「発明塾®」へようこそ!: 11月 2016

2016年11月23日水曜日

「意図」を読み、「突破」する~11月22日「特許網突破」セミナー御礼を兼ねて

11月22日開催の「特許網突破」セミナーへご参加いただきました皆様、改めて御礼申しあげます。

 また、開催に向け告知・ご案内などでご協力を賜りました皆様、篤く御礼申しあげます。 ご都合がつかず、お申込みいただけなかった方、次回、あるいは、弊社の他のセミナーにて、お待ちしております。


12月15日 「制約思考」セミナー 

1月18日 「未来創造設計書」セミナー


ご質問やご感想を頂いた部分を含め、内容の振り返り、また、補足をさせていただきます。




● どの出願に注目して作業を開始するか~「核となる技術思想」を見出すために


今回は、「数百件」の特許から、


「核となる技術思想」


をどのように見出したか、情報分析の過程と、特に重視した特許の一部について


「技術思想を把握する」


作業を紹介し、また、追体験いただけるような演習を入れました。



また、注目すべき出願を選び出すための手法について、一部


e発明塾「特許情報分析」


の抜粋も提示しながら、


「弊社で独自に開発した手法」

「今回用いた、審査経過や分割出願の経緯を用いた手法」

など、いくつか、試していただきたい手法を紹介いたしました。



特許情報分析の基本的な「型」や、注目すべき出願の選定法の基本的な考え方については、


e発明塾「特許情報分析」


を参照ください。演習課題に沿って受講を進めていただければ、一通りの手法と考え方が身につくように、設計された講座です。



僕の数学についての知識の範疇を超えていますが、たまに読み返すと
「ああ、高校の時の”塾”の数学の授業は、これがネタだったんだな」
という気付きがあります。
僕はこういう「元ネタ」探し/推論が好きです。
数学は、背景にある物理や経済などの事象を
理解することも含め、一つの問題を長く楽しめる点で好きです。
ただ、周りの同級生と比較すると、決して得意だったとは言えません。
(ので、数学のネタ/話題は振らないでください)


● 請求項に表現されている技術的思想と「実体」は?~難解なパラメータ特許を読み解く


あくまで結果論ですが、紹介した「突破」作業において、当時、発明塾で注目した特許の大半は、いわゆる「パラメータ特許」でした。物理/化学的な実体を、ある種の方程式(数学)を用い、概念に変換し、表現されていましたので、それらを


「逆に読み解く」


必要がありました。ここで重要なことは、


「どういう実体を、どこまで取りたいのか」


についての仮説と、


「そのために、どういう数学を用いているのか」


を仮説検証的に推定していくことです。



今回紹介した特許の一つは、


「溝幅ゼロの溝」


を取得する目的の特許であることが、そのパラメータの設計から、すぐにわかりました。

(明細書中の記載も、参考になりました)


また、別の特許では、数値の関係と


「円」


をもちいて概念を構成していたため、その背景に


「三角関数を用いているのでは?」


という仮説を立て、解いたところ、


「あっさり」


解けました。

JP355096 です。興味ある方はぜひ、トライしてみて下さい。)

もっとも、実際に塾で議論した際、当初は全員


「????」


でした。沈思黙考すること数分後


「解けた!!!!」


となり、あわててホワイトボードでいろいろ図示し、周りの塾生さんに検証を求めたことを、今でも鮮明に思い出します。


まさに、ちょっとした数学の問題を解く感じでした。

(さほど高等な数学は使いませんので、これぐらいでよければ、とても楽しいです)



● 我々が学んだこと~「実体」、「技術思想」、そして「パラメータ化」


セミナー中、資料に書ききれなかった、様々な気づきを紹介させていただきました。


「拒絶理由への対処法」

「分割出願の利用法」

もさることながら、やはり、


「実体を、どう、思想化し、表現するか」

「思想を、どのような数学を用いて変換し、請求項として表現するか」

について、特に気づきが大きかった特許群です。



拒絶理由への対応など、一部内容は、以下

e発明塾「本質から学ぶ特許概論」

に、収録しています。ぜひこちらも、ご参照ください。


個人的には


「数学をどう使うか」


について、とても考えさせられました。


発明塾生の大半も、度々混乱していましたので、多くの発明者には


「一見では、理解不能(つまり、近寄らないようにしようと思わせるに十分)」


な出願/特許だったと思います。



同じように考えて出願すれば、


「多くの人は、近寄りたくない」


出願が出来上がる、と考えています。

(一部、弊社の出願でも、実践しています)


