2016年7月30日土曜日

「エッジ」から始めると話が早い/ラストワンピース(L.O.P)~第339回報告

前回の続きで、

「今後、どのような分野を攻めるか」
(発明テーマの選定)

の議論を2つ行いました。


「発明テーマの選定」

第一歩は、

「エッジ情報(エッジ特許)」

選びです。


既に、

「注目企業/業界」

情報を選定してくれていましたので、

「なんで、そこ選んだん?」

という、いつもの

「なぜなぜ」

から始めました。安富くん曰く、僕はかなり頻繁に

「なぜなぜ」

言うらしいです。(いつもなぜなぜ言いますね、と言われたことがあります)


これはたぶん、

「川崎重工でのオートバイ設計」

で鍛えられたのだと思います。

発明塾京都第147回開催報告~「常に100%を目指せ」
「XXさんがOKと言ったので・・・」は卒業しよう~(卒業生に贈る、第329回報告)


「ここの公差、なんでG7なん?」

とか、現場のおっさん達に問い詰めまくられますから・・・。


で、すらすらこたえられないと、

「お前の言うことなんか、聞けるか!」

になって、作ってもらえませんから・・・。


「十分な予習」

を、何事につけ心掛けるようになった、というか、改めて学生時代の習慣を思い出し、出直すことになった、それが川崎重工時代でした。それは、前職の Start-Up 時代に造り上げた

「特許情報をもとに、互いに得るものが大きい、建設的なヒアリングを行う」

ための技術へつながります。

「特許情報分析法」

の流行りを追いかけても、あまり意味はありません。

「何のために調べ、どう生かすか」
「行動につなげ、収益を上げる」

ための活動として、すべての作業を

「統合」

していくことが重要です。小手先のテクニックを追いかけ、分析法/分析ツールだけを

「コロコロ」

変えても・・・。



今回は、ある日の本棚の一部を掲載します。
僕は「本を入れ替えながら、考えごとをする」タイプです。
ここにある本の一部は、すでに絶版です。

Amazon と Google のすごいところは、
「彼らのサービスが無ければ、永久にアクセスが出来なくなっていたであろう”知”」
へのアクセスを「可能」たらしめていることです。
皆さんは、「あなたがいなければ、できなかったであろう」どんなことを、
今から可能にしますか?

僕が皆さんに「早く発明出して」というのは、つまり、そういうことですよ。
「あなたでなければ、誰が?」
「今でなければ、いつ?」

ビル・ジョージの本に「出てくる本」(引用)を、塾生さんには、
どんどん読んでほしい。
僕は昔から「引用解析」をして、本を選んでいました。
いまの「エッジ」探索と同じです。
身に染みついた「習慣」がら、発明塾の方法は
生まれてます。

取って付けたような話では、成果は出ません。



さて、今回の議論では、

「開始約40分」

で、

「これこれ!、これまさに”ラストワンピース(L.O.P)”やわ」

という、

「突破すべき、ちょうどいい先行例」(突破発明の題材となる、エッジな先行例)

