解する」ことこそが、大学でやるべきこと

今回も、アイデアの討議と演習課題を行いました。

演習課題では、「知財戦略」の観点から、いくつかの特許/一連の出願特許を分析する、という作業を行いました。

知財戦略の典型的なパターンを、「フレームワーク」として理解しておくこと。皆さんが技術者/経営者として将来、自分の技術を事業化する際に、必ず役に立ちます。

塾で取り上げる一連の発明/特許を、知財戦略の観点で見る「習慣」を、身に付けましょう。


一部の塾生さんには、「卒業課題」に取り組んでもらうことにしました。既に「発明」自体が成果ですが、その「メタ」な知を自分でまとめておくことが、大学時代に本当にやるべきことです。


「成績」「単位」を目標に大学生活を送っているとしたら、それは間違っています。

本当に重要なことは、「自分が理解したいと思っていることが、理解できたか」であり、「自分が近い将来やりたいと思っていることに対して、十分な準備ができたか」ということです。

成績や単位は、その「一つの評価指標」に過ぎないのです。しかもそれは「他人が評価する」際の指標に過ぎません。自分の目標にするような「シロモノ」では、ありません。

本当の「モノサシ」を、常に自分の中に持つこと。


自分で納得行くまで、「発明塾式の”知の技法”」を整理し理解して、「社会に出る」ことに備えて欲しい。

古いものはスキャンして保存し
買い直しました


発明塾で教えている事は、まだ世界で誰も教えていない「組織で知を創造する」手法(注)であり、「知を活用する」手法です。

「理解できた」「新しいメンバーを入れて、自分が中心となって活動できる」と、自信を持って言えるようになるまで、徹底的に。


それが、皆さんが社会に出て活躍できる、唯一の道です。



※ 注) 20代で、「知識創造企業」(野中郁次郎)を読んでから20年近い年月が経ちました。あのような組織を、自ら実現/運営出来るようになったことに、自分自身も驚いています。羽ばたいた先で、塾生/立命館大学生がさらに「広げて」くれることを、切に願います。



2013年11月4日月曜日

塾長の部屋(55)~「質問は何のため」~立命館大学”発明講義”第6回から

立命館大学での講義は、例年より一回分前倒しにして、第6回に前半課題の発表(注1)と質疑応答を行いました。

今回、学んで欲しかった事は以下です。


①「なんのために質問をするのか」

②「解っていないことを、判ること」
③「言い訳は、時間の無駄」
④「理解できない状態を、放置しない」

高校の時に出来ていたことが、何故かできなくなるのが「日本の大学生」です。


講義メモから、順番に行きましょう(注2)。





①「なんのために質問をするのか」

いくつか挙げることが出来ますが、僕が重視するのはこれ。

「質問は相手のため、その場のため、そして自分のため」

相手の理解を深め、その結果議論が深まり、その場全体が成長するような質問を考えるのが、質問者の仕事。限られた時間を、いかに本質的な議論に向けるか。質問者の責任は重大です。僕の講義では、発表以上に、質問を評価します。

逆に、良くありがちな「自分の頭の良さをひけらかすための、揚げ足取りの質問」は、僕の講義では厳禁。集まってまで、やる意味は無い。せいぜい、掲示板にでも書き込んで、自己満足することです。

今回は皆、前向きに質問を考えてくれたので、議論がそれなりに深まったと思います。

みんな、ありがとう!

参考図書に、「質問力」(齋藤孝)を挙げておきました。



②「解っていないことを、判ること」

解っていることと解っていないこと、出来ていることと出来ていないことを分けること。事実認識、現状認識。全てはここから始まります。

解っていないところが判れば、そこを何とかすれば良い。ギャップが把握できずに、努力しても仕方がない。間違った方向に、全速力で漕ぐ程、虚しいことはない。



③「言い訳は、時間の無駄」

質問への返答は、あくまでも「回答」であるべき。感情論を捨て、事実に基づいて、理路整然と簡潔に答える。わかっているのかわかっていないのか、出来ているのか出来ていないのか。出来ていないなら何故だと思うのか。どこの理解が不足しているのか。

その自己認識なしに、成長はない。それを、討議を通じて明らかにする。他人のふり見て・・・的なことも含め、あらゆることから学ぶ。

で、なければ、大学に集まって学ぶ、ことにほとんど意味は無いと思う。


さて、僕の経験上、多くの大学生は、質問に対してまず「言い訳」をする(注3)。

わからないことはわからないと、事実を認めること。それが学びの第一歩。わかっていない理由は、はっきりいってどうでもよい。まして、わかったふりをしても意味は無い。



④「理解できない状態を、放置しない」

理解できてなんぼ。出来るようになってなんぼ。そこまでしつこく考え、練習すること。それに値しないことは、最初からやらなければいい。時間が無駄。

これもまた、高校時代には「なんとか理解できるまで粘って」いた学生が、大学に入った途端、「単位が取れれば良い」「テストの点数がある程度取れれば良い」というところに、目標を定めてしまう。


