「発明塾®」へようこそ!: 6月 2013

2013年6月29日土曜日

発明塾京都第136回開催報告~なぜ「完璧」を目指せというのか

第136回も無事終了しました。参加メンバーは、お疲れさんでした。

ある程度の在籍歴のメンバーの大半が、この3ヶ月で何らかの発明に到達したようですので、後はしっかりSRに落とすようにしてください。いつも言うように、この過程で、発明の本質が明らかになることもしばしばです。

A4で1-2枚程度の文章では、自分の発明が何なのか、自分で把握することすら覚束無いと思いますので、しっかりと標準的な枚数を、書き上げるように。僕がいつも書いているぐらい書かないと、伝わらないと思いますけどね、実際。

今回の討議の反省点は、以下でしょう。

①自分で考えきれていないものを討議に持ち込んでも、余計に混乱する。
②他の人に何をどうして欲しいのか、これを間違えると、お互いに時間を無駄にする。

これは、発明にかぎらず、「プロ(注1)」として「仕事」をするのに必要最低限のリテラシーです。

「発明塾に行ってました」→「発明塾も大したこと無いな」

とならないように、今一度基本的なことを徹底しておきます。


僕が共に活動する人たちに求めることは、物凄くシンプルです。今回の議論を通じて、3つにまとめてみます。時代錯誤との批判を承知で、敢えて書きます。そう思う人は、塾に来なければいい、たったそれだけですから。

①「自分なりの完璧」にしてから、次の工程に渡す。常に完成度を追求する。仕事において最大限創造性を発揮し、自己実現(物事/自分を、その在るべき姿に、自らの手で在らしめる:B価値)を目指す。

②どんな細かい部分にも、理由/根拠をもっている/確認する。安易に前例主義に陥ろうとする心理的バイアスを、常に疑い、回避する。

③「確認」「チェック」という言葉を曖昧に使わない。自分なりの確認/チェックの方法を持った上で、誰に何を確認して貰う必要があるのか、具体的に依頼する。そうでなければ、確認依頼は「責任回避」にしかならない(あなたも確認しましたよね、みたいな)。不毛で無駄な作業。クリエイティブとは程遠い。


上記考え方の基になっているのは、僕自身のカワサキ(川崎重工)での、オートバイのエンジン設計者としての経験です。

企業や担当商品により異なりますが、カワサキのオートバイ部門では、開発工程の全てに設計者が責任を持つことになっています。

機種によっては、商品企画段階から、課長係長クラスは先行調査で世界中を飛び回りますし、通常は、量産ラインで担当するオートバイが製造されて、販売されてから初期不具合が落ち着くまで、走り回ることになります。神戸港に不具合改修に行く、ということもあります(教育的配慮と人手が足りないのと、理由はその時々で色々あると思いますが)。

なんでそうなるかという理由は、たった一つ。

「設計図面に名前が書いてあるから」

です。過去には、

「図面に名前書いたら負け

と豪語した方もおられます(笑。もちろん冗談/皮肉です。書いたからには、全責任を負え、お前にその覚悟がないなら、設計なんかやるな、安直に図面を出すな、ということです。

何が「負け」かというと、

その図面を見て、ありとあらゆる部署から、質問や相談や不具合対応、コストから生産性、生産能力や部品メーカーの社内基準に至る、ありとあらゆる理由に起因する設計変更要望が、その図面の「最初の署名者」に寄せられる(注2)

からです。決して「最終署名者」(=大抵は部長)では無いところが、非常に重要です。「その図面を実際に担当した人間」が、総ての責任を負うことになります。

僕は、「素晴らしい職場だ」と思いました。だって、やりたい放題じゃないですか(笑

気を抜いて書いた図面に対して、よくあるダメダメなQAを挙げておきます。大抵、電話です。

‐(製造部門)「なんでこの図面のここの許容差は、‐XXから+YYなんですか?なんか理由あるんですか?」
‐(設計者) 「いやー、ZZZという機種と同じなんですけど、なにか問題有りましたでしょうか。。。」

即アウトです(笑。 問題なければ電話はかかって来ません。僕の中では、

「39工場品管のAA課長から電話ですー」
「19車組(車体組立)品質管理のBBさんから電話ですー」

の呼び出しは、要注意でした。品質管理(品管)から設計者へ、電話がかかってくる。大体ロクな要件はありません。

「お宅が く す う ら さん?」

という慇懃無礼な確認から始まって、

・図面がおかしいのではないか?
・図面通りに作れないから、図面を変えてくれ
・図面通りに作れなかったものが、使えないのか確認して欲しい
・そもそも、この図面のこの寸法にどんな理由があるのか教えて欲しい
・だからやっぱり、図面がおかしいのではないか?
(→お前、なんも考えずに図面書いてるやろ!)

