「発明塾®」へようこそ!: 3月 2014

2014年3月30日日曜日

塾長の部屋(65)~「欠点は、やがて長所となる」

いよいよ4月から新生活、という塾生にむけて、再びいくつかのメッセージを。

まず一つ目は感謝。

発明塾の活動で、一番得るものが有った一人が、僕自身でしょう。

・多くの「意欲的」な学生が参加してくれたこと
・実際に「企業に採用される」発明を、多数創出してくれたこと
・長い学生さんでは「4年間」という長期にわたり、継続的に創造的な議論を「毎週」行えたこと
・徹底的に言語化することを通じて、自分の「発明思考回路」を明らかにできたこと
・そして、それが習得可能なスキルであるという「僕の仮説」を、実績で証明してくれたこと
(3つ上の内容ですね)

改めて、感謝の気持ちでいっぱいです。

「ありがとう!!!」


他にも、いろいろな気付きがありました。挙げるとキリがありませんが、タイトルに従って。
卒業(卒塾?にあたり、塾生さん達から「塾で学んだこと」について、メッセージを頂きました。差支えない範囲で紹介すると、

・「各自、得手不得手があり、違いがある」こと
・その違いが貴重であること
・だから、どんな意見やアイデアも、場に貢献できること
・「違わなければ意味がない」こと
・「研究開発の方向性を考える」という、貴重な機会を得たこと
・大学では決して習わない、基本的な情報検索の技術を身につけたこと

等々、これまたキリがないようです。


僕はいつも、

「各自の違いが重要」「その差分に注目せよ」

と繰り返し言っています。これは、僕の中では確信に近く、小さな違いに注目し、その本質を追及することが、大きな発明/発見につながっています。


もう一つ。

「短所を克服していく中で、本当の強みが生まれる」

たとえば「発想が乏しい」と思っている塾生さんについては、それをどう補うかについて、具体的指導を行います。長所は、もうできることなのだから、次はそれをどう「他の人のために、場で活かすか」について、これまた具体的に指導しています。

僕は、各自の短所(苦手なスキル)は、考え方によっては強みになると思っています。実際、発明の途中でつまづく塾生は必ずその時、

「長所が足を引っ張って」

います。一つ一つの発明を丁寧に討議し、発明提案書を添削する中でわかってきたことで、非常に興味深い事実です。「長所を伸ばす」だけでは、不十分なのです。少なくとも「発明」のような、高度な知的活動においては。


あと一つ。ドロップアウトする学生には、一定のパターンがあります。以前「素直さが重要」という議論を行っています。その続きともいえる、「Optimistic & Critical が重要」という議論もありました。

続ける上で重要なことは、「素直」「 Optimistic & Critical 」「意見に終わらせず、自分の態度と行動に落とし込める」ことだと、わかっています。

Critical の意味を「批判的に考えること」で終わらせている学生は、基本的に脱落しています。「意見」は言うが、「自分の態度、行動」に落とし込めないため、結果が出ないのはもちろん、自分の中で「解決できないこと」が蓄積して、自分で自分をつぶしてしまうようです。

「死に至る病とは、絶望のことである」
大胆に、かつ地道に、一つ一つ解決していくことで、
道は開けるかもしれない、
そういうものでしょう
「祈り、かつ、働け」
と言った人たちがいましたが・・・

分かりにくいので、例をあげましょう。

「消費税が8%に上がります」
⇒「もっと上げるべき」「ちょうどよい」「下げるべき」

3つのパターンがありますが、Critical に考えるとすると真ん中は有りませんので、「現状否定」となります。その先はだいたい「なぜなら?」となるわけですが、僕はこの問いは、あまり重要ではないと思ってます。

それよりも、

「で、あなたはどうするの、具体的に」

という問いに「一つ一つ答えを出していくこと」の方が、重要ではないでしょうか。「理由」は、その途中で、必要があれば出てくることでしょう。どんな思考も、各自の態度や行動の変容(もしくは維持)として、「何らかの決断」にならないと意味がない。