その結果、「解らなくても別にいい」「解らないのが普通」という規準ができてしまう。しかしこれは、彼らが社会に出るにあたって、致命的な欠陥となる。

「はい」「解りました」が信用出来ない社会人ほど、使えないモノはない。

単位やテストの点数は、「結果」であって、「目標」には、なりえない。大学も、単位や点数で「釣る」ようなことは、却って学習意欲を別の方へ向けてしまうことに、気づいているはず。


講義初回、
僕は、「なぜ」「僕が」この講義をするのか、ということを話します。「学ぶ意味があるかどうか」は、学生が自分で判断すること。「学びたい」「自分にとって意味がある」が思った学生だけが、受講してくれればいいわけです。

大学が、その「多様性」を保証することが、最も重要であると、僕は考えています。


そして、「学びたい」と思ったことを「徹底的に、理解できるまで学ぶ」「そのために、学び合う」ことのみが、大学で「皆が集まって」やる意味があることです。



※ 注1) 実際には、机上発表のみとし、口頭発表の時間は与えなかった。「チャラい」プレゼン資料を作ってだらだらと話してもらうより、文書で厳密にまとめてもらうことを重視した結果です。


※ 注2) 僕は、立命館大学での講義時には、簡単な講義メモ/指導案のみを準備し、ほとんどアドリブで行うことにしています。その方が、学生の「理解」(表情や、ちょっとした言動の変化から読み取る)に集中できるからです。また、学生から自由に質問を受けることが出来るだけの、余白も取ることが出来ます。


※ 注3) 何故か今年は、一人として言い訳に終始する人はいませんでした。



「研究・技術計画学会」第28回年次学術大会にて発表いたしました!

「研究・技術計画学会」第28回年次学術大会にて、弊社 TechnoProducer 株式会社が主催する研究会の成果を、発表させていただきました。

発明塾でも常に取り上げている「知財戦略論」について、慶応義塾大学ビジネススクール(KBS)の岩本教授にご指導いただき、まとめたものです。



・発表タイトル

2G18「技術の変化点における技術・経営戦略─オープン・クローズド設計─」
○岩本 隆(慶大),楠浦 崇央,橋本 純一(TechnoProducer)

プログラム詳細は、以下
http://jssprm.jp/wp/wp-content/uploads/2013/10/program28HP_131008.pdf



内容については、発明塾関係者には耳タコですが、

・技術の変化点に備える
・どの技術が来ても対応できるように、無力化するための知財を予め準備しておく
・自分の技術以外(旧世代も含む)を、知財で無力化し(オープン)
・同時に、普及を促す。
・そこに、自社の知財が使われる仕組みを作る(クローズド)

といったところです。時間の関係で、全ては紹介できませんでしたが、今後。事例研究の結果は、逐次弊社スタッフにより論文化される予定です。

お楽しみに!



2013年11月2日土曜日

発明塾京都第153回開催報告

今回も、各自の発明を討議した後に、演習課題について討議しました。

「国際標準化と事業戦略」にあるような、「技術を高速で拡散させて収益を上げる」という視点から、発明を生み出す事が重要です。

それが発明塾で言う「ビジネスモデル付きのアイデア」であり、「知財戦略を踏まえた発明」です。


次回も、引き続き演習課題の討議を行いますので、

「単に面白い発明をする」

で終わらず、知財戦略を踏まえて「収益の上がる発明」を創出する手法を、身につけましょう。


では!




2013年10月27日日曜日

塾長の部屋(54)~「大学時代にすべきこと」~立命館大学”発明講義”第5回から

立命館大学での「発明講義」(正式名称は「マーケティング・リサーチ」)も、そろそろ折り返し点になります(注1)。

今回の第5回講義では、Grワークの進め方も含め、皆さんが大学時代に身につけておくべき内容を、「おさらい」しました。


以下に一部を抜粋しておきます。


詳しくは、自分のノートを確認し、まとめ直し、理解を深めて下さい。



>>>以下、楠浦講義メモより引用


1.大学時代にやるべきこと


「大学に入って、久々に頭を使った」


というコメントが散見?されましたが、それは皆さんが、貴重な20代の時間と、学費を毎日如何に無駄にしていたか、ということです。同じ理由で、僕の授業では、講義外の課題を重視します。たかが週に1.5時間の「お話」で、何が身につくというのでしょうか?基本的に勉強は、「毎日自分でやる」ものです。


「時間外の課題が多いので減らして欲しい」という意見がありましたが、「楽がしたい」なら履修しなければよいのです。必修科目ではありませんから。僕の講義は「もっと勉強したい」という学生に対して、常に開かれたものでありたいと思っています。実際「もっと勉強したい」という学生には、毎年多数の参考図書や資料を紹介しています(注2)。


マッキンゼーの「Up or Out」(向上なき者は去れ)に合わせると、「向上心なき者は去れ」でしょうか。


幸いにも、僕の講義は毎年非常に高評価で、「来年度も継続してほしい」と理工学部から連絡が来ました。立命館大学の少なからぬ学生が、「もっと勉強したい」と思っていることは、僕にとっては希望の光です。


大学で学ぶ、専門科目などの個別の知識はもちろん重要ですが、「一生通用する学びの技法を身に付けること」こそが、大学時代にやっておくべき、最も重要なことです。大学時代に得た知識で一生食っていけるほど、世の中甘くありません。次から次へと、新しい状況を切り開き、問題か解決するための知識/スキルが必要とされます。仕事をしながら、いかにそれらの知識/スキルを身につけていくか。