こういう質問風な依頼、非難の嵐である。理路整然と、かつ淀みなくその場で全てに答えられないと、図面を変えるハメになる。まぁ、もともと「理由なく」図面を書いていたのだとすると、当然変えざるをえないと思いますが。こちらに理がなく、相手には理が在るわけですから(作れない、このまま使ってくれたら、安くなる等、図面を変えてくれという口実は、無限に存在する)。

僕自身、上司がOKでも品質管理のとバトルでNG、みたいなことを何度か繰り返すうちに、

「結局自分で全て考えぬいて、図面の寸法一つ一つの理由を徹底的に説明できるようにするしか無い。というか、理由ない数字や線を、一文字、一本でも書いたら負け。そもそも、それが『設計』という仕事。線を引くことが設計ではなく、その線を引く根拠を考え、検証し、実証するのが設計」

ということに、至りました。同じようなことは、部品メーカー・購買部門/製造ライン/品質保証部/試作部門/試験部門などありとあらゆる所からの問い合わせで、生じます。実際開発が始まると、設計者は昼間は電話対応が仕事で、夜が設計の時間、という笑い話のような生活になります。

購買部門や製造ラインは「ここの寸法を変えてくれたら、XX円安くなる」、品質保証部からは「この材質はVVの不具合の可能性があるが、なんで使っているのか」、試験部門からは「図面通りできているのに、性能が出ない。図面がおかしいのとちゃうか?(注3)」

まぁ、こういう話のオンパレードである。

自分の書いた図面の隅々に、徹底した計算や思考に基づいた根拠がなければ、とても耐えられない仕事、といえるかもしれない。

ちなみに僕は、この「設計」という仕事が大好きでした(たぶん今でも)。隅々まで考える、ということ自体がまず楽しく、また、その責任の裏返しである権限、つまり、すべてに根拠が有れば、世界中の人が、自分の図面通りに物を作って世の中に出してくれる(協力してくれる)、ということを、本当に心から楽しんでいました。

設計者に向いている人は、そういう人かな、と思います。そういう人が多いと、いい商品ができます。僕は経験しました。

おさらいしましょう。

①自分なりの「完璧」の追求
自分の名前が入った自分の仕事、であるからには、上司がどうとかではなく、自分なりの完璧を追求する。そうでなければ、製品品質も、自分も、自分/職場の仕事のプロセスも、いずれも向上しない。向上する仕組みを織り込まない仕事は、堕落への道である。現状維持は、撤退なので。

②すべてに「理由」があるか
すべてのことには理由がある。理由なく仕事をすると、相手に理由があったときに負ける。常に仕事には相手(お客さんかもしれないし、下流部門かもしれないし、上流部門かもしれない)がある。相手の視点ですべてを見直し、そこに、「それがそうでなければならない、どのような理由が存在するか」一つ一つ確認する。
これを「確認」「チェック」と呼ぶ。客観的視点である。それを、積み重ね、精緻化し、プログラム化することで、「客観的な」仕事の完成度が上がる(①につながり、①を超える)。

③「チェック」とはなんぞや
つまり「チェック」してもらう、というのは、結果を診てもらうことではなく、その思考回路、自分の確認のアルゴリズム、プログラム、根拠を確認してもらうことである。自分なりの完璧と、それまでの指摘や経験を踏まえた「そのときの自分」なりの客観の徹底が有ってこそ、人に見てもらって意味がある。また、
「自分はXXのようにチェックしたが、ZZZの観点で、特にYYYを重点的に見て欲しい」
と言えなければ、プロの仕事ではない。単なるお勉強か、責任逃れ(あなたOKって言いましたよね)である。
君は、その仕事を「自分で」完成させたいと、本気で思っているのか?ということになる。これ以上はできませんごめんなさい、はプロではない(たとえそれが給料であったとしても、お金をもらう資格は無い)。

当時のカワサキには、僕と同じように、ネジ一本の長さに至るまで根拠を確認しながら、優れたオートバイを作ろうという意欲にあふれた若手設計者が、少なからず存在しました。今思い出しても、素晴らしく楽しい職場でした。

設計者として、プロとして力を付けたい人は、このような職場を目指して就職活動すると良いでしょう。年収とか、職場の「雰囲気」(そんなもん聞いてどうする?)とか、勤務地とか、有給休暇の取りやすさとかではなく、

「どれぐらいプロな人がウヨウヨしているか」

を規準として(そして質問として)、就職を考えてみてはどうでしょうか。ちなみに僕自身、社内をそういう「プロで埋め尽くしたい」と思って、現在も採用活動を続けています。

脱線しましたが、まずは3ヶ月の第1ターンが終わりましたので、各自しっかり自分の課題を抽出し、改善出来るように次の3ヶ月の目標(結果目標と、プロセス目標)を定めてください。


P.S.
3ヶ月の振り返りとして、あと2つ追加しておきます。

①「成長する塾生は、自分の理想をもっている」
例えば最もわかりやすいのは、理想のSRはどう在るべきか、の具体的なイメージ、もしくは手本を持って、それを常に見返している。