「消費税が上がる」
⇒「下げるべきだと思うが、すぐに下げるための活動をしたとして、成果は出ないから当面買い控える/駆け込みで買う」

「消費税が上がる」
⇒「下げるべきだと思うが、実際には自分にとっては大した差ではないので、気にせず今まで通り生活をする」

などのように、具体的な「決断」に落とし込める人は、その場で「課題意識」を解決できるので、次に進める。これができない人は、関西弁でいうと「文句言い(もんくいい)」で、終わる。肥大した課題意識に押しつぶされる、というところでしょうか。人によっては「酒飲んで、愚痴言って終わらせる」ことに、なるのでしょう。

伝わったかどうか、あまり自信はありませんが、継続している塾生とドロップアウトした塾生の観察結果から、わかったことです。技術に関心があるかどうか、などは、少なくとも僕の観察の範囲では、関係ありませんでした。


細かいことは別にして、僕の結論としては「このように、わからないなりに言語化して、オープンに議論できる貴重な場」が、発明塾なんだろうな、ということです。


在塾生の皆さん、4月以降もよろしく!

卒塾生の皆さん、活躍を期待していますよ!
Farewell.



2014年3月29日土曜日

発明塾京都第173回開催報告~「教え合い」ではなく「学び合い」

いよいよ卒業ということで、参加最終回の塾生さんも交え、173回を行いました。

今回も、各自の発明提案書を基に討議を行い、合わせて「知的財産戦略」に関するケーススタディを行いました。

このケーススタディは、立命館大学MOT大学院の講義でも、取り扱っているものです。今年は、4月25日の立命館大学MOT大学院での講義(石田教授担当)で、大学院生の皆さんと討議する予定です。

せっかくですから、問いの一部を、転記しておきましょうか。

「ビジネスモデルとは、収益構造のデザインであるという視点から、”知財戦略とは何か”ズバリ答えよ。以下のキーワードを適宜用いることを薦める(利益、投資、垂直、無力化、安定、成長、加速、Sカーブ、早期回収、数量、寡占、水平、巻き取る、差別化、巨額、仲間づくり、イネーブラー)」

これまでの発明塾討議の、総決算的な内容です。皆さん、きちんと答えられましたか?

繰り返しですが、唯一の正しい答えがあるわけではありませんので、今回の討議/他メンバーの回答案を踏まえ、自分なりにまとめておくことが、とても重要です。


昔からの癖もあって、僕はたびたび、このような「答えのない自作の設問」を、塾で討議してもらうことにしています。会社のメンバーは知っていると思いますが、このような「問い」を作り、それに対して様々な観点から回答を考え、蓄積していくことが重要です。

「自分で問いを作る」

のがベスト、という点は「KSQ」の議論でやりましたね。


僕が、せっかく塾生が集まる時間に「答えのない問い」を議論するのは、理由があります。

「会った時/集まったときに、本を読めばわかるようなことを話す」ことは、時間の無駄だ、というのが僕の基本的な考え方です。

これは、前職の時に「自分の開発した技術についてヒアリングに行く際に、相手の出願特許を隅々まで調べ、提案書を作って持っていく」という、独自の手法を編み出した時からの、考え方です。

僕は、この手法も含めた一連のノウハウを「特許情報を用いた技術マーケティング」として、講演/指導する機会を、たまに頂きます(注)。似たようなセミナーや論文は多いのですが、「皆さんホントにそれで実際やってみたの?」「うまくいくの?」というぐらい浅い内容で、少しがっかりします。

脱線しました。

「会わないと出来ないこと、をする」

これが、発明塾で集まるときの、基本的なスタンスです。多くの塾生同士で

「XXについてわからない」⇒「君の場合は、この本がいいよ」

みたいなやり取りが、行われているようです。その上で、「まだ本にも書いていないような、独自かつ最新の考え方や仮説」について、集まって討議してもらっています。

ある塾生さんの推奨本。
過去に一度、「スケッチ」の指導/講義をしたのですが、
その時の「モヤモヤ」を、持ち続けてくれていたようです。
ある種の絵を描く能力は、発明では極めて重要です。

