「発明塾®」へようこそ!: 発明塾京都第107回開催報告~組織と個人の知的生産性を向上させるための「発明塾」

2012年11月1日木曜日

発明塾京都第107回開催報告~組織と個人の知的生産性を向上させるための「発明塾」

Hi guys.

@京都 第107回も無事終了しました。

 今回も、結局持ち込まれたアイデアの討議でほとんどの時間を使うことになり、講義しようと思っていたことがなかなか出来ずにいますが、発明塾は「Output」志向の取り組みなので、良いことなのかも知れません。

 さて、塾生曰く「我々は発明塾3.0のステージに突入した」ようです。実際、持ち込まれたアイデアは、あれよあれよという間に処理されて行きます。自動車工場のラインを見るが如く、アイデアが次から次へと「仕上がっていく」様は、壮観でした。

 昨日は、始まって15分で「スパッ」と決着したK君の1件目を皮切りに、数件のアイデアを討議しました。間に、塾生自身による「発明塾思考回路講義」をはさみ、最後は質疑応答で時間切れとなりました。幾つか話題を見てみましょう。


1.オモロイアイデアではなく「ヤバい」アイデア
 この辺は「主観」=オモロイ、「客観」=ヤバい、というところでしょうか。一人で勝手に盛り上がってはいけない、ということですが、盛り上がらないと進まない人も多いと思うので、難しいところです。「オモロイ」を「ヤバい」に「変換」する回路が、発明塾思考、だと思います。コツはかんたんで、白白白黒を白白白白にするだけなのですが。。。オセロみたいな感じです。知的ゲームです。


2.なぜ発明塾の「知的生産性は異常に高い」か
 それは皆さんが「十分な訓練を受けている」からです。皆さんは中学高校大学で「創造的な議論の方法」を学びませんよね。そのまま企業に入って仕事をすると、「眠い(もしくは寝ている)」「全員内職している」「何も決まらない」「何時間も続く」「じゃあまた、次にやりましょう」会議の目白押し、となります(注1)。

That is because you're well trained.

 ただ、それだけのことです。創造的な議論の手法を身につければ、知的生産性は劇的に向上する、というのは僕にとっては自明です。

 ちなみにもう一つ、集まらなくても良いアイデアが出る、というのも自明です。これまで、SくんやOくんが素晴らしいアイデアを出してくれた時、それは「SKYPE」での会話でした。やたらと無目的に集まりたがる人たちがいますが、「集まらないと出来ないことは何か」「集まらなくてもコミュニケーションできれば、できることは何か」「1人でできることは何か」「1人でやるべき(やらざるを得ない、を含む)ことは何か」を明確にすることで、知的生産性はさらに高まります。

 最弱リンク理論(注2)、という理論があります。たとえばこれは、材料学の世界では「強度に関する寸法効果」として知られています。要するに、

「大きな寸法の材料は、それだけ確率論的に大きな欠陥が含まれている可能性が高く、強度が低くなる」

ということです。ムカデ競争を思い出しましょう。人数が増えれば増えるほど、タイムは悪くなります。つまり、よほど訓練(もしくは設計)しないと、

「集団で作業を行うと、生産性(能力)が下がる」

ということで、これは「科学」のレベルです。「集まったら生産性が下がる」。これを頭に入れておいてください。どういう手順で議論を進めればよいかは、発明塾として決まってますね。憶えてない人は、頭ではなく「体に」叩きこんでください。

 ちなみに僕は、創造的議論の訓練ができていない人と話すと、話が遅すぎてイライラする、というのが目下の悩み。明らかに結果に向かわない議論、というのは精神を疲弊させます。「結論を出す」「結果を出す」。発明塾の鉄則として、再度明示しておきます。


3.「組織論?」の参考書
 たしか昨年の年末か年始に、発明塾後に鍋食って「知識創造企業」(野中)ぐらいは読んどけよと、言った気がしますが、その続きの本について質問が来ました(一昨年だっけかな)。

①「最強組織の法則」ピーター・センゲ>これはリコメンド済み。
②「「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質」>組織による知の共有、という点で野中氏の本よりもドロドロした部分を扱っている。
③「知のスピードが壁を破る」平尾>この本と「人はだれもがリーダーである」の二冊。
④鈴木大拙の「禅」に関する本>どうせ読む人はいないでしょうから、どれとは言いません。英語ベースのものが良い。
⑤「野村の監督ミーティング」>これは紹介し忘れ。追加。

 一般の人には見慣れない本もあるので、補足しておきましょう。①は有名なので省きます、彼の本はこれだけで十分です。ドラッカーと同じで、どれも同じことが書いてあります。②は野中氏の本が理論として完璧なのに対し、現場レベルでの疑問を掘り下げている本です。僕はそもそも教育自体を科学し、ビジネスにしたいと大学時代から思っていたので、この本はなかなか参考になっています。

 ③⑤は「スポーツ選手」「名選手名監督」という観点で、知の伝達の手本としています。他、スポーツ選手の本や言葉(たとえばイチロー、松井など)は広く参考に。④は、「禅とは、考え方を教える道である」と僕は考えているので、そこから出てきたものです。「考案」という独特の手法?を用いて、考え方を教え?て、悟りに至る。究極の「暗黙知」の伝達手法です。それでしか伝わらないものが、あるはずなのです。

 全てを「形式知」として教えることができる、という思想は危険だと思っているので、「禅」「考案」はそのための軸でしょうか。

「考案」的手法(暗黙知)←-------------------------------→「本」読んどいて的教育(形式知)

 常に両極端を考えることで、自分の正しい位置、振れ幅、スタンス、を知ることができます。


※注1)世の中には「あえて結論を出さないほうが得をするので、結論を出さないが、議論した結果は残しておいたほうが得をするので、会議をする」という、高度な戦術も存在するので注意。例)国会


※注2)「材料学と最弱リンク理論」
例えば以下P69参照。他の部分も、破壊力学の基礎なので理解しておくほうがよいですが。
http://kynmt.in.coocan.jp/NOTE/4_%E7%AC%AC%EF%BC%93%E7%AB%A0.pdf
(山本清彦 氏 のブログ)
一般論としては「ワイブル分布」など(理系大学生なら常識レベルでしょうが)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%AB%E5%88%86%E5%B8%83