「発明塾®」へようこそ!: 1月 2013

2013年1月28日月曜日

塾長の部屋(34)~業務日誌と「ベカラズ集」

さて。しばらく書き込めていませんでしたので、久々に。就職活動組が増えて来ましたので、就職後に参考になるようなことを一つ。

①業務日誌をつける
②「べからず集」をつける

この2つを、おすすめします。


●業務日誌は「自分」のため

まず①は「今日どんなことをやって、明日何をやるか」を、箇条書きで良いので、まとめておく、ということです。達成したことを確認し、明日の計画を組むためです。

報告のためではなく「自分」のためです。


●「べからず」集とは~「同じことを何度も言わせるな」と言われる人へ

②の「べからず集」は、説明が必要でしょう。仕事のミス、指摘されたこと、失敗ではないけどヒヤッとしたことなど、改善したい点を自分なりにメモしておく、ということです。次の仕事に取り掛かる前に、それに目を通せば、自分なりのチェックリストになります。

「べからず集」とは「やってはいけないことリスト」ということです。

僕は、川崎時代に設計の仕事をしていたわけですが、図面について上司や関係者(現場など)に指摘された項目は、すべてメモして同じ指摘をされないように、次の図面に反映するようにしていました。
年間1000枚以上は図面を書いていましたから、いかにミスなく図面を描くか、ミスでなくとも指摘項目を少なくして、手戻りをできるだけ無くすことが、非常に重要でした(注)。たった一箇所のミスで、A0ロング(畳ほどもある図面)を出し直して、再チェックして、上司にサインを貰いに行くわけですので、その手間は結構なものです。

「べからず集」、実際につけ始めると、当然最初はかなり書くことがありますが、ある程度で無くなってきます。当時は図面も全部保存していたので結構な資料になりましたが、ノートにすれば1冊も行かないのではないでしょうか。

意識すれば、同じ失敗はしなくなる、ということです。

同じ失敗を何度も繰り返す人、同じ事を何度も言われる人(同じこと何度も言わせるなと言われる人)は、ぜひトライしてください。

自分を進化させるために、その進化の仕組みを、習慣にしておくことです。


※ 注) この話を弊社の別のメンバーにしたところ、やはり同じ事をやっている人がいました。

2013年1月24日木曜日

発明塾京都第116回開催報告

 第116回も無事終了しました。テスト中の学部生、卒論が大変な4回生は、しっかり目の前の課題で成果を出すようにしてください。それなくして、その先はありません。

 さて、今回は討議に余裕があったため、マインドマップ作成の注意点について話しました。もちろん、一般論ではなく「発明を出す」ということにおける、という限定付きです。

 重要なのは「作って満足しない」ということでしょうか。たまに、壮大なマインドマップを送ってくる塾生がいます。それはそれでいいのですが、単なる情報集め(昆虫採集)に終わってしまっては、その労力が回収できませんので(自己満足)、概念、アイデアを入れて構造化していくことが重要です。

 情報収集と、アイデア出しで、マップを分けることも良くやります。Topicのレイヤーが下がるたびに、新しいマップを作るのが理想的です。

 では、次回も宜しく!


2013年1月21日月曜日

発明塾京都第115回開催報告/塾長の部屋(33)~熱力学第二法則と経済学

 第115回も無事終了しました。少し前から、各自毎週の目標を立てて進めてもらっていますが、きちんと習慣化できるでしょうか。

 さて、今回もいくつかの発明を討議しました。ある発明を討議する際に「熱力学第二法則」のおさらいをしました。

・熱力学第二法則 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%B1%E5%8A%9B%E5%AD%A6%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E6%B3%95%E5%89%87

 以前、マックスウェルの悪魔について取り上げたことがありました。

・「イノベーションの正体見たり・・・」
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/02/blog-post_19.html

 実は、高校で習う物理学の中で、最も奥行きがあるのが熱力学、特に第二法則だともいます。例えば、僕が大学院で専攻していたエネルギー工学には、環境経済学/エネルギー経済学という分野があるのですが、そこではエントロピーに関する議論が出てきます。

・「エントロピー法則と経済過程」N.G.レーゲン
・「エコロジー経済学」J.M.アリエ

 情報理論にもエントロピーは出てきますね。ちなみに僕は、経営という行為もエントロピー制御過程だと思っています。放っておくと、エネルギーが散逸して熱死に陥る。でも、上手く境界条件を設定すれば、自己組織化が生じる。