②「同じ失敗を繰り返す/進歩しない塾生は、言われたことをブレークダウンできず、ただ時間だけ掛けている」
もっとよく調べてきて、と言われた場合「もっとよく調べるとは、具体的にどういう作業なのか」と、具体的作業(手続き、動作)にブレークダウンしないと、「なんとなく長い時間調べ続ける」で終わってしまう。
「もっとよく考えて」「もっとよくチェックしてきて」に対しても同じ。プログラムを書く、と考えればわかりやすい。


注1) プロの定義は、別所にて。

注2) だから最初は適当に出しとけばいいんだ、という方もおられました。しかし、製品の性格上、人の命を預かるものなので、少なくとも僕はその考えには賛同できませんでした。もちろん、そういう考えで仕事をした事は、僕は一度もありません。
たとえ上司が「そんな寸法は適当でいい」と言ったとしても、現場から根拠を求められるのは確実ですので、自分なりに根拠を持って図面を出していました。寸法計算で上司とモメても「最後に責任問われるのは、図面に署名している僕ですよね」と言って押し切ったことも、何度もあります。

注3) 以前書いたと思いますが、製造ラインの検査員が見逃した不具合を、検査員がその部品をテーブルに置くときの、たった一度の「音」で見抜いたことがあります。「何かが違うはず」という信念が、この時の不具合部品の発見につながりました。当初「図面が間違っている」と散々非難されましたが、最終的に「製造ミス」+「検査ミス」という極めてお粗末な結論となりました。
ベテラン検査員が何人も寄ってたかって、20回も30回も検査して見抜けない不具合を、入社1年目の設計者が、たった一つの「音」で見ぬく、ということも、根拠を持って設計をしていれば、可能なのです。向こう以上に、こちらがプロだった、ということだと思います。
それ以降、仕事がやりやすくなったことと言ったら。。。(笑

2013年6月23日日曜日

立命館大学MOT大学院 第三回講義を終え~「大学教育をどうすべきか」特に「累積思考量」

私が非常勤で担当している、立命館大学MOT(技術経営)大学院での講義、「先端科学技術とビジネス」も、早いもので第三回が終了しました。全8回ですので、次回で半分が終了することになります。

少し早いですが、前半戦を振り返っておきたいと思います。その理由は、第三回のゲストの方からのお題が「大学教育をどうすべきか」という、問いかけだったからです。


受講者の方には、社会人の方も含まれますが、これに関してはそれぞれお考えいただくことにしておりますので、私の方で少し考えたことを、来年(と下期)に向けて整理しておきたいと思います(注1)。




● 大学に求められるのは「課題の設定」が出来る能力の開発


これは常々言っていることで、講義後も受講者から質問があって同じ事を言いましたが、


・中学校では「与えられた問題を、教えられたとおりに解く」ことを学ぶ

・高校では「与えられた問題を、複数の方法で解く」ことを学ぶ
・大学では「問題/課題を発掘/創造/設定する」ことを学ぶ
・社会人は「課題を設定して解くことで対価を得る」必要がある
・経営をするなら「それを、組織的に継続できる」必要がある

ということになります(MOT=技術経営、ですので、経営まで入れておきます)。表現の問題はさておき、皆様に大枠異論がない範囲の、至極当たり前のことだと思います。



講義では「オンリーワン」というお話を頂きましたが、「課題設定(何を解くか)」「解き方が複数ある(どう解くか)」「対価(解いて欲しい人がいて、自分にしか出来ないか)」の組み合わせ(因数分解)かな、と思います。



僕がこの一連の講義で目指していることは、受講生が「課題を発掘」して、「自分なりの答えを出す(解く)」ようになることです。MOT大学院ですので「大学→社会」を、繋ぐステップを設計している、ということになります(注2)。


もう一つ、「現場を知る」ということも、あるかもしれません。論文読んで、、、という経営の勉強もありえますが、OBではなく最前線で活躍しておられる方々にお越しいただき、生の声を聞き、そこから自分なりに課題を見出し(仮説)、それを提案し、解く。


いわゆる「大学院生」が就職し、4-5年経つと、間違いなく「これ」が求められると思いますので、それに応える実際的な教育は必要だと思っています。



(画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
例によって絶版で失礼します。
1999年頃に読んだ本です。
ブルントラント委員会」と呼ばれた
「持続可能性」についての委員会報告書です。
「Our Common Future」、よい題名ですね。



● 圧倒的に足りていない「累積思考量」


そのためにも、もう少し、


・時間をかけて考える

・問題解決手法「自体」を、自分で考える(自分用に最適化する)

というところに比重を移したいと、思っています。理由は、発明塾を通じて、


・学生の「累積経験、思考」が圧倒的に足りていない。一つのことについて、じっくりと考える場が必要。

・「パターン暗記」的に手法をマスターしても、なにも結果(塾の場合は発明)は出ない。

ことが判っているから、です(注3)。



おそらく来年度の本講義は、


・ある企業の新規事業について、4回程度の時間を割いて、複数の観点から、その課題を発掘し、自分なりの解決策を考える(ケーススタディ)

