「発明塾®」へようこそ!: 7月 2013

2013年7月28日日曜日

立命館大学MOT大学院特別講義「クアルコムは如何に携帯電話市場を制覇したか」開催報告

7月27日に、立命館大学MOT大学院の特別講義として、

「クアルコムは如何に携帯電話市場を制覇したか」

と題した公開セミナーを開催しました。参加いただいた方々、お疲れ様でした。


本講義にはいくつかの要素がありますが

・知財と標準化をビジネスモデルに組み込む意味
・その背景にある「産業の力学」を理解する必要性
・それを踏まえて、どのように「発明を創出すべきか」

あたりが、なんとなく伝われば、それでよかったかなと思います。


結果的に、発明塾で取り上げている内容の「ダイジェスト」になったかなと思います。立命館大学MOTの方々に、少しでも「発明塾式」思考法に触れてもらえれば、という目的は、8回+特別講義で、まずは達成できたと思っています。

皆様の今後のますますのご活躍を、大いに期待しております。

ぜひまた、BKCで、大阪で、お会いしましょう!!!


>>>以下告知文です。

立命館大学MOT大学院の講義「先端科学技術とビジネス」の番外編講義として、講義内でも取り上げました、無線通信業界の巨人「クアルコム」に関する映像資料の紹介と、それに基づいた討議、解説を行います。

毎年恒例として、受講学生さんに段取りをして頂きました。

本来は、立命館大学在学生を対象としたものですが、これも例年通り、立命館大学MOT大学院の講義がどのようなものか、どんな学生が学んでいるのかを、広く知っていただくために、公開講義とします。立命館大学の設備を利用しますので、参加者の方はご配慮のほどお願い致します。

参加者の方と、立命館大学MOT大学院、双方のためになればと思っております。


・日時 : 7月27日(土) 13:00- 

・場所 : 立命館大学びわこ・くさつキャンパス

・詳細、申し込みは以下。
http://kokucheese.com/event/index/102674/



※「先端科学技術とビジネス」/「クアルコム」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/07/mot.html

2013年7月26日金曜日

発明塾京都第140回開催報告

第140回も無事終了しました。

塾生さんから報告があったように、試験期間中で人数が少なかったことも有り、発明塾恒例の「非常に良い議論」ができました。

夏休みのアイデアコンテストに向かって、良いスタートを切れたと思います。発明塾の発明法則を、再確認できました。

来週から、本格的に議論を開始します。テスト期間で休んでいた人は、早めにキャッチアップしておいて下さい。

では。

2013年7月21日日曜日

塾長の部屋(45)~「課題をクリエイトする」~結局は皆同じことを言う

「塾長の部屋」としては久しぶりですね。今日は、金曜日の立命館大学MOT講義「先端科学技術とビジネス」および、塾生とのメールのやり取りから感じたことをまとめておきます。

・立命館大学MOT講義「先端科学技術とビジネス」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html


今回の講義では、ある電子部品メーカーの企画部門の方にお越しいただき、特に後半、


「要するに、どうやれば勝てるのか」

という Topic について、様々な角度から討議を投げかけていただきました。

その方とはかなり長いお付き合いで、発明塾での取り組みを紹介して以来、結局、新しい事業を起こす、あるいは、成果につながる技術開発テーマを企画するには、


「課題をクリエイトする」


ことが重要だよね、という話を繰り返ししています。今回の講義でも、「さらっと」出ましたが皆さん聞き逃してませんか~?

発明塾では、「次に取り組むべき課題は何か」を「考えだす」ことに、かなりの時間を割き
、また、そのための方法論を日々整備しています。


また、第4回、第6回では「累積思考量が重要」という全く同じ話が出ました。自分の頭で「日々」よく考えましょう、ということですが、特に第6回では、「少数のシンプルなルールに基づいて、徹底的に考える事が重要」と、これも発明塾でいつも繰り返していることと、全く同じお話がありました。


僕の所には、しばしば、


「TRIZのセミナーを受けたが、結局身に付かない、使えない」


という相談が寄せられます。僕自身は、ある発明の段階で使うことがありますし、発明塾でも参考図書として配布していますので、必ずしも「使えない」とは思いません(※)が、一方で「方法論として憶えなければならないことが多い」「それを補うためにツールが準備されているが、結局その使い方を憶えるのが面倒」という、悪循環に陥っている気はします。


解決策は「完全に習熟する」しかなく、「使い方を思い出すので、いっぱいいっぱい」「方法論に溺れている」ようでは、効率よく発明はできません。「思い出す」ことに、ワーキングメモリーを使ってしまうからです。