「巧妙を超えて、”狡猾”」


な出願/特許だなぁと、いつ読んでも感じます。




今回ご参加いただけなかった方、また次回、ぜひ討議させていただきたく、よろしくお願いいたします。



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2016年11月21日月曜日

「自分がオモロイと思う」ことが、とても重要~「エッジ」を活かす討議、殺す討議

発明塾で、僕が重視するものの一つに

「”変”がある人のもたらす情報や視点」


があります。


誤解があってはいけないので表現が難しいのですが、


「”あの人ちょっと変わってるよね”という感じで見られがちな人」

(僕の隣の人が、その場で、”そう”言った場合も含まれます)

を指すと考えていただいても、大きくハズレてはいません。経験上、


「すごく大人しい人」


なんかも、含まれています。



たとえば、過去の例(*)では、


「アイデア豊富な、すこし奇抜なファッションの方」

(表現が難しいのですが、丸めすぎても伝わらないので、今回はこれでご容赦下さい)

が、おられました。


その方は、Grワークで、他のメンバーの方から


「少し浮いた」


感じになっていました。


これは、よくあることです。



その方の


「思考回路」(発明塾的な意味/観点です)


が把握できていましたので、それをもとに


「その方の強みを、どう活かすと、チームとして結果が出るか」


というお話を、その場で丁寧に、チームの皆様へさせていただきました。



その後の議論は、とてもスムーズに進み、よい成果に繋がった、と僕は思っています。



発明塾で言う


「良い仲間と、良い議論」


の一つであり


「創造的な議論の技術」

「創造的な組織の作り方」

の一つです。



Amazon.co.jpのサイトへ移動します)
「書くことで、創造的になれる」
同感です。


2013年前後の発明塾において、僕がいつも討議をしていたのは、


「帰りの電車が同じ方向」


だった、ある塾生さんでした。

(今は、大手製造業で、技術者として新規事業/新製品開発に携わっておられるようです)


運の良いことに彼は、


「僕とは違う思考回路」(発明塾的な意味/観点です)


を持ってくれており、


「発明塾より、帰りの電車のほうがいいアイデアが出る」


ぐらい、よい討議が出来る仲間でした。

(彼が、職場で、その「個性」を活かしてもらえていると良いのですが・・・)


「同じ意見を、二人が言うなら、一人は不要」


当時の僕の口癖の一つでした。


”人と違う”ことありきで、考えすぎたり、こねくり回したりするとおかしなことになりますが、素直に


「これオモロイよね」

「ここがオモロイよね」

という


「異見」


が出て、それをひとつひとつ取り上げ


「育成する」


それが、発明塾式です。



「チームで創造的になる」

「組織として創造性を発揮する」

そういう技術を身につけたメンバーが集まって討議する、それが


「発明塾」


の理想形です。



良い手法と、良い仲間があれば、可能です。






* 企業内「発明塾」参加者の方です。また是非お会いしたいと考えています。
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2016年11月18日金曜日

「問い」を立てるのが「投資部」~第352回/第353回(投資部第7回/第8回)報告

2回まとめての報告で失礼します。
(昨日は急遽、投資部に振り替えました。)

「S&P500を、毎週数社づつ見る」

など、各自の目標を定める人も出てきました。

いいことです。


ここまで、医療デバイス/医療サービス系の企業を中心に見てきましたが、早めに、いろいろな業界の企業を見ておくほうがよいと、個人的には思います。

「意外な組み合わせ」

が発明の大きな要素であるのと同様、

「意外な気づき(共通点、相違点)」

に気付くことが、

「投資アイデア」

につながります。


また、

「ビジネスモデルの転換」

について、投資アイデア出しを行うためにも、重要です。


今回取り上げた2社は、

「画像処理」
「飲料」

と、大きく異なる業種の企業でした。


「それが、どう、数字に反映されているか」

面白かったのではないかと思います。

偶然ですが、両社とも

「M&A」

に特徴がある企業でした。

飛躍的によい「問い」が立てられるようになる、
いろいろなヒントをくれる本です。
学生時代に「英文和訳」「和文英訳」の
問題を大量に作成していた時、常に考えていたことが、
いくつかここに書かれていました。
いろいろなことは「繋がっている」んですね。
(怪しい本がお嫌いな方には、お勧めしません)


後者の企業は、「ファミリービジネス」から脱却しつつ、

「ブランドビジネス」

として、大きく世界に展開しようとする

「転換点」

に立っているのではないか、という仮説を立てました。僕は、経験にもとづいて

「長期資金の調達(借り換え)」
「在庫と借り入れの関係」
「短期負債と長期負債の関係(増減)」

など、数字の関係を1つのきかっけとして、上記仮説を導きました。

こういった

「経営の実態を、数字から読み取る」

作業を通じて、実際の経営の現場を

「実感」

してもらえればよいなと、思っています。
(そのあと、Proxy Statement をみて、ある程度、ウラは取れました)