 そんなことを考えながら、現実の世界を見ると、まだまだ科学することがありますね。

 現象を通じて理論を知り、その理論が繋ぐ別の現象を追っていく。そのようにして勉強を進めれば、すべてが繋がっていることが、理解できるでしょう。

 字面で勉強するのではなく、原理原則を理解する。それを通じて、世界を「つながり」で理解する。

 発明塾はそのようにして、今後も進んでいきます。


2013年1月19日土曜日

立命館大学「発明講義」最終回を終えて

 15回に渡る「発明講義」も、2012年度の最終講義を終了しました。皆さんお疲れさんでした。今回は、前半はクアルコムに関する映像資料を参考に、解説を加えながら

・「特許とは」
・「不況に陥った米国が、1980年台後半にどのような手を打って、復活してきたか」

大きくこの2点について学んでもらいました。後者の方は、これからの日本がとるべき道、に対するヒントです。

 後半は、

・仕事での成長と成功なくして、充実した人生はない。
・組立産業の付加価値の極端な低下(iPhoneの組立コストは、端末価格の1%)
・製造業から金融業へのシフト(トヨタ、ホンダの利益の80%は金融)

について、話しました。一部は、京都大学での講義内容そのものです(注)。付け加えたのは、

・「大学生である君達にが見えているのは、世の中のごく一部。それですべてを判断せず、自分が知らないこと、知らない世界がまだまだあるという前提で、広がりを持った人生を設計してほしい、可能性を制限してしまわないようにして欲しい」

というメッセージです。

 最後に、授業アンケートから、感想を抜粋します。

・「自分が知らないことがたくさんある、という一言が一番印象的」
・「最高でした。」
・「新しい、の意味がわかるようになった。もっといいもの、ではなく、今までにないもの。」
・「もっと勉強したいと思った。危機感を持った。」
・「今回の講義はとてもためになった。悩みが深まった。」

 それぞれの目標に向かって、精進してください。

 では、またどこかで必ずお会いしましょう!

 Anyday on the Road !


※ 注) http://edison-univ.blogspot.jp/2012/10/blog-post.html


2013年1月11日金曜日

立命館大学「発明講義」最終回を迎えるにあたり~何を学ぶべきだったのか


 いよいよ、立命館大学での「発明講義」も次回で最終回です。本日全Grのプレゼンを見ましたが、まだまだこれからですね。もちろん、よく頑張ったことは認めますが、努力と結果を分けて評価する、のが僕流です。

 さて、そもそも本講義を通じて、何を学んで欲しかったのか、おさらいしておきましょう。講義中に話したことが大半ですので、まとめの意味も兼ねて。


1. 一つは、解の多様性を追求すること。

 これは、高校数学で教わるはず(注1)。それを、様々な問題に当てはめる訓練を徹底する。他の人の解、考えから学ぶことは多いが、最終的には、多様性を自分でも生み出せるようになること。

 サンデルも全く同じことを言っていたが、結局は、人間は社会的な生き物であり、それが強み。答えが一つではない様々な問題を乗り越えるには、いい議論が必要。いい仲間とは、いい議論が出来る相手。それを探すのも、また、高校・大学時代にやるべきこと。


2.そして、いい議論は、いい質問からなる。

 大事なのは、質問は何のためか、誰のためか、ってこと。


質問は「相手のため」である(注2)。

 だから、相手がその質問について考えることが、大きなブレイクスルーを産むような質問が、いい質問。すくなくとも、それについて誰かが答えることで、進歩もしくはそのヒントが生まれる質問がいい質問。自分が知りたいこと、もしくは揚げ足をとって(頭の良さ?を見せびらかして)点数を稼ぐことが、質問の目的ではない。

 世の中には、質問に答えるのに時間がかかる人もいる。一向に構わない。頭の「速い」タイプではなく「強い」タイプだ。そういう相手には、矢継ぎ早の質問を浴びせてはいけない。じっくりと、一緒に考える。そのための質問を考える。それが「質問力」。ファシリテーション。

 いい仲間とのいい議論、それに必要な「質問」能力。発明塾でも、立命館「発明講義」でも、それがテーマの一つ。


(画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
Amazonのプログラムを利用して画像を引用することにしました。
この手の本は、実にいろいろありますが、
まずはこの本。



3.もう一つは、課題を決めること。

 
 この訓練は、現状、大学でしかできない。何を解決すべきなのか、何が価値ある問題なのか。解決の価値は、課題で大半が決まる。

 中学校では、決められた問題を、決められたように解く。高校では、決められた問題を、様々な方法で解く。大学では、問題を決めることを学ぶ。社会では、それを実践し、成果を出す。