直近で、山中先生(iPS細胞で有名な)の著書を読んでコメントをくれた塾生さんがいます。コメントへの返答をモディファイしつつ、「結局は、いくつかのシンプルなルールに習熟する以外に、方法はない」ということを示し、終わりにします。


塾生さんが読んだ本は、以下2冊を含めた3冊(3冊目は割愛)だそうです。



①「大発見」の思考法
②山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた

それぞれの、勉強になった箇所を抜粋してくれています(塾では「写経」と称して、本を抜書きすることを推奨しています)。それに対するコメントが以下です。

>>>

共有ありがとう。結局、いつも僕が言っていることですね。つまり、誰が考えても同じ結論にたどり着く、ということでしょう。僕は山中先生を知らないし、話したこともないし、講演も聞いたこともないし、本も読んだこともない。年代もバックグラウンドも出身も違うので、同じ影響を受ける素地がありません。

補足しておきます。

①p.164
「VW=「Vision & Hard Work」、つまり「明確なビジョンを持ち、それに向かって一生懸命努力すること」が、研究者として成功するための条件だというのです。日本人は概して勤勉ですから、努力は得意だと思いますが、明確なビジョンをつい見失いがちです。・・・ふと気が付くと、何のためにその努力をしているのか分からなくなっている。」

これを実行するための「7つの習慣」であり、「Time Quest」。ぼくは「今日も頑張りましょう」みたいな掛け声は無意味だと思っていて、「意識せずに、常に力を出し切れる仕組み=習慣」が重要です。

7つの習慣は Vision に焦点を当てており、Time Quest は、実行の方に焦点を当てている(どちらかと言うと)。たとえば7つの習慣では「Put First Things First」と、重要事項を優先しましょうと掛け声は掛けているが、具体的方法論は示していない。

TQ では方法論に言及していて、「何のために Prioritized Task List 」が必要であるか、と書かれている。余談ですが、これは結局、チクセントミハイの「フロー」理論と同じ。

発明塾参考書は全て繋がっているので、それを意識して Mastery するといいでしょう。


②p.84
「厳しい競争分野に、ぼくらの弱小研究室が飛び込んでいっても勝算はありません。分化の逆である初期化を目指すというビジョンを立てたのは、はじめから負けることが分かっている勝負はしたくなかったからでもあります。」

これは「ランチェスター戦略」。勝負のルール、力学を理解した上で、有利に進められる戦場と戦い方を選ぶ事が重要。


②p.97
「理論的に可能なことは実現する。理論的に不可能なことなら、たしかに、いつまで経ってもできないだろう。しかし、理論的に可能なことが分かっていることならいずれできる。多くの人が「こんなん絶対無理」とおもうようなことも必ずできるようになる。ぼくは単純にそう考えています。クローン羊ドリーが誕生したということは、理論的には、どんな細胞であっても、分化する前の状態に戻せる、初期化できるということです。」

狭義では、ここが発明塾の思考法、ということになるでしょう。「理屈上出来る事かどうか」確認(論証)する事が重要である、というのが「発明塾式」仮説思考です。

また、「理屈上出来るはずのことが、やられていない、できていない」ということが、チャンスである、という考え方です。

研究であれ製品であれ事業であれ、全て同じです。



※ 
「万能なツールは存在せず、どのようなツールも、使いどころの見極めが肝心」であり、発明塾において TRIZ を活用する際も、「どの局面で使うか」常に気を付け、指示を出していますよね。
実際、問い合わせがあるたびにそのようにお話し、さらにどう使えたかという「自分の発明の実例」を、セミナーではお話することにしています。TRIZ がインパクトのある発明ツールの一つであると正しく認識し、有効に活用している塾生さんもいます。
でも、話を聞いたからといって、出来るようになるものではないとも、思います。それは、自転車の乗り方を聞いた(見た)からといって、乗れるようにならないのと同じです。
結局は「ある程度良いコーチ」について、「指導を受けながら実践する」しかないと思います。自転車に乗るぐらいであれば、「両親」で十分(失礼!)なのですが。。。



2013年7月19日金曜日

発明塾京都第139回開催報告~「発明塾式」の威力

第139回も無事終了しました。テスト期間ということで、少人数で開催しましたが(大学の通常の勉強すら覚束無い学生に、発明云々いう資格はない)、通例通り、「人数が少ない回は面白い」という結果になりました。

今回は、夏休みに取り組む新規テーマの討議を通じて、「発明塾式」の発明法について、詳細を確認しました。アタリマエのことですが、手順を確認する中でも、発明が「自動的に」創出されました。しっかりした方法論があると楽ですね。