ちなみに、今のタイミングで

「借り換え」

を行っている企業はそれなりに多く、例えば、以前取り上げた

「アルトリア」

も、今後に備えて長期資金の借り換えを行っています。
(正確には、社債の前倒し償還と再発行)


時間があれば、直近の各社決算動向から何がわかるか、説明/議論しておきたいところです。



こういう動きを読み解くことを通じ、

「経営者が、日々、様々な情報をもとに何を考えているか」

を知ることは、皆さんが将来

「コトを起こす」

際、役に立ちます。


「なぜ、いま、こういう手を打つのか」

この問いをもとに、機会を見つける問いを次々と立てていくのが、

「投資部」

です。


「投資機会の目利き」

を積み重ね、結果を出しましょう。


それは

「アイデア/発明の目利き」

そのものですから。


ではでは。


2016年11月15日火曜日

「見えない相手」に「一歩」先んじる~発明の原点/「エッジ」と「仮説」

前回の

「出図」をめぐる思い出~「設計」という仕事/京都大学講義「ものつくり講義2016」

について、あるOBさんから


「実は、同じようなことを最近、後輩によく話しているんですよ」


というコメントを貰いました。


とても、うれしいですね。


発明塾で伝えた

「Spirits」

が、

「水の輪」

のように、その企業でも広がっていけばよいなと、思っています。


ちなみにこの

「水の輪」

という言葉は、川崎重工の教育方針の一つです。
(僕の在籍当時、の話ですが・・・そうそう、簡単に変わるものではないと思います)

「気づいた人、学んだ人が、そのエッセンスを周りの人に、まず伝えていく」

ことで、素早く/継続的に組織能力の向上を図る、という活動を指しているそうです。
(在籍当時、社内の「材料強度学」研修講師の方に、教えていただきました)



CMに「発明」そして「エジソン」。
時代ですね。
電気自動車の「ウィーン」というサウンドも相まって、
「技術の日産」を感じさせる、ワクワクするCMです。


「前倒し」
「攻める」

ことの重要性の喩えとして、僕がよく引き合いに出すのは


です。ときには、数日間走り続けて、差が1秒以内、といった過酷なデッドヒートになるレースです。
(学生時代、よくレースをTV観戦していました)


このレースでは、

「相手は見え」

ません。各自、単独走行し、その累積タイムを競う競技です。

にもかかわわらず、差が一秒以内になるということは、

「ギリギリまで来ると、並大抵では差はつかない」

ということだと、解釈しています。


この

「見えないけど、相手はギリギリまで来ている」

という感覚が、僕の

「設計(商品開発)」
「発明」

の原点です。


「まぁ、この辺まではやってきているよね」
「さらに一歩、抜くにはどうするか」
「今、リードできるだけリードしておきたい」

そういう感覚が、発明塾の発明法、特に

「エッジ」
「仮説検索」

につながっています。


この視点から特許を読むと、

「特許情報は、あるものとないものの、丁度中間」

の、非常に面白い情報になる場合があります。

逆に言うと、

「あるものとないもの」

を示す特許情報を、好んで読む、のかもしれません。


「見えない相手の、気配を察する」

そんなことが、特許情報分析の醍醐味だと思っています。


こういう

「Spirits」

を、発明塾の活動を通じて、広げて行きたいですね。



楠浦 拝



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2016年11月6日日曜日

「出図」をめぐる思い出~「設計」という仕事/京都大学講義「ものつくり講義2016」

前回も触れたのですが、「設計」の仕事につく/志す塾生が増えていること、また、先日、京都大学での講義で、担当教官の方にお伺いしたところ、

「最近、重工系の企業志望者が増えているんですよ」


とのことをふまえ、講義に出席頂いた学生さんへの追加情報提供も兼ね、今回も、


「設計という仕事」


について、書きます。



今回は特に、設計者の


「アウトプット」


である、


「図面」


の提出(締切)、いわゆる


「出図」(出図日)


をめぐる思い出を取り上げます。



カワサキ(川崎重工)、コマツ(小松製作所)、いずれでも設計者としての仕事を行って感じましたが、設計者の仕事がどこまでか、は、企業により、かなり大きく異なります。

(個人の裁量/意欲によっても、大きく変わると思います*)

しかし、設計者のもっとも重要なアウトプットが


「図面」


であることは、多くの設計の仕事において、共通だと思います。


そして、アタリマエですが、図面には


「締切り」


があります。


製品は、図面がなければ


「作り方の検討」


すらできません。したがって、出図が遅れると、すべての工程が遅れます。

(実際、僕が担当した機種でも、細かい理由はともかく「大きくは設計に起因する色々なトラブル」で発売日が遅れ、多くの方にご迷惑をおかけしました)