が見つかりました。


見つかれば、簡単でした。


今回は、

「Tech」

ではなく

「BM」

視点で、

突破

しました。


この辺の見極めも、皆、慣れてきましたね。

ストレスなく議論できる環境があれば、1時間以内で1件処理できることが、改めて示されました。


次回までに、

「詰め」

をよろしく。



楠浦 拝

2016年7月29日金曜日

「Nike」が預言する「靴の未来」(1)~エッジ特許をどう選び、どう読むか

はじめまして、橋本純一(はしもとじゅんいち)と申します。
[AIPE認定 知財アナリスト]という資格を有しております。


本コラムでは、発明塾が注目する「エッジ情報」のうち、

✔「エッジ特許」

が予見する未来・出願人の意図を読み解きます。


今回は、「靴」を取り上げます。


その前に、簡単に自己紹介をさせていただきます。



● 顧客価値の仮説立案に、特許を使いこなす
私は、過去、事業機会探索のための特許情報分析システムの開発・企画などに、従事していました。


当時は、システムが技術的に実現可能なことを顧客ニーズを当てはめ提案しているだけで、
顧客が本当に求める価値を提供できていないのでは、と思いがありました。


そんな折、発明塾塾長である弊社代表楠浦の技術マーケティングセミナーに参加しました。



楠浦の、実際に「特許を使いこなす」ことで得られた

✔ 顧客のセグメンテーションを特許情報から絞り込んでいく
✔ 特許情報から顧客価値の仮説を立てる

という知見は、私にとって、とても刺激的でした。



さらに、発明塾で取り組む、

✔ エッジ情報にもとづいて、「一番乗り+急成長+独占=高収益」なネタ(テーマ)を効率よく見つける

という考え方に共感し、この情報分析方法をより多くのクライアント企業に広め、
研究/開発活動を支援したいと考え、2012年 TechnoProducer株式会社入社しました。



現在は、発明塾から生まれた知見をもとにした「e発明塾」の各講座、例えば


などの開発を担当しています。



また、エッジ特許を分析することで、相手の意図を読み、

✔ 課題を「先読み」する
✔ 競合より、圧倒的に優れた解決法である
✔ 他社特許網を乗り越える
✔ 全く新しいコンセプトで、土俵を変える

ようなアイデアを創出する活動を行っております。



本コラムでは、その活動の一部をご紹介します。


✔ 特許読むのに不慣れな方でも親しんで頂けるよう、難しい用語は使わず、わかりやすい
✔ 特許を読み慣れている方は、エッジの読み方/見つけ方への気付きがある


今回は、そんな記事を心がけました。



● なぜエッジな「特許」に注目するか?
今回は、数ある情報源の中で、エッジな「特許」に注目します。


特許情報は、企業情報 + 個人情報 + 技術情報 がすべて記載されているため、
「どこの」「だれが」「なにを」やろうとしているかがわかります。


これを例えば、「だれ(発明者)」でグルーピングし、その構成人数や継続性を見ることで、
企業の組織活動としての本気度を評価することができます。



さらに、特許情報には、優先権主張、分割出願、国際出願、外国出願、共同出願など「出願人のアクション」についての情報があります。

これは、特許「制度」に起因するもので、当たり前ですが、論文などには見られません。


これらの情報から、その企業がどの程度、権利化/事業化に向けて意欲的に活動しているか、を把握することができます。


さらに、その特許を引用している他社の存在や、権利譲渡/ライセンスの情報などを見ることで、その技術の注目度を把握することができます。




このように特許情報から、その企業の取り組みの本気度や技術の注目度を読み解くことができます。



● 「NIKE」のエッジ特許を読む
では、実際にエッジ特許を見ていきます。


過去の「靴」についての記事で、「Nike」に注目していました。


今回は、特に他社から多数引用され、注目度の高い特許を読み解いていきます。


この特許は、靴にセンサを付け、ユーザーの活動を監視する発明です。


「技術の流れ」を知るため、特許の被引用特許(forward-citations)を見てみましょう。

Google Patents より)
正直、ここまで無料で見れれば、発明には十分です。
Google が「発明を加速」してくれていることは、間違いありません。


「Apple Inc.」や「Adidas International Marketing B.V」、「Fitbit, Inc.」など
よく知られた企業のほかに、過去の記事で紹介した「Garmin Switzerland Gmbh」も名を連ねています。

それ以外にも


✔ 未だ知られてない「最先端」「急成長市場」


を予見させるような"意外"な企業がありました。


その一つが「Bioness Neuromodulation Ltd.」です。



では、この「Bioness」の存在は、何を意味するのでしょうか?


次回は、エッジな情報から、ウェアラブルデバイスとしての靴のトレンドを読み解いていきます。



2016年7月28日木曜日

「デジタルメディスン」「精神科医療」の動向と「大塚製薬」の戦略~食べる電子部品の出現/エッジ特許紹介

今回は、メール講義を購読されている方から多くの反響があったメール講義取り上げ、内容を補足する形式で、紹介いたします。

取り上げるのは、Vol.91(2016年7月4日号)です。
テーマは、「食べられる電池」でした。



● 「デジタルメディスン」の動向

メール講義では、「食べられる電池」の使い道として、

「スマートメディスン("デジタルメディスン"、または、"デジタル化錠剤"とも呼ばれます)」
※ 引用する記事によって呼び方が異なります。本記事では主に「デジタルメディスン」を用います。