僕は、起こすべきは「学び合い」だと思っています。「本読めばわかるようなこと」は、互いにさっさと本で済ませて、その上で「そこでしか起きないような、もっと突っ込んだ議論」を仕掛けていく。そんなやり取りです。

そうすれば「ここでしか得られないものに溢れた」場を、継続することができます。

発明塾は、これからもそのような場であり続けます。


※ 注) 絶大な効果がある手法なのですが、あまり大々的に広めるべきではないような、そんな気がしています。というか、そもそも、そこまで調べられる人も、あまりいないようです。



2014年3月21日金曜日

発明塾京都第172回開催報告~「知識を体系で捉え、空白を埋める」発明塾の「学びの技法」

そろそろ新生活に向けて、引っ越しやらなんやらで、皆さん忙しくなってきましたね。
今回は、各自のSR(発明提案書)について、議論しました。

・進歩性

・実現可能性
・先行特許のクリアランス(非侵害)
・知財戦略

など、いくつかの視点で自分の発明を見直す作業も兼ねています。



「単なる思いつきを脱する」

ために、「厳密に言葉で表現する」事が欠かせません。書けないということは、分かっていないのです。自分でも分かっていない発明が、いい発明になるはずがありません。


さて、今回は弊社のメンバーも討議に参加してもらいましたので、改めて「発明塾式」の「学びの技法」について、おさらいしておきましょう。

例えば今回、発明討議に「比表面積」という言葉が出てきました。意味がわからなかった人は、すぐにググったと思いますが、

「比表面積=単位体積あたりの表面積」

で終わらせてはいけない。「学び」を「わからない言葉を、わかる言葉で置き換える、説明する」ことだと思っている人も、いるかもしれない。そうなると、上記の式を「念仏のように」繰り返し、暗記して終わりになる。受験勉強を「無駄の極み」のように言う人の大半は、このタイプの勉強を積み重ねてきたのだと思う。それは、たしかに無駄でしょう。

「日常を科学する」ことの楽しさ、
発明塾と、僕の原点です

発明塾的、いや楠浦的には、

「学び=知識の体系を構築する作業」

である。この体系構築の方法には、コツが有る。「比表面積」を例に、続けよう。


1)「深堀り/垂直」タイプ
同じ例で行くと、

「比表面積」
⇒「単位体積あたりの表面積か」 
 ⇒「それってどうやって測るんやろ?今回は、微細な多孔質って言ってるんやけど、
   表面積なんか物理的に測れないでしょ?」
  ⇒「吸着つかうんか!頭いいな!」
   ⇒「でも、それって精度どうなん?」
    ⇒「てか、比表面積自体が、測定法で定義されるんか・・・」
     ⇒「測れないものは存在しない、てことか」

みたいなタイプ。

これが「深堀(垂直)」タイプの体系構築の典型例。「比表面積=単位体積あたりの表面積」で終わらせず、「実際どうなん?」と、実施/具体化を想定して疑問を創出し、解決していく中で、知識を得る。「思考実験」タイプと言える。発明活動の本質をなす部分でもあり、極めて重要な「学び」の技法である。

整理すると、

「ある概念を、思考実験を通じて具現化しようとする中で、疑問や課題を発見し、それを解決することで、知識を得ていく」

ことが、「深堀り/垂直」タイプの学びである。つまり、実践に向けて深まる方向に、「知を発掘し、地図を埋めていく」活動である。世間的に「問題解決型学習」などと称されているものも、この辺りをイメージしているのかもしれない。


2)「網羅/水平」タイプ
同じ例で。

「比表面積」
⇒「単位体積あたりの表面積か
 ⇒「ナノテクの講義であった、スケール則か」
  ⇒「吸着とか、濡れ性とか、表面エネルギーとか、そういう関係やな」
⇒「体積ゼロで表面積無限大っていう図形有ったよね(メンガースポンジ)」
 ⇒「フラクタルやな」
  ⇒「複雑系とか非線形現象とか、そういうのと関係あるんかな」
   ⇒「もっかい調べて、ちょっと考えてみよっかな」