4.あともう一つ。徹底的に考えること。

 様々な視点から考えること。自分一人の視点ではなく、他人の視点を持つ、学ぶこと。それには他人と議論し、その批判を受けて、さらに考えることしかない(注3)。


なんでそんな質問が出てくるのか(注4)。

 相手の思考回路を探る。自然と、他人の視点で自分のアイデアを見る(批判する、質問をする)事ができるようになる。


5.他、結びの言葉に代えて

 「大学時代に、絶対に勉強しておくべきことはなんですか?」 と聞かれたら、多くの場合、僕は「勉強法」と答える。一生使える「頭の作り方」を大学時代に身につけて欲しい。

 そして、他に学んで欲しいことの一つに「チームワーク、リーダーシップ、役割分担、フォロワーシップ」特に「組織で創造的になる方法」がある。あと、「情報分析」も、しっかり身に付けてほしい。これは「仮説思考」と大いに関係がある。

・例)特許情報分析セミナー http://edison-univ.blogspot.jp/2012/10/blog-post_17.html

 他、「人の考えないことを考えること、答えが一つではないことを考えること」もある。「このとおりやったら正解ですよ」というのは、高校で終わり。社会には唯一の解は存在しないし、答えにたどり着く方法も一つではないし、その方法も、多くの場合、だれも教えてくれない。自分で考える訓練をすることが、大学でやるべきことだと、僕は考えます。

 で、最終講義は、僕から皆さんへのメッセージと半分、クアルコムという世界最強の企業の紹介半分、とします。



※ 注1)僕は「甲斐塾」の数学の講義で、徹底的にこれを教わりました。よくもまぁ、こんなに様々な解法を思いつくなぁ、と思うぐらい、生徒が次から次へと前に出て、黒板にびっしりと別解を書き綴る様は、壮観です。僕はあまり参加出来ませんでしたが。

※ 注2)これは、僕と社内メンバーの一致した意見。別に摺り合わせたわけでもなく、学生から質問を受けて、自然と同じ答えが口をついて出た。

※ 注3)そのために一つ「言い逃れや言い訳をしないこと」が重要。意見は素直に受け入れ、じっくり練り直す。批判や質問を、次に活かすためには、「言い逃れ」は障害にしかならない。その場を上手く繕わないことが、君たちを成長させる。
 そして、繕わなくて済むように、事前に「ありとあらゆる角度から」考え抜くことが、大事。批判されて沈没したくなければ、考え抜くしかない。

※ 注4)リバースエンジニアリング。これができる生徒が伸びる。



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2013年1月10日木曜日

発明塾京都第114回開催報告

 なんだかもはや、通常の回の報告は意味をなさなくなっているが、回数カウントのために(笑)報告しておきます。

 今回は、年末年始を挟んだだけあって、ほぼ全員が何らかの作業結果を持ち込むという、非常に好ましい状態でした。若干討議時間が不足気味かも知れないが、それぐらいが丁度良いと思っている。もっと議論させろ、と言えるぐらい準備してきて欲しい。

 次回まで何をしてくるのか、自分で目標を宣言して、進めてください。

 では。 Chao!

2013年1月6日日曜日

塾長の部屋(32)~「目標の立て方」と「管理」

 さて。
 
 新年早々、恒例の作業の一つに「目標」を立てることがあります。塾生全員の目標が出揃ったところで、目標の立て方について復習をしておきましょう。

 僕の場合は、目標管理のツールは「フランクリン・プランナー」(注1)を使っています。別にこれに限らないと思いますが、個人的にはここ10年ほど愛用しています。今のところ、自分にとってこれを超えるツールが見当たらないので、しばらくは使う予定です。

 あとは「5年日記」(注2)です。毎日5行100文字程度の日記が、5年間つけられるようになっています。同一日付の出来事を最大5年分振りかえれる、のはなかなか重宝します。これも10年以上使っており、3冊目に突入しています。

 目標の立て方は、大きく分けて2段階になります。①結果目標(年間) ②プロセス目標(週ごと) です。例えば「①今年は4件の発明を特許出願する」「②そのために、毎週XX時間の発明時間を確保する(できれば毎日XX分行う)」のような形です。

 よく結果目標だけ立てる人がいますが、実践するための具体的な「時間」計画に落とし込まないと、多分達成できません。また「XXについて完璧に理解する」のような、測定不可能な目標も、最終目標としては避けたほうがいいでしょう。達成感が得られないからです。