・その上で、最前線で活躍されている方と、建設的な討議を行い、課題発掘と解決提案を行う

という形になるでしょう。現在既に準備を進めています。




● 「アウトプットオリエンテッド」「第三者評価」「自分に合った”結果が出る”手法の確立」


また、下期の「マーケティング・リサーチ演習(発明講義演習)」については、これまでのパワーポイント講義を廃止し、


・演習を行いながら、必要な内容について、その場で講義を行う(ホワイトボードとインターネット)

・講義を通じて、自分で「発明法」のテキストをまとめる

形にします。これも、発明塾@京都で現在行なっている手法、そのものです。大学の講義では「単位を与え」なければならないため、様々な制約があるのですが、それを乗り越える教育手法の目処がつきました。


本来、理想的な大学教育は

・「単位は廃止」
・「アウトプットを第3者が評価して、普遍的に通用する評点/称号を与える」
という形になると思っています(だから「発明塾」はそうなっている)。

・「教師が、学生を評価する」→「世の中に評価される」

・「テキストが有って、それを学ぶ(憶える?)」→「自分に合った、一生使える方法論を作る」

いずれも、社会にでる前に、やっておきたいことです。だって、そもそもテキストがあるなら、「なんで講義に出なくちゃならないの?」ということに、普通、なりますよね(家でテキストを読んでおけば良い)。


立命館大学での講義も、少しづつ「発明塾」に近づけられればよいな、と思っています。





※ 注1) 現時点では、私は非常勤で講義を担当している立場ですので、あくまでも私個人の意見となります。立命館大学を代表する意見でも、将来に向けてその変化を確約するものでもありません。


※ 注2) 実際には、当初想定していた以上に、社会人大学院生の方がおられますので、今後見直しが必要と考えています。


※ 注3) もともと、個人的経験の範囲で自明でしたが、多くの学生でデータを取り、確信を得ることが出来ました。





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2013年6月20日木曜日

発明塾京都第135回開催報告

第135回も、無事終了しました。

今回は、各自の発明を一つづつ討議しました。もうすぐ締め切りですので、しっかり仕上げましょう。4-6月で各自1件の発明を出す、という目標を立てて進めて来ましたが、少なくとも年単位で在籍しているメンバーは、1件は出せる目処が付いたようです。


非常に大きな進歩だと思います。


期限付きの、具体的な目標を立てることの重要性、ヒラメキに頼らず、合理的なプロセスに従って進めれば、必ず期間内に優れた発明が出せることを、自ら証明し、実感してもらえたと思います。



講義の部では、発明を見直すためのフレームワークとして、


・技術進化の思想(モジュールからシステムへ)

・「事業戦略と国際標準化」(小川先生の著書)

について、説明しました。出てきた専門用語などは、各自で調べ、またそれらを統合して、自分なりの「発明論」としてしっかりまとめてください。



この、


「調べる」と「統合」


が、学びの本質です。



「誰かが話したこと」「書いてあること」をそのまま憶えることは、学びでもなんでもありません。


では、次回もよろしく。


2013年6月16日日曜日

塾長の部屋(44)~「集中」の技法

もっと長期的かつ哲学的なことを、色々書きたいと思っているのですが、夏休みの発明活動に支障が出ないように、やや足元のことを書いておきましょう。

塾で、「発明が出る」学生と「出ない」学生。何が違うか、なぜ「出ない」か。


一つは、

「よくわからないので、止めます」=ゼロリスク嗜好/思考

のタイプ。いやいやいや、「よくわからないから」(発明を)するのであって、結果がわかっていることを、する必要はない(再発明のムダ)。ダメならダメ、なんでダメなのか、しっかり考える必要があります。同じ過ちを、何度も繰り返すタイプ、と言えます(結局、以下につながる)。


もう一つは、「極めて効率が悪い、タイプ。これには更に二つある。

①同じ事を何度も繰り返す(作業)
②考えずに「悩んで」いる(作業以前)

どれも結局は「おなじところを何度も何度もウロウロしている」という意味では同じですが、それを「作業」のレベルと、「作業以前」で分けておきます。


①同じ作業を繰り返すムダ
たとえば、特許公報を分析的に読む際に、読むべき場所はほぼ決まっている。請求項、図面、実施例、効果、などである。これらを有機的に結びつけて思想を抽出する作業が、「権利情報を技術情報に変換する(注1)」作業である。

であれば、最初から該当する公報を、ブラウザのタブで複数表示しておき、それぞれ必要な箇所に表示を合わせて、タブで切り替えて見るべきでしょう。

都度「スクロール」して見ていては、時間がいくら有っても足らない。

「作業」をいかに効率化するか、これはなにをするにせよ、最低限必要なことである(受験勉強で、しっかり身に付けるはずですけどね:注2)。


②考えずに「悩んで」いる
詳しくは「イシュー・・」(注3)を読んでいただきたいですが、この手の人は、「その人が与えられた時間で、あきらかにその人には直接答えが出せない質問を自分で立てて、それに答えようとしている」ことになります。