皆さんが社会で活躍するためには、それが最も重要です。


そもそも「勉強したことで食っていける」=シーズ発想、「目的を達成するために、あらゆる必要な手段を身につけ、駆使する」=ニーズ発想/目的思考、です。社会で求められるのは、常に後者です。


「学んだことを使って、テストで良い点を取る」という学習に対する態度は、高校までで捨てることです。社会では、「学んだことを使ってくれ」と言われることはありません。「これをなんとかしてくれ」「この目標を3ヶ月以内に達成してくれ」と、課題/目的から始まるのです。


「目的思考」が出来なければ、皆さんを待っているのは「使い走りの仕事」です。出来る範囲の、言われたことをやる、という状況に甘んじるしかありません。


僕は皆さんに、充実した人生を送ってほしいと思っていますし、そのために、「自分で状況を切り開ける(課題を解決できる)」社会人になってほしいと思っています。僕が見る限り、在籍しているすべての学生に、それは可能です。

「目的を達成するための手段を創造し、評価し、選択する」能力を、この講義を通じて鍛えて下さい。



ちなみに「学びの技法」の次は、「一生付き合える少数の友を得ること」です。多数は不可能です。見極め、「これは」と思う友を大事にすることです。

とはいえ、大学できちんと勉強するのは
意外と難しい。山登りのように
正しい「ガイド」が必要です。

>>>引用終わり

他にも、数多くのトピックを取り上げました。事前準備した講義メモから、タイトルだけ抜粋しておきましょう。


・「読んできて」と言われてやるべきこと~「理解」とは何か

・なぜ「あいまい」な状況と感じるのか~「手段」を指示されることに慣れきっている
・なぜ人は「学べない」のか~無知を認める素直さ
・Grワークの落とし穴~集団バカを避けるために
・「決められない」人の特徴~決めないということも決断である
・まぐれ/決め打ちの無駄~何をするにも理由を持て
・組織は必ずリーダーを必要とする~「霧の中を進む勇気」を持つ

機会があれば、本Blogでも取り上げましょう。




※ 注1) 下期15回の通常講義のため。例年、前半7回を「特許情報分析」、後半7回を「発明発想法」とし、最終回は「知財戦略とイネーブラー」の講義に充てています。



※ 注2) 今回の講義で取り上げた参考図書は、以下。

・「失敗の本質」(野中)
・「学びの心理学」(秋田)
・「知識創造企業」他、野中郁次郎の著作
・「選択日記」(アイエンガー)
・「イシューからはじめよ」(安宅)
・「問題解決の全体観」(中川)>他、ロジカルシンキングに関するものは、いくつかまとめて読んでおくと良い。
・「戦争論」クラウゼビッツ
・「加速するテクノロジー」他、レイ・カーツワイルの著作>人工知能の専門家。知っての通り、彼は先日Googleに招聘されています。「知を生み出す」領域に、コンピュターがますます入り込んでいます。人間が「コンピューター以下」になる日はいつ来るのか、それを見通した本を、彼がいくつか出しています。
・「7つの習慣」(SRコビー)
・「入門ビジネスコーチング」(本間)他、コーチング理論、とくにGROW理論(以下)に関する本
http://www2.ocn.ne.jp/~honeybee/communication/coaching/CoachingGrowModel.html





2013年10月26日土曜日

発明塾京都第152回開催報告~「知財は交渉力」と思う日々

第152回も、いつも通り各自のアイデアや特許分析の結果を討議し、その後課題演習を行いました。

発明には、特殊/高価なツールは必要ない。先行技術を素早く見つけ、その技術思想を見抜く手法に、まず習熟すること。その上で、常に技術を流れで捉えること。そして、集団/個人でのアイデア出しについての「若干の」技法を、しっかり身につけることです。


経験上、さほど難しいことではありません。


一定期間の訓練で、必ず身につくものです。


変な理屈をこねずに、地道にトレーニングに励んで下さい。


丁度皆さんが、受験勉強をしていた頃を、思い出すと良いでしょう。


なぜか日本人は、大学に入ると勉強法を忘れてしまうようですが、ほとんどの高校生は、予備校などで、正しい勉強法を学んでいます(注1)。忘れないことです。


あとは、「わからないことを、わからないと認める素直さ」です。


素直さの議論は、以前やりましたので割愛します。


「分かった風」


を装っても、何も得るものはありません。わからないことを見つけ、認め、頭を下げて教えを請うことです(注2)。なぜか、わかっていない人ほどプライドが高く、わかっていないという事実を、なかなか認めたがりません(だから、色んな事が「わかっていないまま」、大きくなってしまうのでしょうが)。


多数の学生や部下を指導してきた結果、一見「天然(ちょっとズレている人)」に見える人のほとんどにおいて、「分からないことを認めるのが恥ずかしい」という点が、学び/成長を阻害していることが、わかっています。「ズレ」は、「わからないことを放置した結果」なのです。


「ひょっとして」と思う人は、早めに修正しましょう。「わからないことを放置する」ことが癖になると、「ズレ」がどんどん広がって、最終的に誰も何も教えてくれなくなります。広がったズレを自ら認めるのも、かなりの苦痛が伴うでしょうから、この悪循環は止まりません。


放置して、良いことはなさそうです。



さて今回は、直近でいくつか興味深いニュースが有りましたので、塾で取り上げきれなかった部分も含め、取り上げておきます。知財戦略/知財権が「どのように」重要になりつつあるか、ということを、これらのニュースから読み取って欲しい(注3)。



1.NTTドコモが「iPhone」を販売するかわりに提供したのは?