みたいな感じ。

これが「網羅/水平」タイプの体系構築。既に学んでいる、ある程度の大きさの概念との結びつきの中で、「なんとなく」も含め理解していく。決して「置き換え」「言い換え」ではなく、既存の知識体系に「埋め込んでいく」ことで、概念間のつながりが、より滑らかになり、空白がなくなっていく。また、これまで繋がっていなかった概念同志を、積極的につなげていく。

「新たに獲得した知識を、既存の知識体系に”積極的に埋め込んでいく”ことで、全体としての理解を強化し、空白を無くし、場合によっては新たな関係性を見出す(=発明/発見)」

タイプの学びである。

「発明とは、複数の物事の間にある、新たな関係性を見出すこと」

と定義されることがあるが、「学びのタイプ」と見比べると興味深い。僕自身は、こいうことをしつこくやりましょうと、さんざん指導を受けたので、


「勉強といえば、水平垂直に知を体系化し、空白を埋め、新たな関係を見出し”ニンマリする!”ことだ」


という「思い込み」がある。「新たな関係」を自分なりに見出した時の「感動」が忘れられないので、ついつい勉強してしまう、という感じであった。というか、いまでもそうである。


皆さんはどうですか?



いずれにせよ、塾生さんが「発明をすることで、科学の本質に近づいていく」のは、上記のようなことなんだろうなと、理解している。


発明塾生は、これからも「実践的学習者」として、学び続けます!


※ 注) あわせて、普段の生活を「科学」することが、とても重要だと思っていて、参考図書として「ロゲルギスト」シリーズを推奨している。



2014年3月16日日曜日

塾長の部屋(64)~「京都大学”火炎瓶”工学科」の先輩から得たもの

今週は、本来土曜日にやるべきことを、日曜日にやることになっています。聖書とバッハを聴きながら、ブログと業務の整理・・・。バランス悪いですね(笑

さて、昨日お会いした方々への御礼もかねて、報告と補足を。


京都大学若手会 イベント@京都大学東京オフィス 

 「若手のときに身につけたいこと」 グーグル元副会長 村上氏 講演会

もはや若手とは呼べませんので、”邪魔にならない程度に”しようと心に誓って、講演会に参加しました。村上氏については、京大OBということもあり、その動向や発言についていろいろ事前に話は聞いておりましたので、「実際どんな人なのかな?」という「本人確認」的な感じでした。時代的に、学生運動に明け暮れた、というところでしょうか。そういう方が、Googleという、ある種「革命集団」的な企業におられた、ということがまた興味深かったですね。


氏の代表的な著作に、「村上式シンプル仕事術」があります。興味ある方は、読まれてはどうでしょうか。


ライフネット生命の出口社長や、リベラルアーツ教育で著名な麻生川先生と同様、「リベラルアーツ」「経済学を学べ」「英語」「歴史」「とにかく本で学べ」など、よく考えれば当たり前ということを、ご経験談とユーモアを交え、若い方が興味を持ち、また疑問を解消できるように話されていました。


講演終了後、Grディスカッションが有り、参加者の一人から「転職(転社)」について問題提起?がありました。その場で答えたことを、かいつまんで備忘録代わりに書いておきます。

・村上氏の言う通り、「各自が、”次の自分”のために実績を上げ、仕事をする」のが会社(健全な利己主義の総和)
・本人は「ツキ」とおっしゃっていたが、相当突き詰めて仕事をする中で、次のステップ/選択肢が見えてきたのではないか(突き抜けた人は、次へ行ける)
・今回は”若手”向けということで話はなかったが、「自分が場所を求めて」転職をする、というフェーズから「周りのために場を作る/人を呼んでくる」というフェーズになる気がする(より「当事者」へ)

だいたい、こんなことを話した気がします。弊社の若いメンバーもそうですが、誰しも30ぐらいでキャリアに悩む、という「パターン」的なものがありますので、そこにハマった方は参考にしていただければ。