前述の「イシュー・・」では、10分だか15分だか考えて、何の進展もないのであれば、それは「悩んでいる」可能性が高い、と書かれています。


解決策はいくつかありますが、

・「人に教えを請う」

が一番わかり易いでしょう。もう一つは、

・「答えの出ない問題」→「答えの出る問題」に因数分解→「結果の出る作業」に変換

です。逆に、この思考が徹底的できている人は悩まない。例えば発明作業で、

「この発明を因数分解して」

と問いかけて、進む人間(出来るとは言わない)は、

「まず機械的に言葉を抜き出す」→「妥当かどうか、意味を考えて確認」→「おかしい部分をやり直す」

と、「作業(マシーンになる部分)」と「判断(人間的な要素)」を分けている。つまり、

「漠然とした思考(答えが出ない問題)」=「作業(必ず結果が出る)」+「判断(厳密な思考=答えが出る問題)」

という回路である。

「判断しながら」「作業をする」というのは、ワーキングメモリを食いすぎるという意味でも、極めて効率が悪い。


例えば、文章が大量にうまく書ける人は、

「まず書いて(もしくはネタを集めて)から」「後で見直す(妥当性の判断)」 

など、作業と判断を分けて、確実に執筆が進むようにしている。「朝早起き(5時おきなんたら、とか色んな仕事術本が出ていますが)」とかは、おそらく一切関係ない。


「考える」から「作業」を分け、また、「できるだけ作業に変換」して、その作業を「できるだけ効率化」することを考える。

「発明が遅い」(仕事が遅い)

といつも言われる人は、身につけてください。この習慣は、一生、役立つでしょう(注4)。



※ 注1)「知的財産戦略」丸島 参照

※ 注2)実は、中学/高校レベルの数学や物理の知識も「使わずに」、発明をしようとする学生も散見される。よほど大学で「スポイル」されているのだろうなと、推測は付くのですが。僕はこの手の学生には、非常に厳しい。知っている知識をフル活用せずに、勝負に挑んで勝てるはずはない。

※ 注3)「イシューからはじめよ」安宅 参照

※ 注4)これができると、「なにが任せられて、何を自分でやらないといけないか」が明確になるので、仕事が効率的になる。部下が付くようになると、ここで差がでます。「仕事を、人(外部も含む)にうまく頼めない(=仕様書・企画書が書けない)」上司にならないように、今のうちに身に着けておきましょう。
発明提案書は企画書であるため、この能力は、発明を効率よく行う上で欠かせないと、僕は考えます。実際、これができていない人は、発明提案書が書けていません。

2013年6月13日木曜日

発明塾京都第134回開催報告

第134回も無事終了しました。

今回は、ある塾生発明提案書の論理展開(ロジック)の確認、および、先行技術の分析を行いました。発明提案書は、A4で20枚程度になるわけですから、論理が破綻していては、誰にも読んでもらえません。評価以前の問題です。

日本への特許出願の重要性は益々低下していますから、最初から英語圏への出願を視野に入れて、「英語にしてもおかしくないような、接続詞、因果関係の明示」を、行なっておきましょう。

3時間の討議時間中、集中力を切らすこと無く発明や討議に没頭することも、非常に重要です。体力不足は問題外ですが、他人の発明なのでと、他人事で臨むのは時間の無駄です。

「必ず場に貢献する」

これが、発明塾に参加する人の義務です。それではじめて、学ぶ権利が得られます(注1)。

また、その日のうちに参加した議論を、自分なりに消化し、まとめておくことも重要です。

「寝て起きたら別人」

70%以上忘れます。

今回、ある塾生が「先行技術の分析」の重要性を痛感し、僕が分析してみせたある特許の内容を、余さずメモにしてくれました(注2)。僕がいつも用いる手法を、繰り返し訓練して身につければ、またく初めての分野でも、自由に発明を生み出すことができます(注3)。

メモを見て、彼の意欲と能力がわかりました。

今後の活躍に期待したいと思います。

では。


※ 注1) 「7つの習慣」主体性を発揮する、参照。

※ 注2) 「発明塾式」先行技術分析法、による。

※ 注3) 塾生が証明してくれています。

2013年6月11日火曜日

無線通信で世界を変えた「クアルコム」に学ぶ~「特許戦略セミナー」定点観測とその反省

本日、通算で何回目か忘れましたけど、かれこれ3年越しで実施している「特許戦略セミナー」(弊社内通称、クアルコムセミナー*)を実施して来ました。

* クアルコムについては、こちらの記事、および、こちらのページ内の該当箇所を参照
* クアルコムの取り組みに学ぶ「発明研究所のすすめ」も参照

多少のブラッシュアップを経ていますが、コンセプトは基本的に同じであるため、僕にとっては「特許戦略」に関する「定点観測」の場となっています。


クアルコムのビジネスモデルは、知れば知るほど秀逸です。「知財は交渉力」と、ある企業の方がおっしゃっていましたが、それを「地道」かつ「徹底的」に実践している企業、と言えます。