オートバイのエンジン担当の場合、1回の出図期間中に、大小様々な図面を100~150点分以上提出し、納品図/や仕様書を数十点確認/承認し、組み立て等に使う図面を数十点提出するなど、


「図面の作成と承認」


に明け暮れます。これが、開発ステージによっては、年に2回来ますので、新機種開発担当になると・・・という感じです。今はわかりませんが、出図後にお盆休み、正月休みが来ることが多いため、納入される部品の確認、製造/各種テストの立会いや不具合対応などに、それらの休み期間が充てられるという、合理的?なスケジュールになっています。



京都大学講義より



出図/承認は、


「大物から小物へ」

「完成品から、機械加工(マシニング)、素材へ」
「部品から組み立てへ」

と行われます。



大物の出図が終わり、小物出図をしていると、生産技術/製造担当の方から、


「このままでは、モノが作れないので・・・」


という、例の


「呼び出し」


がかかります。


言われるがままに承認していると、


「作りやすいかもしれないけれど、カッコ悪くて、重くて、性能が全く出なくて、すぐに壊れる」


ような製品ができあがってしまうため、こちらも知恵を絞りながら


「ギリギリ」


を攻めます。



多くの場合、


「この部品を変更すると、隣の部品も変更しなければならない」


ぐらい、元々攻めた作り込みがなされているため、時には


「強度計算」


からやり直し、つまり、設計をやり直して、


「関連図面を全て変更する」


ことになります。


「設計変更」


と呼ばれるこの作業によって、再提出する図面は、指数関数的に増えていきます。

(一回の出図期間中に、おそらく500枚以上、図面を書くことになります)
(一点の部品/図面を、数十回設計変更/改訂することも、よくあります)


製造部門での「試作」が始まると、このやり取りは、更に頻度を増します。


「やってみたら、できなかった」

「こうなってしまった」

そんな連絡が、怒涛のように押し寄せてきます。たとえば、エンジン設計の担当者は、300点以上あるオートバイのエンジン部品全てを見ているため、電話やFAXへの対応、現場/現物の確認だけで、日々終わってしまいます。


「とにかく、発売日に、ファンの期待に応える製品を間に合わせる」


ために、


「つくれるか」

「性能は出るのか」
「安全か」
「コストは問題ないか」

という、


「トレードオフの塊」


でしかない難問を、


「毎秒毎秒解き続ける」


それが、設計という仕事です。



そして、


「解を、後工程の人がわかるように表現する」


のが、


「図面」


です。


一つの図面が出図締切に間に合わないと、その後、加速度的に出図が遅れます。


たとえば、図面を待っている


「購買担当者」(協力企業へ、見積もり、検討を依頼いただく方)

「製造部門/生産技術担当者」(組み立て、機械加工、熱処理、素材、金型・・など、細かく別れます)

方への配布が遅れないように


「自分で印刷して、配布する」


必要が出てきます。場合によっては、


「直接持参」


することもあります。


既に遅れているのですが、これらの追加作業により、さらにどんどん遅れます。



「どこかで大きく挽回する」




「もともと、かなり前倒しで出図する」


ようにしないと、出図期間の最後の頃は・・・になります。


元々のスケジュールがハードなため、体を壊す関係者が出たりすることも、しばしばあります。すると、さらにハードなスケジュールになります。



塾で、「前倒しでやってね」と繰り返し言うのは、上記のような経験があるからです。


明日どうなるかわからないため、今日時点で、できるだけ


「ゲイン」


しておく必要があります。経験上、だいたい


「明日の状況は、今日より、かなり悪くなる」


ものです。


「遅れに遅れまくっても、誰も助けてくれない」


ため、


「最初から自分で、完遂できるように、いろいろなことを組む」


しかありません。



こう言うと、


「そんな大変な仕事はやりたくない」


と思うのではないか、と僕は思っていますが、塾でこういう話をする度に、なぜか塾生さんは


「設計者になりたがる」


ので、とても不思議です。



ボストン・ポップスの指揮者 キース・ロックハート が


「責任中毒」


という言葉で、指揮者という仕事の面白さを表現しています。


「設計者と指揮者」


共通点がある気がします。



長くなりましたので、続きはまた。



今年も、忘年会は、東京・京都それぞれ行いたいですね。


スケジュールが見えてきたら、また連絡します。



楠浦 拝



* 僕は、口を出しすぎて?、「エンジン製造ライン出入り禁止」になったことがあります(笑



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