さて、塾生さん向けに、おさらいと補足をしておきます。



<経済学>

村上氏は「マンキュー」「ハイエク」を勧めておられました。楠浦的に付け足すなら、ハイエクと対比して「フランク・ナイト」(とケインズ)を読んでみては、と思います。

・「ケインズとハイエク」(間宮 著)

・「フランク・ナイト 社会哲学を語る: 講義録 知性と民主的行動」

また、最新の教科書はわかりませんが、僕の世代的に読みやすかった教科書として「スティグリッツ経済学(入門、マクロ、ミクロ)」を挙げておきます。高校生でもわかるように、という視点で書かれています。


理論を学ぶと同時に


・「初めてでも読み解ける!「経済指標」の見方&読み方決定版」


みたいな本を片手に、毎週月曜日の日経に掲載されている「マクロ経済指標」を読んでみると、実体経済と理論のつながりを、実感できると思います。何事も「理論と実践」、これも当たり前か。



「私たちは本当に自由なのか」
そんなこと言われても困りますよね、
でも、我々はそういう答えのない問いを
常に胸に抱きつつ、目の前のことに
日々答えを出していくという、矛盾を抱えた存在


<本を読む、目次を読む>

村上氏は、たとえば「D.カーネーギーの本の目次を、毎日読む」というような「サマリー(at a glance)」&「毎日(schedule)」という方法論を実践しておられたようです(注)。
受験勉強の一環で「トイレ」「階段」に、古文の助詞活用表などを貼った方。学習を作業にする手法としては正解でしょう。何か身につけたいことを、作業レベルに落とし込んで繰り返すというのは、古典的な手法ながら、大学に入るとたいていの人は忘れてしまいます。


<会計的な知識>

村上氏は触れておられませんでしたが、個人的には「世の中の仕組みを知るには”経済学”」「会社の仕組みを知るには”会計的な知識”」が、それぞれ必要では、と思います。

会計的な知識も、業種や目的で変わりますが、例えば

・製造業的な視点なら「粗利を2倍にする価格決定論」(西田)
・サービス業/マーケティング的な視点では「勝利の方程式」(勝間)
が、それぞれ使い勝手が良い。財務諸表が読めれば、(自分の)会社の状態もわかりますし、数字が見えれば上司や経営者の「嘘」も見抜けますし、株式投資などにも役立つでしょうから、仕事でも個人生活でも使える知識です。


という感じでしょうか。資料は回覧しますし、次回塾で印象は伝えたいと思います。


ではでは!




※注) 氏は「毎朝」と言っておられます。楠浦的には「毎晩」にしています。短期的に覚えておくには朝がよいでしょうし、中長期的に覚えておくには夜がよいと言われます。



発明塾京都第171回開催報告

3月も半ばというのに、寒い日でした。終了後も、色々議論したようですが、結果はどうだったのでしょうか。

さて、今回の議論を振り返っておきましょう。


今回行ったことは、


①すでに出ているコンセプトを、各自で「技術思想」として、提案書に落としこむ

②「技術思想」として、「課題-解決-効果」を整理することで、さらなる飛躍を狙う
(いわゆる「制約思考」との活用)

でした。



①は、合宿でやってきて欲しかったんだけど・・・まぁ、今後の皆さんの課題ですね。



「楠浦さんは、次になんというのか(KSQ)」


を、徹底するしかないですね。一人で発明するには、「複数の”相反する”視点を使い分ける」必要があり、それは「複数の人間を、頭に住まわせる」ことです。


②は、いつもやっていることで、「技術思想」として発明の本質を「課題-解決-効果」の流れで捉え、厳密に文章化し、それをたたき台に更に議論をすることで、「より深い本質」に至りました。



結局は、「アタリマエのことを」「繰り返し」「できるまでやる」という、誰でも判ることをやるだけなのですが・・・、その議論を「迷いなく」主導するには、それなりの経験と、科学的考察/理論に基づいた方法論が必要なのかもしれません。