しかし、3年前に私がこのセミナーを始めたときは、


「弊社はモノを作る企業ですので、お話いただいたような戦略は、一切関係ありません」(いや、クアルコムも無線技術と半導体チップを開発してますけど・・・ファブはアウトソースですが:注1)


「弊社は、パテントトロールには、なれません」(クアルコムは、いわるゆるパテントトロール=過激な交渉・訴訟を仕掛けてくるNPE、とは違うと思いますが・・・)


というような反応が大半でした。なんでそうなるの?と思いつつも、まぁ話し方・取り上げ方の問題なのかなと、いくつか事例を追加して、試行錯誤を繰り返していました(注2)。



しかし、3年という月日は随分人を変えるようで、そう言っておられた方々からも、


「ようやく意味が理解できました」

「一つの究極の戦略ですよね」

という意見が返ってくるようになりました。少し安心いたしました(笑。



この「3年」という時間の読みは、実はほぼ予想通りで、これまでの経験上、私が目をつけた分野は3-5年後に、世間的に「受け入れられる」ようになります(理由は、わかりません)。


特許情報分析を用いた技術マーケティング」の時も、そうでした。今では当たり前のこの考え方ですが、当時は、


「特許情報なんて、嘘ばっかり書いてあるんだから、分析しても何もわからないんじゃないの?」


という意見が、大変多く寄せられ、閉口しました(その企業の方々は、特許に嘘ばっかり書いておられるのでしょうか?笑)。あくまでも「私はその情報を活用して、ヒアリングに行って、裏をとって、新規事業を決断しましたよ/投資をして頂きましたよ」という、事実ベースの話だったんですけどね・・・。


今では、コピー?セミナーを色々な方が実施されるほど、ありきたりな手法/コンセプトになりました。新参者ですので、業界の発展に貢献できましたこと、大変光栄に存じます(笑 (注3)。



脱線失礼。つい熱くなりました。クアルコムの特許戦略の話に戻りましょう。


さて、今後は「ではその戦略を、具体的にどう実行するのか」という話題になれば良いなと、個人的には思っています。これまでに得た「気付き」を糧に、そろそろ次のステップに移りたいところです。


私は、セミナー前に講義ノートを作成(注4)し、セミナー後に反省ノートを付ける(注5)ことにしていますが、今日までの反省や気付きは、すでに作成中の「次のセミナー企画」に盛り込まれる予定です。知財の専門家の方々には、クアルコムの戦略は「いい意味で当たり前」のものになりつつありますので、それを実践する「現場」の人が理解しやすいもの/周囲に説明しやすいものを、作っています。


お披露目は、8月になりますかね。


また会場で皆様にお会いできるのを、大変楽しみにしています。



※ 注1) この時代に、いまから敢えて自社ファブを構える可能性も、示唆されているぐらいです。むしろ、割と真面目なモノづくり企業、といえるのではないでしょうか。

 http://eetimes.jp/ee/articles/1207/02/news037.html

※ 注2) そのせいで、本来メインにしていた「発想法」に関する内容を、大幅に削除して現在に至っています。これは、別のセミナーに移植予定です。


※ 注3) 念のため申し添えておくと、この考え方(特許情報分析で、技術の用途が見つかるのではないか)自体は、古くから言われていることだと思います。また、私の事例では、この手法を実施してみようと具体的なサジェスチョンをくれたのは、当時一緒に事業を行なっていた、非常に優秀な後輩です。私一人では、到底たどり着かなかったでしょう。


※ 注4) さすがに今回のような、ほぼ同じ内容で20回もやっているようなセミナーは、もうノートは作らないのですが。


※ 注5) 大学時代(塾講師)から、教材を全て自作していたことも有って、講義ノートと反省ノート(もしくはメモ)は習慣になっています。偶然見つけた、田坂広志氏の「反省」に関する記事を以下に引用します。反省ノートや講義ノートの意味については、また場を改めて。


「反省」を通じて、「経験」を「体験」にまで高める

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20130509/350049/?ST=career&P=6&rt=nocnt
夜、独りで大学ノートを広げ、その日一日の仕事を振り返りながら、「なぜ、こうしたトラブルが起こったのか?」「自分の仕事のスタイルのどこに問題があったのか?」「自分の心の姿勢の何が問題だったのか?」「今後の成長のために、仕事のスタイルの何を改善し、心の姿勢のどこを改めなければならないのか?」といったことを書き連ねていきました。』