「発明塾式」の威力を、改めて痛感しました。


講義では、私が個人的に現在研究している「発明」「創造的議論」「学習」に共通する現象、技法について取り上げました。

単なる発明ノウハウにとどまらず、仕事上の課題をどうブレークスルーするか(創造的問題解決)、周りの仲間から如何に「アイデア」を引き出すか(創造的議論)、など、今後のほとんどの活動に役立つ技法です。


現在、テーマの変わり目ですので、「発明に取り組んで、これらの手法をマスターしたい」という新規入塾希望の方は、是非連絡下さい。


・「夏休みに向けて、若干名の新規メンバー募集」

http://edison-univ.blogspot.jp/2013/07/138.html


ちなみに4-6月期の新規入塾生の継続率は7割程度ですので、皆さん頑張っているのではないでしょうか。


では、次回も宜しく。


京都大学講義「頭脳をレバレッジする最強のツール=知財」開催報告

毎年恒例ですが、7月18日(木)に、全学共通科目で開講されている「起業と事業創造」の最終回、知財の部で講義を行いました。

今年のタイトルは、「頭脳をレバレッジする最強のツール=知財」。


クアルコム、IBM(とインテル、マイクロソフト)、電気自動車やBoschの独占モデルを取り上げながら、「知財」が起業家にとっていかに武器になるか、を紹介しました。

参考のため、講義開始後すぐの「第一問」を紹介しておきます。

Q:「発明、知財(権)、事業、の3つの言葉を使って、それぞれの関係が明確になるような文章を、20-30文字で作成して下さい(制限時間1分)」


発明に必要なのは「知財の知識」。これなくしては、「そもそも何を発明すればよいのか」すら定義できません。つまり、発明のテーマすら決められないことになります。


塾生は、これまで以上に「知財」「標準化」について、勉強に励んで下さい。

「頭脳をレバレッジする」のが知財。そのために「急所を突く発明を、ピンポイントで効率よく生み出す」。

そのノウハウを、発明塾の活動で身につけましょう。それは、起業家、研究者、企業勤めの技術者、すべての人が「成果を出し続けるために」必須のスキルだと思います。


2013年7月11日木曜日

発明塾京都第138回開催報告~夏休みに向けて若干名の入塾希望者募集

第138回も無事終了しました。

今回は、夏休みに行う課題の説明会として開催しました。

その後、少し討議しましたが、「発明の見通しを立てる」ことが、できたでしょうか?


発明において、この「見通しを立てる」ことが、極めて重要です。


もうすでに、発明塾ではのべ数百件の発明を討議しましたし、テーマも、ナノテク、医療、塗装、複合材料、建設、次世代照明、リサイクル、環境、金融ビジネスモデル、軽量新素材、太陽電池、エナジーハーベスティング、ロボット、食品包装、ディスプレイ、通信、水質管理、データセンター、センサー、認証技術、土壌浄化、ウルトラキャパシタ、光通信、AR技術、空気浄化など、極めて多岐に渡っています。

これらの事例から、発明を導き出す一定の手順と、発明すべきポイントを見極めるための手順が確立しています。

それらをきちんとマスターし、それに従って論理的に、一歩一歩、仮説構築を進めていくことが「発明に習熟する」ための、唯一の道です。

「なんとなく集まってワイワイ言う」

というような次元の低い発明討議は、時間の無駄です。既に、「発明を生み出す方法」が確立しているわけですから、それに従って、情報分析と討議を繰り返すことです。


一つ一つの発明のステップで、常に方法論の習熟を意識し、完ぺきにできるようになるまで繰り返し、次のテーマに進む(注)。

夏休みは、このための絶好の機会です。

集中して取り組み、また自分なりに方法論に対する理解を深め、自分なりの方法論をブラッシュアップしてください。


春からのメンバーが少し落ち着いて来ましたので、一旦止めていた入塾希望者の受け入れをします。2名程度の見込みです。希望者は連絡ください。

簡単な面談討議と適性検査の上、可否を決定します。


では。


注)「経営者になる、経営者を育てる」菅野

2013年7月7日日曜日

立命館大学MOT大学院 第5回講義を終えて~クアルコムが携帯電話業界の覇者になるまで

第5回の講義を振り返りましょう。

今回は、僕がこの業界(知的財産)に入って以来、最も深くそのビジネスモデルを研究している企業「クアルコム」の事例を取り上げました。

水平分業(研究開発と、半導体チップ&知的財産の提供)に転換し、大成功を収めるまでには、やはり紆余曲折があったわけです。時系列で見てみましょう。


● 設立当初

・1985年 創業 「当初、具体的な製品は何もなかった」
書籍などによれば、会社の”最初の”売上は、学会での講演費数万円であった。よくある話である。私も度々経験がある。