では、次回までに仕上げてきてね。



「V7」神戸製鋼ラグビー部を率いた平尾氏
彼が言うこともまた、アタリマエのことばかり


今回は、塾生へのメールも公開しておきます。卒業生や、弊社メンバーにも、参考になるでしょうから。

>>以下、メール文面

171回でしたね。

つまり、3.5x171回の議論を、積み重ねてきたわけです。

600時間です。

合宿や、準備時間、個別討議もしっかりやった人は、1000時間は超えているでしょう。確かに、これぐらいやれば、やらなかった人と、差はついていると思います。

が、実感としてどうか、各自の判断に委ねます。


さて、次回SRを討議できるように、各自必ず、SRに落としこんで持参して下さい。無理矢理にでも書こうとしないと、細部は詰まりませんし、何が分かっていないのかすら、わかりません。今回、話したとおりです。

「発明」という仮説を元に、一歩無理やり進めることで、「何が足りないのか」「何をより深く考える必要があるのか」見えてきます。慣れれば、仮説時点でシミュレーションできますが、慣れてない人は、「シミュレーションだと思って」書き始めることです。

1回で仕上げようとしないことです。繰り返し、行戻りを覚悟しておくことです。

ダ・ビンチですら、未完の作品を多数残しています。名画の多くは、たびたび書きなおされています。そういうマスターピースと、その歴史を知ることは、皆さんが「仕事」をする上で、参考になるはずです。

では、次回も宜しく。

>>終わり


目線を常に高く持ち、「よい仕事」「よい作品」を作り出すための方法論を、大学時代に身につけて欲しい。

それが僕の願いです。



2014年3月8日土曜日

「新たなスタートを切る」方へ贈る言葉~塾長の部屋(63)

3月も半ばに差し掛かってきました。そろそろ「社会人」としてデビューする塾生さん、教え子さん、時期的には転職組もいるでしょう。新たなことに取り組む方へ、改めて「贈る言葉」を。

発明塾では、送別会的なものをやらないことが多いので、その代わりの意味もあります。

毎回同じようなことを言うのも何なので、何か新たに始めようと思ったときに、都度見なおしてもらえるよう、まとめておきます。
以下に、メッセージと、関連する過去ブログを示しておきます。この機会に、ぜひ読みなおして欲しい。


「確固たる哲学と人生観を持ち、仕事に取り組み、短い人生で何事かを成し遂げて!」

「計画し、良い本を繰り返し読み、メモし(形式知)、メモをまとめ直して自分のものとし(暗黙知)、勉強に終わらせず、結果を出して!」

「飽きることのない向上心で、常に完璧を目指し、自らを成長させ続けて!」

「まず身の丈に合った目標と計画を立て、常に見直し、時間を管理し、充実した人生を送って!」

「ゼロベースで活動を見直し、無駄を排し、効率を上げ、思考は言語化を徹底し、集中し、時間をかけて本質を深く考えて!」

「常に自分の時間を持ち、流れに逆らわず、かつ、流されず、焦らず、長期的目標を見据えてじっくり取り組んで!」

「良い議論ができる良い仲間との出会い、そして、良い仲間との良い議論と良い仕事、を通じて、常に成長し続けて!」

「世界一になれ!徹底的に先行を分析して”まだ誰もやってない理由”が自分だけ解決できる、という”死角的なテーマ”に一生を掛けて取り組んで」

 
(画像をクリックすると Amazon.co.jp のサイトへ移動します)
Amazonのプログラムを利用して画像を引用することにしました。
セネカも、ハマトンも、言うことは同じ。
「自分の時間を大切に」
あれ、これって高校時代に化学を教わった、
あの塾講師の方の「アドバイス」と同じ・・・


そして「”知財戦略” も、忘れないように」


皆さんと、一緒にいい仕事が出来る日を、とても楽しみにしていますよ!
その時に「ぜひ一緒にやりましょう」と言ってもらえるように、僕自身も修行を続けます。


Anyday on the Road !