私は、仕事については、以前も取り上げた通り「5年日記」で同様のことをしています。


2013年6月9日日曜日

立命館大学MOT大学院 第一回講義を終えて~「教室」の可能性

今月から、MOT大学院での講義が始まりましたので、所感を。

実は、始まる前から今年は一つ変化がありました。いわゆるLMS(学習マネジメントシステム)の変更です。

・Manaba
http://manaba.jp/ja/

ハーバードビジネススクールでも利用しているそうです。
http://manaba.jp/91

昨年までは、おそらく自主開発と思われる教材の共有システムを利用していましたが、よくも悪くも、「伝言板」と「電子資料配布」の仕組みを抜けていませんでした。

2013年度の準備を始めるにあたり、LMSが変更になるということで、利用法を色々考えていました。注目している機能はいくつかありますが(注1)、いずれも、SNS的な部分が利用価値が高いと考えています。

講義でも少し利用してみましたが、学生間、学生・講師間の情報の流れをうまく(速く)制御することが出来るツールだなと、実感しました。

以前から発明塾では、この「情報の流れをいかに早くするか」に挑戦し、それにより、各自の能力を限られた時間内で最大限引き出し、成果に繋げられることを、度々実証しています(注2)。

立命館大学でも、同様のことをやりたいなと思っていましたが、インフラが整わず(セキュリティの関係もあり、学内のPCに各種ソフトをインストールすることが出来なかったので)断念しておりましたが、意外と速く、整備されました(注3)。

今年は、昨年以上に「教室の可能性」を追求していきます。

なんで、こんなことを言うか、と申しますと。。。


ちょうど都合のいい(笑)記事がありましたので、引用させて頂きます。

・「単位はネットで買えるか」
http://ameblo.jp/asayoji-zeirishi/entry-11546560488.html

ここに引用されている内田樹氏(注4)の意見は、MOOCsやeラーニングを考える上で、無視できないものでしょう。限定された空間が、質の高い活動に必要、という点は、以前私も書いています。

・「イノベーションの正体見たり・・・」
http://edison-univ.blogspot.jp/2012/02/blog-post_19.html

「膝付きあわせ、口角泡飛ばして」の「知識の応酬」が、学びの中心であるのは、私もその通りだと考えます。

ペンシルバニア大学/エイミー・ガットマン学長は「当然その程度のことは」、踏まえた上で、同大学のMOOCsプロジェクトを推進していると考えるのが、妥当でしょう。

MOOCsやeラーニング/「教室」講義それぞれの可能性について、ここで書けるレベルにとどめた場合、僕は以下を想定し、立命館大学での講義にも、その要素を取り入れたいと思っています。

・MOOCsやeラーニング
 「思考実験」により、批判的に自習ができる学習者への、より多くの機会の提供
 すでに各方面で実行されている、SNSとの接続
 反転学習のツール(教科書は家で読んでおく)
 補習(むしろ、こちらが「教室」講義になる可能性も高いですが)

・「教室」
 学習者間/学習者・講師間のリアルタイム、制限時間付き「知の応酬」による、より多面的で緻密な学習
 協調性を求められる、実験・試行錯誤的なコンテンツの提供(いわゆる、実験や演習)
 身体知の伝授

ところで、「教室」とは、物理的な場所を必要とするのでしょうか?


ペン大が、様々なツールを駆使して、より裾野を拡大しながら、高みを目指していると考え、今後の取組に注目したいと思います。

立命館大学も、負けてられないと思いますよ(笑。ペン大も「私学」ですからね。


そのうち僕の講義も、

「テキストは読んできてね。読んで理解している前提で、演習から始めます。理解できないポイントは、予めSNSで仲間と共有して、教えてもらっておいてね。どうしても残っている質問のみ、冒頭で簡潔に僕が答えてから、演習を開始します。」

みたいな状態になるのでしょう。実際、一部の(私の提供する)企業内セミナーは、この手法に切り替えています。

だって「講師が前でテキストを読む」みたいな講義って、退屈極まりないですよね(笑。

僕はそれが原因で、大学時代ほとんど授業に出なかったわけなので(その先生の著書読めば、だいたいわかることを、わざわざ言って聞く気がしなかった)。


今年は、ますます「教育を科学」できる年に、なりそうです。ユニークな学習環境を整備していただいた、立命館大学のスタッフに、感謝!(注5)



※ 注1) 立命オリジナル機能の可能性もあるので、念のため、詳細は割愛します。

※ 注2) 彼らの発明数とその採択率が、物語っています。

※ 注3) 立命館大学は、現場から見ていて、常に改善がなされていることを実感します。柔軟性とスピード、という意味では、日本の大学の中でも有数ではないでしょうか?「株式会社」と揶揄される理由がわかります(笑

※ 注4) いつもその発言に注目している方の、一人です。

※ 注5) 僕の講義は、全8回、遠隔配信もされているのですが、遠隔で受講している学生(主に社会人)とも、SNSや会話をやり取りしながら進める授業は、なかなかおもしろいです。これが出来るのも、専門スタッフが、常についているからです。いくら大学院とはいえ、出席者10名ぐらいの講義に、講師とスタッフ2名って、コスト的には全く合わないと思いますが。。。立命館大学の「徹底」ぶりが伺えます。