これは、以前から多くのニュースが流れていましたので、ご存じの方も多いでしょう。あるいは、無線通信の業界では、よく知られたことだったのだろうと思います。

・「アップルがiPhone販売の見返りにドコモに突きつけた条件とは」

http://www.techvisor.jp/blog/archives/3541

最新の記事は、いくつかまとめて以下に引用されています(注4)


・「アップルの密約-ドコモに与えた最恵国待遇」

http://ameblo.jp/enntopia777/entry-11645970271.html

AppleはもともとPCメーカー。携帯音楽プレーヤーの延長線上で、携帯電話に参入している(注5)。では、以下の計算をしてみましょう。


「携帯電話-PC=?」


答えは無線技術である。初代 iPhone が、なぜ GSM(第2世代) だったか。なぜ Qualcomm チップではなく、Infinion チップだったか。「新しくてクールな商品を出すのがウリ」のAppleが、なぜいまさら「時代遅れ」の「第2世代」の携帯電話を?、誰もがそう思ったハズである。


このあたりも、知財面から見れば、理由が分かる。その辺の理由から察するに、Appleは現在、「知財に関しては、かなり用意周到な会社」である。


無線通信業界において、技術と知財を巡る争いは、販売権にまで飛び火している。まさに「知財は交渉力」の面目躍如だ。


元キヤノン知財部/大阪工業大学 田浪教授は、弊社主催の「知的財産セミナー」で、以下のように述べておられる。


「知財を交渉力として、優れた技術を持つ企業と、有利な立場で提携していく」


それこそが、「知財戦略」だと。



ここで思い出すべきなのは、IBM(注6)。


・「発明塾京都第150回開催報告/京都大学「ものつくりセミナ」講義報告」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/10/150.html

IBMと通産省の「コンピュータ」交渉/戦争で、最終的に飛び出したのも「電電公社(現NTT)の特許」。日本にコンピュータ産業が残ったのは、この交渉の結果。つまり、電電公社の特許のお陰。以下に取り上げる NEC(日本電気) も、いわゆる「電電ファミリー」として、日本のコンピュータ産業とともに成長した会社です。



2.NEC と Lenovo の「携帯電話端末事業」譲渡交渉

Nokiaの携帯端末事業譲渡(注7)の時もそうでしたが、少なくとも無線通信の世界では、もはや事業価値の大半は「特許」になってしまっている。技術者出身の経営者である僕としては、若干の寂しさと「否定したい気持ち」があるのは否めないが、数字や交渉の経緯が示していることなので、仕方がない。

・「パソコン世界一 中国レノボ襲う盛者必衰のジンクス」(日経新聞有料記事:注8)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1104E_R11C13A0000000/

特に基地局を含むインフラ系の特許に、興味を示していると言われている。Nokiaが端末事業を売却して、インフラ系に特化しようとしていることを合わせて考えると、興味深い。交渉力争いが、既に始まっているのであろう。


もはや、技術系企業の交渉事において、特許や知財の話は避けて通れない。将来、経営を志す理系学生は、知財を武器として駆使する方法を熟知することが、必須である。それは、経営の自由度を著しく高め、経営目標達成に向かって、柔軟に取り組めるようになることを意味する。


いや、あるいはもはや「知財を熟知」していなければ、「経営に柔軟に取り組めない」ことを、意味しているのかもしれない(注9)。少なくとも、LenovoやApple、NokiaやSamsungを相手にするなら。




※ 注1) 実際、僕が実践している勉強法、読書法、ノートの取り方は、全て「駿台予備校京都本校」で学んだ方法です。塾生に聞く範囲では、今でも全く同じことを教えているようです。本質的な方法は、時代/環境を越えて通用する、ということでしょう。


※ 注2) 社会人でも、これが出来ない人が結構多いのも事実です。セミナーでたまにこういう人に出会うのですが、学びたいのか学びたくないのか、よくわからないのでとりあえず徹底的に無視することにしています。


※ 注3) 知財(権)は、良くも悪くも「経営のツール」でしか無い。技術系企業においては、研究開発成果をマネタイズするためのツール。交渉力としてどう使うのか、技術/頭脳のエグジットとしてどう位置づけるのか、ROIを高めるためのツールとしてどう活用できるか。僕はよく、クライアントの経営者/知財部門の方々と、そのような話をします。