を紹介しました。


2015年9月14日、大塚製薬の抗精神病薬「エビリファイ錠」に、
米Proteus Digital Health社のセンサーを内蔵した錠剤の新薬承認申請(NDA)を、
米国FDAが2015年9月8日に受理したことが発表されました。

センサー内蔵の錠剤「デジタルメディスン」が登場(日経デジタルヘルス)


「Proteus Digital Health社」は、
システム大手「Oracle」社と、「データ管理システム」の開発を進めています。

オラクルとプロテウス,「Proteus Digital Health Feedback System」を「Oracle Health Sciences InForm」に統合し,臨床試験データの精度を向上(gihyou.jp)


上記の記事の中に、以下のような記述があります。

プロテウス・デジタル・ヘルスのグローバル開発部門責任者であるマーカス・クリステン氏は,次のように述べています。「この服用遵守オプションは,臨床試験において最も重要な情報である『被験者である患者様が適切に薬剤を摂取したかどうか』という点に対応するユニークなものです。この強力な新しいデータと,Oracle Health Sciencesのテクノロジーや分析,様々な機能を組み合わせることによって,製薬企業には新薬開発プロセスを根底から変革できるチャンスが生まれます。」


Proteus Digital Health社のHPを見てみると、「パートナー」として、

 「大塚製薬」と「Novaltis」

が記載されています。

About Proteus Digital Health(「Proteus Digital Health」HP)



● 精神科医療とデジタルメディスン~「大塚製薬」の動向から

その「大塚製薬」ですが、2016年6月13日、「日本IBM」と、
精神科医療に対するデジタルヘルスソリューション事業を手掛ける合弁会社
「大塚デジタルヘルス」を設立する、と発表しました。

「大塚製薬×IBM Watson」、デジタルヘルス参入(日経デジタルヘルス)

大塚製薬の統合失調症治療薬「エビリファイ錠」は、
同社の医薬品事業を支える「稼ぎ頭」でしたが、2015年に「特許切れ」を迎えています。




特許切れを見据え、「着々と」準備を進めていたのでしょうか。

同社の中期経営計画を見てみると、

「デジタルメディスン」
(大塚製薬は「デジタル化錠剤」と呼んでいます。)


さらには、

「付加価値」を加えた薬剤治療の提供

へ「事業を進化させる」とあります。



精神科医療では、

「症状や病歴など重要な医療情報の多くが、データベース化されていない」
「患者自身(または患者家族)による適切な服薬管理("拒薬"や"怠薬"など)」

という「課題」があり、デジタル化の流れとも特に「相性の良い領域」のようです。


これらの情報から、「 医薬 × 製剤 × ICT の複合領域」では、
競争優位の源泉が、従来の「発見・探索」から「発明」へシフトしていくことがうかがえます。


今回はこのあたりで一旦打ち切りますが、
発明塾は、引き続き「医療・ヘルスケア分野」に注目し、"エッジ情報"を蓄積・情報提供していきます。

続きはまた、どこかで。

最後に配信文を掲示しておきます。
(配信申込は、こちら




==以下、配信文(エッジ特許関連を抜粋)

「「「 「食べられる電池」エッジ特許を読む~その使い道は? 「「「


今回は、現在発明塾で情報収集中の「仮説的」なテーマ「電子部品の消耗品化」に関連して、

「食べられる電池」

についての、エッジ情報(エッジ特許)を紹介いたします。まず一つ見てみましょう。

US8722228

Food Grade (食品グレード)の電極を持ち、唾液により電流発生を開始する、などと
記載されています。何に用いるのでしょうか?
(詳細は、「embodiment」として、記載があります)


一つのヒントとして、以下「スマートメディスン」があります。

センサー「服用」で慢性疾患を管理 米で実用化へ:フォーブス

服薬管理ができる医薬を提供しよう、ということのようです。
関連特許の例として、以下があります。図面から、だいたいの構造がわかります。

US20080284599

薬を飲みこんだかどうか、胸のあたりに貼り付けたアンテナで検出する仕組みになっています。

以下で取り上げた「遠隔医療(TeleHealth)」とも関連が深い技術です。

後発薬と低侵襲医療のトレンドが交差するところにいるのは・・・?(医療機器エッジ特許分析その後)