 「プロセス目標」の最小単位は「週ごと」が良いでしょう。ほとんどすべての人は、一週間をひとつのサイクルとして生活していますので、ここに「時間」を組み込むのが、一番無理がありません。一週間のスケジュールを予め組んで繰り返すことにしても良いですし、毎週土曜日か日曜日に、次の一週間の「時間」計画を立てても良いでしょう(僕はこちらのパターン)。

 会社勤めの人は「1ヶ月」の目標を立てることが多いですが、僕はあまりおすすめしていません。1週間の積み重ねが、1ヶ月になる、という風に組む方が良いでしょう。1週間は必ず7日ですが、1ヶ月は日数も違いますし、生活リズムとも、かみ合っていません(注3)。

 さて、年末年始に「フランクリン・プランナー」を用いて「ミッション・ステートメント」の見直しも含めた、振り返りと目標の見直しを行ったのですが、偶然、手帳を使い始めたころの「一週間コンパス」(注4)が出てきたので、参考までに可能な範囲で転記しておきます。

 10年ぐらい前のものですので、30才頃、ちょうどコマツで新規事業開発をしていた頃のものです。当時、僕が置かれていた状況を如実に反映したものになっています。現在は全く異なることを書いていますので、過去のものと見比べることは、自分の今後を考える上で非常に参考になりました。

・役割「リーダー、コーチ」
 エゴを捨て、他に求めず、明るく、手本となり、他者を励まし、手助けをし、他者の能力を100%引き出す。

・役割「自立者」
 自立する。チャンス、努力、計画、準備と実行。

・役割「家族とパートナー、仲間」
 割愛。。。

・役割「エンジニア」
 IntelligenceとTechnology、情報分析と意思決定

・役割「読書家」
 古典、名著、スキルUP、文化と歴史、流行りを捨て、持たずに読む。

・役割「プロフェッショナル」
 顧客への誓約、プロとしての倫理とペルソナ、必要なスキルの洗い出しと修得

・役割「教育者」
 互いに教えあう仕組み、人つくりをキャリア後半の中心に

・役割「求道者」
 自己の内面に隔絶されたコアを持つ、自己との対話のツールとしての読書、思索の相手と場を持つ。

 自分が目指すところは何処か(Where, What)、それにたどり着くために毎週何をするか(What, How, When)、と落としこんでいけば、着実に成長します。

 皆さんもぜひ、今年の目標を達成するために、参考にして「毎週」の計画を立ててください。

 では!


※ 注1)「7つの習慣」S.R.Covy とセットのツールです。

※ 注2)いろんなメーカーから出ています、特にこだわりはありません。

※ 注3)1ヶ月毎に行うべきなのは、売上管理(もしくは家計管理)ぐらいでしょうか。

※ 注4)「フランクリン・プランナー」に付属の、一週間のおおまかな目標管理をするためのツール。結構重宝します。使い方はいろいろ有るようですが、僕は目指すべき方向を忘れないための、まさに「コンパス」として使っています。


2013年1月1日火曜日

塾長の部屋(31)~21世紀を「記した」本

 あけましておめでとう。

 年頭の挨拶にかえて、21世紀を舞台にする塾生さんに、20世紀から21世紀に時代が変わったことを象徴する技術革新について、2冊の本を紹介します。もちろん、ベテラン組にはすでに紹介済みの本です。

①「21世紀の挑戦者 クアルコムの野望」
②「クレイグ・ベンター自伝」

いずれも、2000年前後で大きく発展を遂げた技術革新をリードした「人達」の、歴史です。21世紀は、現在のところ「ICT」と「生化学」の時代です。

 ①はすでに、立命館大学での特別講義なども含め、度々紹介済みですが、無線通信の巨大企業に成長したクアルコムに関する本です。CDMA技術がなければ、現在の携帯データ通信はありません。自宅裏?の馬小屋で創業したベンチャーが、世界の無線通信を支配するようになるまでの物語です。

 ②も、一度紹介していますが、ヒトゲノム全解読という偉業に一人で臨んだ天才学者/起業家の物語です。ショットガン法、という天才的な方法を発明し、政府(米国)の支援なしで独自にヒトゲノム全解読に至ったというのは、ただただ驚きです。

 後者については、その中身をよく知らずにニュースを聞き流していましたし、前者については、よく考えたら「関西セルラー」で始まった僕の携帯電話生活は、常にCDMA技術とともに在ったわけで、20世紀が21世紀になった瞬間、を中身をよく知らずに体験していたということかも知れません。

 いずれも、10年以上の長い時間を経て、人類に大きく貢献している発明の物語です。続きを書く皆さんにも、きっと参考になると思います。

 というか、参考にしてぜひ続きを書いて欲しい。

 では、今年もよろしく。