2013年6月6日木曜日

発明塾京都第133回開催報告

第133回も無事終了しました。

今回は、何故か人数が少なかったですが、例に漏れず、非常に重要な気付きが有った回となりました。

繰り返しですが、発明において、

「どんな発明が必要とされるのか」

を、自分で考えることが重要です(注)。


ヒントは、常に、先行技術にある。

「先行技術を超えろ」

これが、発明の本質である。

「どの先行技術を」「どの方向から」「どう超えるのか」

を考える。そのために、先行技術の分析の方法論を、基礎から毎回指導している。


前回の講義でも話したように「日本語としてちゃんと読めていない」は、問題外であるが、「技術思想として読む」ことができているか。その先は「意図」が読めるか。


つまり先行技術の分析にも、いろいろある。未だ有望な発明の着想に至っていない人は、

「書いてある事」
「書いてある事から、合理的に推定できること」

を明確にして、先行技術を今一度しっかりと選定し、分析してきてください。学びたければ、自分なりにしっかり分析した上で、誰かと討議するしか無い。

では、次回も宜しく。


※ 注) 「どんな発明をすればいいですか」と質問する人は、「どんな株に投資すれば儲かりますか」という質問をする人と、とても似ている。


2013年6月4日火曜日

審査書類情報照会@IPDL

2003年7月以降の審査に関する書類(拒絶理由通知書や意見書)等が検索可能(2003年6月以前の書類や、意匠・商標に関する書類はNG)

2013年6月1日土曜日

塾長の部屋(43)~もっと「攻め」よ

今回の発明塾でのコメントと関連することで、いい発明を出すために必要なことについて、書きたいと思う。

それは「攻める」ことである。

時間節約のため、塾生に送ったメールを引用しながら進めます。

>>>以下引用

・僕が持っている、発明の規準

を共有できていない気がします。

どんない正しい方法で取り組んだとしても、自分の中の規準が間違っていると(甘いと)、世間の規準に到達できないので、「規準を盗む」ことに注力したほうがいいでしょう。

世間の規準に到達できるかどうかは、

・「世間の規準」を、明確に理解していること
・そこに達するまで、諦めず(正しい方向の)努力ができること

この2つだけです。前者を満たしていないと、自分では満足しても他人が満足できないものが、出来上がってしまう。

自分の規準を上げること。自分の中の規準が甘いと、結局、周りから見て「グダグダ」なものが出来てしまう。

>>>引用終わり

社会人的には、プロ意識、と呼ぶべきものだと思います。ちなみに、トクヴィルは、同様のことを

「自分の考えを、そのあらゆる論理的帰結にまで突き詰め、しばしば、虚偽や非現実と紙一重のところまで近づかざるを得ない」

と、述べています(「アメリカのデモクラシー」)。発明においても、「自分の思想を突き詰め」てください。発明とは「新たな技術思想の創出」なので。

ちなみに僕は、仕事のことを考え過ぎたり、発明をし過ぎたりするとたまに、「あー何となく狂いそうだな」ということを感じる。将棋の羽生氏も「狂気の手前」などと、著書に書いていましたが、レベルは違うでしょうが、同様の感覚ではないかと思います。

そこには、古今東西の人が指摘している、共通の何かが在るのでしょう。

>>>以下引用

焦る必要はない。先行技術を技術文献としてしっかり読み、それを分析、思想化する。

その繰り返しにより、突破すべき技術的な壁が見えてくる。それを「課題」という。

丸島先生の本に、ゼロックスの特許網を突破した時のことが書いてある(「知的財産戦略」のコラム参照)。

・メルマガ120号

先行技術を分析し、思想化し、突破すべき壁を設定する。それは、特許だけではなく研究(論文)、事業(先行している企業の事業分析)も同じ。すべての基礎になる。

ちょっと面白いからといってやっていては、人生が終わってしまう(利根川進 ノーベル医学・生理学賞)から。

>>>引用終わり

発明塾生に限らず、僕が誰かと何かを一緒にするとして、その人達に求めるものの一つ「素直さ」。それは「素直に諦める」ことを意味しない。「成果を出そうとする意思」が前提にある。

「意思のない素直さは、害悪でしか無い」

と思っている。

「課題が見つからないので発明ができません、また来週までに探してきます」

素直だけど、それは意味が無い(言い訳ではない、という仮定で)。たぶん永久に発明は出せない。むしろ、

「なんでもいいからとにかく発明してみました。先行技術はありません。これが解決している(出来る)課題について、考えたいと思います」

の方が、だいぶマシである。

結果に向けて、とにかく攻めよ、ということである。自分の規準を高く持ち、結果のために手段を選ばない。その上で、粘り強く、じっくりと取り組む。ウロウロ、キョロキョロしない。

実はそれが、発明の最大のコツである。

そしてその能力は、むしろ発明ではなく、人生の様々な場面でこそ、武器になる。