・1988年 CDMAの概念を発表
すでに軍事用の暗号通信技術として知られていたCDMAを、携帯通信に応用することを考えて、発表。当時の業界、学会の反応は「そんなことは不可能」。「嘘つき」呼ばわりであった。

・1989年 サンディエゴでフィールドデモを実施
実際にCDMA技術にて通信が可能であることを実証。当時の反応は「サンディエゴは大きなビルがなく、携帯通信に大きな障害がないから、たまたま上手く行っただけ」。

・1990年 ニューヨークでフィールドデモを実施
大きなビルが乱立する環境でも、携帯通信が可能であることを実証。当時の反応は「???」。

・1993年 TIA(米国電気通信工業会)の規格に採択(第2世代の携帯通信規格)


● CDMAで「移動体通信」と「世界」を変える


その後の快進撃は有名ですね。

・1995年 世界初のCDMAのサービスが香港で開始
(創業から10年経っています)

・1996年 韓国及びアメリカでCDMAのサービス開始 

・1998年 KDDI(日本)がCDMAサービス開始


この後、第3世代の通信規格について、主導権争いをエリクソン(W-CDMA)と繰り広げます。

・2010年 3Gの契約数が10億を突破。

当初「社員数が100名を超えれば大成功」と考えていたクアルコムが、現在社員数「2万7千名」、売上「2兆円」の巨大企業となった。


● 従業員満足度が高い企業

ちなみに「従業員満足度」の高い会社としても有名です。

・「フォーチュンベスト100」にランクインした主要IT企業の自発的退職率
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070608/274140/

クアルコムは「1%」です。

数多くのM&Aを行なっているようですが、それぞれの会社の研究開発拠点は、そのままクアルコムの研究開発拠点として、引き継がれているとのこと。研究開発拠点が多いのは、上記が大きな理由だそうです。



当初のコンセプトを、地道な研究開発を通じて実証し、同時に研究成果を確実に知財化してきたクアルコム。「技術者と弁護士の会社」と揶揄されることもあるようですが、「知を財に変える」ために、どのような活動をしなければならないか、非常に示唆に富んだ事例です。

まさにMOT(Monetization of Technology)、と言えるのではないでしょうか。

既に発明塾では、このモデルを取り上げて「国際標準化と事業戦略」について、講義を度々行なっていますが、立命館大学MOTの特別セミナーとして、この夏に同様の講義を行う予定です。

興味が有る方は、このBlogでの告知に注意しておいてください。

では!

2013年7月5日金曜日

発明塾京都第137回開催報告~「頭脳をレバレッジ」するのが「発明塾式」の本質

第137回も無事終了しました。そろそろ試験期間ですので、しっかり対策?して臨んでください。

さて今回は、冒頭で「技術進化と発明」について、講義(討議?)を行いました。

最新の発明理論、といえるかもしれません。海外の発明家から「Propheting」と評価を受ける発明を、テーマごとに「必ず」出すための思考法が、「技術進化」における「システムと要素技術の関係」です。

発明家は、求められる発明を、その場で素早く「必ず」出すことが求められます。僕自身、そういう状況で鍛えられ、その中で現在「発明塾式」としてまとめている各種手法を編み出し、発明に関する「哲学」を固めて来ました。

毎回の発明討議を通じて、これら手法と「哲学」をしっかり身につけて、発明はもちろん、インパクトの有る研究テーマの発掘、新規事業テーマや起業ネタの探索に使ってください。すべて肝は同じです。「発明塾式」発想法は、単なるアイデア出しではなく、頭脳のレバレッジ法であり、研究のROIを極大化させる手法です。

その後、発明提案書(SR)のブラッシュアップ討議を行いました。自分の発明を「的確に伝える」ためにはそれなりのルールを守って書く、トレーニングが必要です。

今回は、いくつかのチェックポイントと「英作文型」文章ブラッシュアップ法、を紹介しました。いずれも、僕自身が仕事で文章を書く時や、他メンバーの日本語をチェックする時に使っている手法です。

学生さんにもわかりやすく、すぐに身につく手法だと思います。論理的な日本語の文章がスラスラ書けないと、仕事で全く使いものになりませんので、学生時代にしっかりと「書く」訓練をしておきましょう。

ついでに「英語も上手くなる」という、画期的な訓練法です(笑

次回は、8月以降のアイデアコンテストの準備の日です。しっかり討議できるように、事前準備をよろしく。

では!