少し前に、元ゼロックス/現ライセンス協会の原嶋会長とお話をしたのですが、ほぼ同じことをおっしゃられていました。


※ 注4) 原記事は以下(有料)。


・「アップルの密約-ドコモに与えた最恵国待遇」

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1803K_Y3A011C1000000/?df=4


※ 注5) このへんの詳しい経緯は、また機会があれば知財面での分析を交えて、取り上げたいと思います。



※ 注6) IBMに関する過去ブログは、他に以下。


・塾長の部屋(51)~「IBMの知財戦略/戦える頭脳集団へ」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/09/ibm.html

・発明塾京都第148回開催報告~「事業/企業のライフサイクルに合った知財戦略」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/09/148.html


※ 注7) 栗原弁理士のブログによれば、10年間の特許利用料が「40%以上」を、占めています。


・「マイクロソフトはノキアを特許ごと買ったのか?」

http://www.techvisor.jp/blog/archives/3929


※ 注8) 今後、無償の様々な引用記事が出れば、それに差し替えます。



※ 注9) 実際に、携帯通信の分野を中心に、大手製造業の知財交渉担当者から相談の連絡を頂くことも多く、少なくとも知財の世界では、「事前に武器を準備していなければ、戦えない」ことを、痛感する。攻められてからアタフタしても、打てる手は限られている。むしろ、「攻められそうなところへ、どう先手を打つか」という話で来て欲しい、と思ってしまう。


これも、例えば以下、元ホンダ知財部長の久慈氏が、再三指摘している。


・世界一知財訴訟を仕掛けたホンダの元知財部長が語る「攻めのハンター型知財戦略」

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2246?page=2

一方で、「攻めに出るようになってから、警告状がピタリと来なくなった」というお話を伺うこともある。つまり、これまでグレーゾーンだったところが、「シロ」になったわけである。経営/研究開発の自由度が広がった、ということである。



2013年10月20日日曜日

発明塾京都第151回開催報告~「作り込み」と「確信犯」再び

第151回は、発明の基礎となる演習課題と、アイデアの討議を行いました。いきなり面白い視点のアイデアもあった一方で、せっかく先行技術を見つけていても、それが読みこなせていないため、先に進まない、という例もありました。

そのためにも、塾で出題している「演習課題」を、しっかりとこなし、かつ、自分の発明作業で、学んだ事を、すぐに実践することです。


「単なるお勉強屋」には、僕は興味はないので。



さて、今日は僕が「川崎重工業」のオートバイ開発部門で学んだ2つのことを、お話しましょう。皆さんが仕事を選ぶ時の、一つの規準になればと思います。それは、以下の2つの言葉で表されます。


・「作り込み」

・「確信犯」

いずれも、当時の開発部門の部長が、口癖として繰り返していた言葉で、特に後者の「確信犯」は、僕の座右の銘の一つでもあります。



1)「作り込み」

不思議と今でも、その時のことをはっきりと覚えているのですが、当時部長がこの言葉をしつこく繰り返していたのは、「ある機種」(注1)の開発についてでした。

「ネチネチと作り込んで、市場で高く評価されるものにしていくのが、カワサキ流なんですよ」


と、開発担当の係長さんに向かって、それこそ「ネチネチ」(注2)言っておられました。カワサキはオートバイメーカーとしては規模は大きくないため、開発したエンジンをどう発展させていくかということに、強いこだわりと独自の方法論を持っていたようです。


「新しい型を起こすな」


と、僕自身もかなり強く言われました。設備投資を抑えるという点が一番でしょうが、「完成度を高める」「突き詰める」という土壌も、有ったように思います。


例えば、僕が大学時代から10年以上乗っていたオートバイ「ZZ-R1100」。


・「ZZ-R1000」 http://bit.ly/1guk5Jt


このオートバイは、1990年に「世界最速(注3)」を謳い文句にしてデビューし、メーターも 320Km/m まで目盛りがあることが、当時非常に話題となりました。


しかしこのオートバイのエンジンの基本設計は、1984年のGPZ900Rに遡ります。その後、GPZ1000RX、ZX-10、と排気量変更を含め少しずつ改良を重ね、ZZ-R1100になります。当たり前なのですが、当時開発に携わった先輩方と机を並べて仕事をさせていただいたので、当時のことも色々伺うことが出来ました。


自分が乗っていたオートバイということもあり、ZZ-R1100に至るまでの歴史は、書物で分かる範囲ではすべて勉強してから入社したのですが、開発者に直接話を聞き、自分で実際に開発を担当して(注4)、「作り込み」の意味を、肌で感じることが出来ました。


非常に貴重な経験だったと、当時の先輩方/上司に、とても感謝をしています。


「作り込み」「完成度を上げた」ZZ-R1100のエンジン(型式名:ZXT10CE)は、僕にとっても思い入れのある、「究極のエンジン」です。


カワサキは、他社に比べても「作り込み」が、非常に上手いメーカーだと思います。僕が担当したW650も、当初から900cc化の計画もあり、僕もその検討を担当しています(注5)。



2)「確信犯」

新機種開発は、基本的に「不具合対策(注6)」の連続です。設計としてギリギリを攻める場合には、ある程度予測して、材質や形状の異なる部品を複数手配しておくのですが、当然「想定外」の事が起きます。