楠浦


・Revised 141229, 150906, 160810, ... etc

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2014年3月7日金曜日

「確かに突破できたのか?」~発明塾京都第170回開催報告

今回は、前回の討議で検討したいくつかのコンセプトが、先行技術の権利範囲を「超えた」
ものであるかについて、議論しました。


今回検討した特許群は、非常に取り方が巧妙で、パラメーター特許や分割出願を駆使して


「非常に少ない特許で、スキを作らない」

形になっています。特に、分割が巧妙で、それとパラメーター設定の妙が相まって、なんというかもう、芸術の域ですね(笑

補正の内容も、うまく技術的に限定が生じないような文言を選んでいますし、敵?ながらアッパレとしか言いようがありません。


それだけに、「請求項に表現されている技術思想を正確に読み取り」「自分の発明とフェアに比較する」能力が試されます。請求項の用語は、明細書中の説明や審査過程で定義されますので、実施例はもちろんのこと、審査過程も一つ一つ読み解き、「均等論」まで考慮した上で「先行技術を超えている」ことを、確認する必要があります。


今や、技術者といえども「この程度」の
特許に関する知識は、最低限必要な時代。
自分の知と技術を「レバレッジ」する、最強のツール、
それが特許であり、知財権


これまでとは、また少し違う観点から、「知財」を意識した「発明活動」を行う、良い訓練になっているのではないでしょうか?

と言っても、発明の基本は変わりませんので、今回確認できたコンセプトを、これまで通りの方法で実際に発明に落とし込み、確実にアウトプットにつなげて下さい。

では、次回!


注) 個人的には今回、「パラメータ特許」「分割出願」をどう使うか、そして「侵害とは」「均等論」「禁反言」など、技術者が知財活動に関わるに際して、「攻め」と「守り」いずれにおいても非常に重要な内容を、「実際に発明を生み出しながら」教えることが出来ました。これを、戦略的にまとめて、出願・権利化できれば、文句無しです。


あと一歩、頑張りましょう!


2014年3月1日土曜日

発明塾京都第169回開催報告~よい「Question」を創る力(KSQ再び)

今回は、前回の討議内容を各自まとめたものを基に、議論を開始しました。と言っても、一通りのレビューを終えた僕の第一声は、

「次、どうするのが良いか、考えてみよっか」


である。ここで問うているのは、


「方針は、どういう判断基準で決まるか」


という、メタな問いである。つまり、KSQ(Key Success Question)を、自分なりに決めてくれ、ということ。


詳細は、発明塾標準参考書「イシューからはじめよ」に、きちんと書かれている(ので割愛)。


元になった、安宅さんのブログは、こちら


高いアウトプットを出しているサイエンティストは、ほとんど同じ事を言っている(注1)。


偶然ですが、「ゲノム編集」の研究で世界のトップを走っている、MITのFeng Zhangにインタビューする機会に恵まれた塾生さんが、その結果を共有してくれた。差し支えない範囲で、皆さんとも共有しておきたい。


===以下、ほぼ原文を抜粋引用(注2)

Qは塾生さん(or その場にいた別の学生さん)、AnsはFeng.

<どうやれば、そんなに画期的なテーマを、次々見つけられるのか>
Q(別の学生):「ChR, TALEN, CRISPR.どうやったら,そんな鉱脈を発見できるの?」
Ans:Pubmedで.
(※医学生物系が一番使ってる,学部生でも知ってるサーチエンジンです)

Q:「そんなの、みんな使ってるんですけど・・・」
Ans:一番大切なのはQuestionなんだ.
みんなに言っておきたいけど,Questionが一番大事.
(#ここでQuestion連呼)


適切なQuestionを設定できれば,Pubmedは良い検索エンジンだから"誰もそんなもの読んでない"という文献まですぐたどり着ける.


その文献をCRITICALに読むんだ."CRITICALに"読まなきゃいけない.
(#ここでCRTICAL連呼)

CRITICALに文献が読めればChRもCRISPRも「ローリスク」の研究テーマだってわかるよ.
みんな「ハイリスク」っていうけど.
リターンが大きいかは実験してみるまで分からない,生物だから.
CRITICALにさえ読めれば,リスクは見積もれる.

というか,適切なQuestionさえ設定したら,Pubmedで検索すれば答えがほとんど出てる.

