「発明塾®」へようこそ!: 京都大学「起業と事業創造」(2014年度)_知財戦略_講義報告

2014年7月11日金曜日

京都大学「起業と事業創造」(2014年度)_知財戦略_講義報告

今年も、京都大学の全学共通科目「起業と事業創造」にて、知財戦略の講義を担当しました。

講義中、2度ほど討議時間を設けたところ、想定以上に非常に熱心に討議していただきました、ありがとうございました。


さて、私が京都大学で「知財と発明」に関する講義を行うのは、年に2回。

ひとつはこの「起業と事業創造」で、もう一つは、工学部の機械系2学科対象の、「ものつくり講義」です。「ものつくり講義」は、今年は11月に担当する予定です。

それぞれ、対象とする学生さんの専攻も、年次も違いますので、全く異なる内容になっています(注)。


今回は、経済学部・法学部の学生さんが多いと、事前に聞いておりましたので、内容もそれに合わせたものにしました。


以下、トピックだけ示しておきます。



・「国家間の産業政策交渉に使われる、特許と知財」

旧電電公社の特許が、通産省主導のコンピューター産業育成政策の過程で、IBMとの交渉に使われた件は、とても有名です。

・「知財戦略の基本は、ゲーム理論でいう”協調ゲーム”になる」

知財に親しんでもらうために、経済学の基礎理論として、大半の経済学部生が学んでいる「ゲーム理論」をベースに、考えてもらうのがよいようです。

・「”排他権”が持つ意味、それによって決まる特許権の”経済学的”または”経営上の”価値」

法学部学生にとっては、他の財産権との違いを、特許が実施の「排他権」であることに注目して理解してもらうのが、よいと思っています。
また、それにより、特許権の価値が決まることを知ってもらうことで、法学的にも、経済学的にも、特許権を正しく評価するための理論が、理解できると思います。

・「特許権は”取引可能な財産権”で、その価格決定は、オプション理論で説明が可能である」

シカゴ市場で始まっている、IPXIの取り組みとその意味を、金融工学の理論を使って説明しました。ランダムウォーク仮説、ボラティリティー、オプション、など経済学部生にはなじみが深く、楽しんでもらえたようです。
あわせて、経営上の「オプション」としても意味がある投資であることも、説明したかったところですが、時間切れでした。

・「特許と標準化は、バリューチェーン上の位置取り争いの手段である」

この辺は、小川先生が度々論じておられるので割愛します。技術系学生や、MBA系の学生さんには、興味のあるところだと思います。

・「排他権と”相対的知財力”」

排他権とゲーム理論、の組み合わせで論じることが出来ます。今回、時間が割けなかったので、続きはまた来年やりたいと思います。

・「特許は、技術の普及のツールである」

Xeroxの複写機特許の開放等、イノベーション絡みで”さわり”だけ、お話ししました。興味がある人は是非、「クアルコム」に関する特別講義を!


ざっと見ても、「知的財産」の世界は、技術、経営、法律、経済、金融学、会計、マーケティング等、様々な領域と密接に関連していることが、わかります。





講義終了後、熱心に質問を投げかけてくれた学生さんも、「知的財産の仕事の広がりと、その魅力」を感じてくれていたみたいで、今後が楽しみです。


欧米の特許弁護士には「法学博士と医学博士です」のような、ダブルディグリーの強者も多く、個人的には「非常に刺激的な人材がひしめき合っている」業界だと、仕事を通じて常々感じます。


今回興味を持ってくれた学生さんには、今からしっかり勉強して、世界に羽ばたいてほしいという期待を込めて、弊社知財教育教材の「無料モニター受講生」を公募し、提供することにしました。


早くも、応募してくれた学生さんがいるとのこと。



テスト期間終了後、夏休みもしっかり勉強してね。


では!



※ 注) と言っても、「知財と発明」について、紹介するという点は同じです。さらに、「討議を通じて、多様な意見を踏まえ、自分なりの結論を出す」このと訓練の場、という意味では、全く同じです。