不具合対策のために、次々に行われる「開発会議」で部長が「確信犯でやってくださいよ」、と言うわけです。


☓「たぶん、これで行けるだろう」

◯「絶対、これで行けるはず」

つまりそういうことだと、僕は理解していました。「根拠と自信」が「確信」にまで高まるほど、「検証」した結果なのか、ということです。


「検証」は、「自問自答」と言い換えることも、出来る。



よく「大学時代の勉強なんか、企業では役に立たない」という人がいますが、それは「使ってないだけ」でしょう。あるいは、そこに至るまで「考えていない」だけでしょう。


実際僕が、エンジン設計を担当した当初、大学時代の教科書を開かなかった日はありません。特に材料力学や、材料そのものについて、大学時代に学んだ知識をフル活用しました。不具合対策会議に、分析結果をレポートするときにも材料に関する様々な文献、理論を踏まえる必要がありました。


「確信犯」(注7)


には、「知識」と「理論的理解」が欠かせません。


塾生さんには、ぜひ、上記のような職場でみっちりと自分を「鍛えあげて欲しい」と思いますし、それに耐えられるだけの勉強を、大学時代に積んでおいて欲しいと思います。


発明塾が、そのきっかけになれば、これ程嬉しいことはありません。




※ 注1) 「機種」とは、バイクの種類のことです。ここは記憶が曖昧なのですが、たぶんVN800(通称「バルカン800」)だったと思います。


※ 注2) 余談ですが、ひょっとしたらカワサキだけかもしれませんが、開発から上に行く人は、全員この「ネチネチ」を持っておられました。当時のその開発の部長も、その後、事業部長になられました。


※ 注3) 当時は、国内4社すべてが「世界最速」を競って、新たなオートバイを次々に開発していた時期でした。320km/hのメーターが「伊達ではなかった(実際に300km/hを超える速度が、素人でも安全かつ簡単に出せる)」こともすぐに証明され、「世界最速と言えばカワサキ」という時代が、しばらく続きました。


※ 注4) その後、ZZ-R1200になる際(前)に大幅な変更が加えられ、同じエンジンとは言い難くなりました。その際、幸運なことに、そのトランスミッションの設計を、すべて担当することが出来ました。自分が乗っているオートバイの「次の機種開発」ができる、ということで、今まで以上に力が入ったことを覚えています。


※ 注5) 当時は「900cc 化は、熱的に厳しいかな」という結論になり、実機製作せずお蔵入りでしたが、その後2011年に、ボア(ピストン径)アップをした 800cc 版が発売されています。この排気量のチョイス、当時の検討内容を思い出しても、絶妙だと思います。

当時に比べると、多少材料が良くなっているでしょうが、やはり900cc は厳しかったのでしょう。息の長い機種になってほしいですね。
ちなみに空冷のエンジンは、ありとあらゆる部品の材料が「熱的(耐熱温度/高温強度)」に厳しいので、「材料」の勉強になりました。「材料」の知識は、製造業ならどこへ行っても役に立つ知識の、一つです。

※ 注6) 誤解のないように言うと、開発中の「破損」「故障」などを、開発工程では「不具合」と呼びます。



※ 注7) 塾生の理解については、以下参照。


・塾長の部屋(38)~「毎週教会へ行く」ことの意味

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/03/blog-post.html


2013年10月14日月曜日

塾長の部屋(53)~「知的財産マネジメント研究会(Smips)」150回の繋ぐ「縁」

今回は、「縁」について。

先週土曜日10月12日、「知的財産マネジメント研究会(Smips)」第150回が行われました。

・「知的財産マネジメント研究会(Smips)」
 http://www.smips.jp/

私の知る限り、毎月開催という高頻度で、かつ、これだけの規模(毎回100名程度の参加者)で無料開催されている、「知財」「産学連携」「技術移転」等に関する勉強会は、他に無いと思います。150回に際して、改めて、総合オーガナイザーの隅蔵さん/西村さん/事務局スタッフの皆さんのご尽力と「継続」の素晴らしさを、感じました。

・「知的財産マネジメント研究会(Smips)」とは?(及び連絡先)
 http://www.smips.jp/abo.htm


さて、私がはじめてSmipsに参加したのは、第100回記念の会です。今回の150回までに、様々な出会いがありました。全て取り上げることは不可能ですが、今回は3つを取り上げさせていただき、Smips150回の記念にしたいと思います。


①「発明塾@東京」初期メンバー
「発明塾」は2010年4月に、東京で第一回を行いました。4年目の現在、東京での活動は行っておりませんが、初期メンバーとの出会いがなければ、@京都も無い。そんなことを考えながら、第150回に参加しておりました。
@東京メンバーの何名かは、その後「知財の仕事」に就いています。またどこかで接点があるのだろうな、と思って楽しみにしています。


②「知財業界の起業家」
2009年に、「知財キャリア分科会」で僕自身が知財に関わるきっかけや、当時の業務について紹介した際に、様々な方からご連絡をいただきました。その中で、同じく「起業家/経営者」の方で、今でも交流がある方がお二人。

お一人は、発明塾/立命館大学にもお越しいただいている、アスタミューゼ株式会社の永井さん。彼も起業して10年とのこと。年齢はひとまわり違うはずですが、不思議と話が合う方です。現時点では、会社規模が全く違いますので、経営者としては、僕のほうが追いかける側になっています。