他にも、Johnson & Johnson による、「微粒子から電流を発生させ歯磨きや化粧品などに用いる」
という発明についての出願が目に留まりました。

US20120021014

こちらは電子部品とは呼べませんが、「電流発生」を何に使うか、という点で参考になります。



==ここまで



2016年7月25日月曜日

「強い特許」と言うけれど・・・~特許出願「量より質」?問題/よい経験を効率よく積む

現在、「特許出願」予定の発明について、発明塾で

「明細書作成」

作業を行っているメンバーがいます。



以前から、度々触れているように

「どう権利化するか」



「どういう発明を創出するか」

は不可分であるため、請求項/明細書作成は非常に重要な作業です。


権利化を踏まえた「発明の強化法」は、既に、e発明塾「強い特許の作り方」として教材化してあります。

「事業化・権利化を見据え、自身の発明を、”再発明する”」

という、

知財的再発明」*

の考え方は、ぜひ学生時代に身につけておいてほしいものの一つです。

* 「知財的再発明」は、TechnoProducer株式会社の登録商標です。


安富くんは、わかっていると思いますが、
「知財的再発明」能力は、拒絶理由通知との
「対話」を繰り返す中で、磨かれます。


実践の貴重な機会ですから

「よい経験を積みたい」

と考える、意欲あるメンバーは、ぜひ、この作業に参加してください。

多くの企業で、特許出願は

「量より質」

という方針であり、皆さんが企業に入っても

「出願に至る発明」
「自身の発明の権利化に携わる機会」

は、減っていくかもしれません。


上で述べたように、「発明と権利化は不可分」であるため、

「よい発明の創出に必要な経験を積む機会」

が減ることを、意味します。

e発明塾「強い特許の作り方」で疑似体験をしつつ、めったにない、実践の機会を利用して欲しい。

e発明塾「強い特許の作り方」は、僕が自身の発明を権利化する過程で得た知見と技術をもとに、開発した教材ですから、皆さんの力になるはずです。



数多くの「自身の発明」を、日米で権利化してきた経験を振り返ると、

「自身の発明を権利化するために、拒絶理由通知に対応する」

を繰り返す中で、

「発明を権利化するとは、どういうことか」
「権利を勝ち取るために、何が必要か」
「どのような先行技術が出てくるのか」
「そもそもその権利、取得してどう活用するのか」

など、様々なことを考え、

「知財的再発明」

の全貌が理解できるようになるのだと、痛感します。そして、発明の全過程を踏まえ、権利化に臨むと、

「全く異なる景色」

が、見えてきました。結局は、この繰り返しです。


「拒絶理由への対応」については、e発明塾「本質から学ぶ特許概論」の後半で、詳しく取り上げています。

こちらは、僕自身の発明について取り上げるのは難しいため、発明塾で読み解いた特許の中から、特に、

「権利化が巧妙」

だと感じた、3M社の特許を取り上げています。



自身の発明が出願される際、特に、米国の代理人とやりとりする場合、僕が最初に行うことは、

「第1請求項(First Claim)の立案」

です。先方からも、独立項の案が来ますが、

「それとは関係なく」

自身で、請求項を書きます。


法律的にどういう表現がよいかなどは、先方の案が優れているでしょうが、

「発明の本質」
「事業と収益モデル」

を踏まえた請求項の立案は、権利化に慣れた発明者が行う方が適しています。


考える過程で、

「発明が進化し、磨かれる」

からです。もちろん、優れた代理人は、

「この発明は、もっと発展する可能性はあるのか?」

などと、より広く多面的に考えるように促してきます。経験上、米国の代理人は、その傾向が顕著です。



今回も、請求項案をもらいましたが、僕がいくつか

「より、権利化に値する発明へ」

と、進化させるよう、指示しました。


再考してもらったあと、ぜひ、メンバーで討議したいと思います。


「自分たちの発明を、強い特許にしてこそ、見えてくる」

ものがあります。

発明塾は、常に実践主義であり、実績主義です。

忘れないように。



楠浦 拝