Q(別の学生):"Answer is in question"ですね.
Ans:Exactly.

<研究者に向いた人材>
Q:研究系の発明に向いている人材ってどんな人材だと思う?
Ans:#英語のまま書きます.
現段階でのFeng氏による
「結果を残せるgood students and post Docsの特徴」

Open Minded, Optimistic, but VERY CRITICAL when they see data.
Good at BREAKDOWN big problem into pieces of solvable problems.
If there are some steps in a technology for example, he/she is VERY CAREFUL and does not stop thinking about which step causes the problem.
(太字は,彼が強調してたこと)

Open Minded はIT系のカルチャー.MITの奴は大概そう.
Optimistic only => 米国にめちゃいるらしい.大したこと言うけど,結果に近づけないらしい.
Critical only => レアキャラ.
危ないプロジェクトに手を出さないから,そもそもFeng Labのような小さなラボには少ない.

Critical を身につけるには,Criticalにデータを見るトレーニングを積まないといけない.
課題にfocusした実験をどれだけやって,どれだけCriticalな人と一緒に解釈したかが重要

MITとかHarvardの学生はめちゃめちゃ頭が良い.でもそれでは足りない.
(#"Very smart"を連呼してた.)


賢い人たちはしばしば,散漫.注力するべき課題をしぼれない.
僕らのラボは小さいから,課題を選んでフォーカスしないと結果はでない.
フォーカスして努力できるかは分かれ目.

実験に対する文化・哲学を作るべき

Optimisticに実行するのが大切だけど,
Positive dataとかNegative dataという言葉で議論すると,研究が前進しない.
そういう文化を作らないようにする.

"Conclusive"かどうか.が重要.


一見ポジティブに見えるけど,
何も結論できない研究計画を立てつづけると,実は進んでない.
Conclusionが無いのに勝手に結論して先に進めてしまうのも,かなり危険.

===引用終了


Open-Minded, Critical, Conclusive, Focus... まぁ、アタリマエですね。  

そういえば数年前、僕が一緒に発明活動をした海外の研究者/弁理士も、みな同じことを言っていた。

このインタビュー、僕の個人的注目点は、


①「Critical を身につけるには,Criticalにデータを見るトレーニングを積まないといけない.

課題にfocusした実験をどれだけやって,どれだけCriticalな人と一緒に解釈したかが重要.」
②Open-Minded で Critical な奴はレア(と言っていたらしい)
③Conclusive

の3つ。



①は、Critical は意外と暗黙知の部分があるのと、形式知の部分も「忍耐強く」トレーニングする必要があるので、余程タフなマインドを持っているか、良いコーチにつかないと身につかない。


②は「考えればアタリ前」ですよね。


③は、安宅さんが「イシュー」で言っていることと同じ。どんな結果が出ても「進む」実験を計画しないといけない。それ以外は「Fishing Expedition」(くたびれ儲け的)だと。


あともう一つ取り上げるとすると、目の前の Problem を「Solvable」な Problems に Break Down する能力ですかね。



「知財で本気で戦う」研究者、Feng Zhang.
優れた研究者との出会いは、人を一段と成長させる。
32才とのこと、まだまだこれからの研究者。
一度、招待して「サイエンスと知財戦略」について
みっちり議論してみたいですね。
ところで、彼の特許出願の代理人を調べると・・・?


ちなみに、MIT、Harvard、Stanford の大学院では、かなりしっかりとしたと「知財」に関するトレーンングを受けるそうだ。Fengは、その中でも特に「知財戦略を駆使」している方だろう。いろいろ調べると、「アッパレ」としか言いようがない。彼は現在32才だ。32才のアカデミアで、ここまで知財戦略に長けた人は、少なくとも僕は出会ったことがない。


その辺の詳しい情報は、3月10日の山口大学知財フォーラムで紹介予定。


お楽しみに!




※ 注1) 例えば、「精神と物質」(立花隆氏と利根川進氏のインタビュー集)参照。


※ 注2) インタビューの、ほんの一部である。