・「Astamuse」
 http://astamuse.com/

「人類の知を、もっと活用できるプラットフォームを作ろう」という彼のビジョンについて、立命館大学MOTの講義でも、度々紹介いただいております。


もう一人の方は、僕と同じ年代、同じような経歴の方です。まさに今、新しいシーズで勝負をかけておられるので、氏名や取組み内容は伏せさせていただきますが、僕が今最も注目している方です。


③「クアルコム」の知財戦略
実は私が、「クアルコム」の知財戦略について知ったのは、記憶に間違いがなければ、2009年の9月に開催された、Smips恒例の「ワークショップ」です。ここで、ある企業の方が、知財戦略/ライセンスの威力について、非常にわかりやすい「ケーススタディ」を紹介しておられました。当時、知財が何たるかイマイチ理解出来ていなかった僕が、その威力を知ることになったのは、Smipsだったわけです。

他にも多数の方との、ご縁がありました。例えば、東京工科大学の尾崎教授。Smipsでお話を伺ったことがきっかけで、日本知財学会の第8回年次学術研究発表会(2010年)にて、企画セッション「グローバルな『知』を巡る攻防~投資とその利回り」(注1)を、企画運営させていただきました。

挙げるとキリがありませんね。


もちろん、総合オーガナイザーのお二人、事務局のスタッフの方々、「知財キャリア分科会」共同オーガナイザーの上條さんを始めとした、各分科会のオーガナイザーの皆さんとの出会いの重要性は、言うまでもないことです。改めて感謝の意を表させていただきます。

これまで「知財キャリア分科会」にて話題提供いただきました、多数の知財関係者/起業家の方々にも、改めて深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

また今回、大学の後輩かつ、「甲斐塾」の後輩にも、出会うことが出来ました。最近、後輩や同期が、「知財」の仕事に就いたと連絡があるケースが、とても増えています。時代でしょうか。


次回151回では、久々に私が関わっている「研究」の成果について、話題提供させていただきます。新たな出会いに、期待しております。詳しくは以下、「告知」ページにて。

・「告知」
 http://edison-univ.blogspot.jp/p/blog-page_5012.html

皆さま、お気軽に参加下さい(参加無料、入退出自由のアットホームな勉強会です)。



※ 注1) 詳細は、以下参照。
・「日本知財学会 第8回年次学術研究発表会」HP
 http://www.ipaj.org/workshop/archive/workshop_2010.html


※ 注2) 縁といえば、「知財の利回り」(岸宣仁 著)を読んだり、当時のテレビ東京WBSの映像を見て、知財業界に興味を持った、という世代が、(弊社に限らず)知財業界の第一線で活躍する時代になっており、一緒に仕事をしています。

これもまた、素晴らしい縁だな、と思います。


2013年10月11日金曜日

発明塾京都第150回開催報告/京都大学「ものつくりセミナ」講義報告

若干手抜きで、今週の報告を。

1)京都大学工学部機械系「ものつくりセミナ」講義
川崎重工時代(注1)から、なんだかんだで15年ほど、毎年何らかの形で行っているわけですが、今年は「知財」を中心に、話題提供してきました。

この15年で、「エンジン設計」⇒「歯車設計」⇒「ナノテク/バイオ」⇒「知財/発明」と、めまぐるしくトピックが変わっていますが、伝えることは、いつも同じです。

・昨年の講義内容はこちら↓
「京都大学「ものつくり演習」講義報告」
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/10/blog-post.html
「京都大学「ものつくり演習」講義レポートを読んで~在るために働く(B価値)」
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/12/b.html

失敗を恐れず、成長できる環境を求めて、常に挑戦して欲しいですね。今年のレポートが楽しみです。

さて、今年は「知財」ネタを増やしました。一つは、IBM/NTTの特許交渉。もう一つは、IBM/富士通のコンピュータ戦争。

・「iPhoneとドコモと特許戦争」 週アスPlus 2013年09月09日
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/167/167921/

以下に、関連箇所を引用しておきます。
「日本最初のコンピューターが動いた1956年には、米国はもちろん、欧州の西側諸国を中心に、イスラエル、チェコスロバキア、オーストリア、ソ連でもコンピューターが完成していた。ところが、このコンピューター産業、1980年頃までに、米国以外では日本だけが生き残ることになる。その理由のひとつが、通産省によるIBMとの特許交渉(日本企業に利用を認めさせる)だとされる。 私は、担当者の平松守彦さんにインタビューしたことがあるのだが、1960年の交渉では外資法が日本側のカードだったが、1970年の交渉では、旧電電公社の特許による技術が交換条件となった。」

日本のコンピュータ産業が、かろうじて生き残れたのは、旧電電公社の特許のおかげ、ということでしょうか。IBMの攻撃をかわした、というその特許(群?)、どんな特許だったのでしょうね。

IBM/富士通については、既に紹介済みですので割愛します(注2)。


2)今週の発明塾
さて今回は、発明討議の後、原点に立ち返り「ドリル」的な問題を出しました。呆れるほど簡単な問題ですが、基本を疎かにしては、良い発明は出せませんので、日々トレーニングに励んで下さい。僕の指示する訓練を続ければ、必ず良い発明が出せるようになります。僕自身と、皆さんの先輩の出した実績が、その証明です。

