「発明塾®」へようこそ!: 「エッジを拾い、進化させろ!」~カワサキで学んだこと(第323回報告)

2016年3月5日土曜日

「エッジを拾い、進化させろ!」~カワサキで学んだこと(第323回報告)

今回は、持ち込みのトピックから始め、

「金融」

「セキュリティー」
「Liイオン電池」

などの分野について、分析と討議を行いました。


「Fintech」


という言葉に象徴されるような、新しい技術の流れも、しっかり押さえておきたいですね。


次週もよろしく。



今週、ご縁があって、ある分野の非常に著名な方のところで、


「発明塾」


を開催し、発明創出の支援を行ってきました。


参加者の皆様には、非常に活発な議論を行っていただきました。



また、事前学習で受講いただいた


✔ e発明塾「課題解決思考(1)


について、


普段の研究でも、とても役に立つ、よい考え方が学べた」

今回学んだ考え方を、日々の研究で、すでに使っています」

と、ありがたい感想をいただきました。研究は発明の連続でしょうから、むしろ当然なのかもしれません。



非常にベーシックなサイエンスの研究をされているチームですが、同時に、「用途」「実用化」「知財先行」をキーワードに掲げ、積極的に活動を進めておられます。

発明塾の手法は、「開発」「研究」「用途探索」「知財の先行確保」「知財戦略の立案」「先行特許を回避した発明/製品アイデアの創出」など、

「技術の実用化」

に向けた様々な活動の段階で、幅広く利用いただけることが、改めてわかりました。


終了後、


「普段、楠浦さんは、学生さんの指導において、どのようなことに注意しておられますか?」

「いつも、あんな感じで、”自由に”議論させているのですか?」

と、ご質問がありました。



「”自由”の前提に、”型”があること」

「皆が共通の”型”を踏まえて行うため、”自由な討議”が成り立つこと」

を、説明させていただきました。


また、


「アイデアそのものではなく、そこに潜む”エッジ”を拾うこと」

「答えを言いあうのではなく、周りから正しい答えが引き出せる”問い”にこだわること」

も、お話しさせていただきました。



歴代の財務長官、FRB議長の自伝は
とても参考になります。
特に「金融危機」を経験した方々の自伝は・・・


そういえば以前、ある方に


「楠浦さんの質問には、”愛”がありますね」


とご指摘(?)いただいたことがありました。




実は、この


「エッジを拾う」


考え方の原点は、


「カワサキでのオートバイ開発経験」


にあります。



カワサキ入社時に乗っていたのは ZZ-R1100WIKI, Mr.Bike) という、当時世界最速(最高速度300km/h以上)の カワサキ製オートバイ ですが、その源流は


GPZ900R → GPZ1000RX → ZX-10


と、あるバイク雑誌曰く


「最速の系譜」


と呼ばれる、一連の


「改良機種」


にあります。一部の重要なエンジン部品にさえ互換性があるぐらい、


「(特にエンジンは)できるだけ変えずに、かつ、オートバイとしては大胆に変える」


ことで、


「最速」


を維持してきた機種達です。


すこしづつ手を入れ、10年以上にわたり「世界最速」を維持し続けてきたオートバイには、典型的な


「カワサキ流」


が現れています。

(私がカワサキにこだわったのも、「10年以上、世界一に君臨できる機種群」を作れる企業が、当時、他に見当たらなかったからです)

これらの機種に用いられているエンジンは、結果として、非常に信頼性が高く、かつ、性能も高いエンジンとして進化し続けていました。



互換性がある、と言いましたが、部品1つ1つは丁寧に見直されており、互換性はあるが、同じ部品ではない、という非常に丁寧な作りこみがなされているエンジン達です。


エンジン設計に配属された後、ことあるごとに関連する設計図を

「よくできているな」

と、眺めていました。後に、後続機種のトランスミッション設計を担当しましたが、その時も

「トランスミッションとして、互換性を持たせる」
「時代に合わせ、最新技術を取り入れ、性能を向上させる」

方針にこだわりぬいて、設計しました。アフターマーケットで、カワサキのエンジンがどのように扱われているか、よく知っていましたから、「互換性」は絶対に外せません。

「制約条件が厳しいほど、よいアイデアが出る」

ことを、実感した仕事でした。


最終型のZXT10(C,D)は、今でも部品表を持っているぐらい思い入れもあり、好きなエンジンです。

(ZXT20になり、クランクケースから新作されているのは、オートバイファン・カワサキファンはご存知の通りです)

街中で、二人乗りでUターンしても何の不安もないぐらい車体の取り回しも抜群で、非の打ちどころのない、まさに「名車」でした。




もう一つは、僕が入社後すぐ担当した「W650(WIKI, Goo Bike)」のような、


「コンセプト(見た目)はそのままに、中身を ”最新技術” で大胆に変える」


という流儀です。


クラシック系、アメリカン(クルーザー)系の開発機種に、この傾向がありました。


W650は、


「カムシャフトのべベルギヤ駆動」

(厳密には、ハイポイドギヤ駆動、です)

をはじめ随所に、最新の技術を盛り込んでいます。


「空冷ツイン」


という、一見レトロなオートバイに


「そこまでやるか」


という感じでした。



まとめましょう。


「何を変え、何を残すか」


これが肝なんだな、ということが、まさに”身にしみた”5年間でした。


そのメリハリが


「カワサキらしさ」


を生み出していました。



なので僕はいつも、ある塾生さんのアイデアを取り上げるとき、


「エッジ」


を取り上げ、それ以外を


「大胆に変え」


でも、


「その人のアイデアとして、きちんと進化する」


ように、進めます。



それが、僕がカワサキで学んだことだからです。