では、次回も宜しく。



※ 注1)川崎重工時代は、僕自身が企画して、半年の「設計製図演習」を行っていました。以前もどこかに書きましたが、オートバイ/ジェットスキー(川崎重工の商標です)/バギーなど、ひと通りの部署から人を出してもらって、講義と設計/製図を行ってもらうという、贅沢な授業でした。僕自身は、オートバイのエンジンの部分を担当し、例によって「教科書づくり」をやりました。大学時代からやり続けているので、様々な分野の教科書づくりは、僕の「ライフワーク」の一つかもしれませんね。


※ 注2) 以下(特に注2)参照。

・塾長の部屋(51)~「IBMの知財戦略/戦える頭脳集団へ」
http://edison-univ.blogspot.jp/2013/09/ibm.html




2013年10月6日日曜日

発明塾京都第149回開催報告~「読書法/読書論」

今回は、新しい発明テーマに取り組むための、準備の討議となりました。これから12月まで、このテーマで「業界のキャスティングボードを握る」ような発明を、「ポートフォリオとして創出する」ことを目指します(注1)。

「頭脳を武器にし、知を武器にする」


ことを、これからも実践し、皆さんの能力を「実績で証明」していきましょう(注2)。



さて、今週取り上げたいのは「読書法」です。最近、社内の勉強会も含め、読書法について触れる機会が複数ありました。何度も言うのも面倒ですし、本にも書いてあることですから、立命館大学生の参考のためにも、まとめておきます。


ちなみに、僕は読んでいませんが、以下の本に、僕が実践しているのと「ほぼ」同じ読書法が、解説されているようです(注3)。


・「読書の技法-誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門」佐藤 優






僕の読書法は、時代の変遷を経て、以下のようになっています。


①さらっと読む本は、一気に読む/まとめて読む。1冊/30分程度で、関連書籍を複数、一気に読む(3冊が目安)。

②重要な本(古典など)は、繰り返し読む。また、意図的にゆっくり読む。できれば、「暗記」する。
③メモを残す。
④本は買う。


それぞれ、詳細に解説していきましょう。まず①ですが、これまでも、「ある分野について勉強するときは、まず3冊読む」などのお話はしてきましたので、それ以上でもそれ以下でもありません。


1冊/30分は無理でしょ、と思われる方も多いと思います。ポイントは2つ。


・慣れ

・時間を決める(価値を推定する)

で、いずれも訓練です。



次に②ですが、例えば発明塾では「丸島本と小川本は100回読め」、と紹介しています。もう一つのコツは、「意図的にゆっくり読む」ことです。例えば僕の場合、いくつかの本は、数年かけて読んでいるものもありますし、毎日読んでいるものもあります。あえて「英語版(というかオリジナル)」で読んでいるものもありますし、さらに、英語オーディオブックにしているものもあります。


細切れに読むことで、前の内容を思い出す必要があり、場合によっては読み返すことで、自然と理解が深まり、かつ、読み返すのが面倒なので、憶えてしまうようになります。


また、読み慣れた本は、日本語で読むと読み飛ばしてしまうので、「英語」で読むことで、スピードを遅くします。更に英語オーディオブックにすると、繰り返し聞かないと、「聞き取れ」すらしないので、その効果は高まります(憶えないと解釈出来ない)。



③については、①/②いずれの本でもやるのですが、方法が違います。①の本については、「他にない重要な内容(差分かつ本質)」を、5つ程抜き出して、箇条書きにします(注4)。


②の本については、専用のノー
(注5)を準備し、重要なところを書き写し、自分なりの解釈を入れたり、他の本の内容と結びつけたりします。


④は、ゆっくり読むために、意図的に下線を引いたりするので、買わざるを得ません。また「綺麗に読もう」とか思うと、それが気になって頭に入らないものです。

僕もかつて、図書館で本を大量に借りて読んでいましたが、後で買い直してコメントし直して・・・と二度手間なので、結局止めました。20代なら良いかもしれませんが、それ以上になると、時間制約が極端に大きくなりますから(でも、誰にとっても1時間は1時間なんですけどね)。


僕自身が、完全に独学で創り出した方法(注6)なので、これが皆さんにとって良い方法かどうかは不明ですが、いずれにせよ「自分なりの必勝法」としての読書法を、ぜひ大学時代に掴んで欲しいと思います。


それは、一生の財産になると思います。




※ 注1) 夏休みに、その下準備と簡単な演習が、出来たと思います。


※ 注2) Not 口先、Not プレゼン、という意味です。


※ 注3) 塾生/社員複数の証言。繰り返しですが、僕は読んでいませんので、内容に責任は持てません。


※ 注4) これが、TechnoProducer株式会社のメルマガにある、「本紹介」のネタになっています。


※ 注5) ノートの取り方については、別途「駿台式勉強法」と合わせて、取り上げたいと思います。


※ 注6) 他、細かいノウハウは、紹介するとキリがありませんので、又の機会に是非。



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